テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
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DATE/ 2016.09.26

第26回 タバちゃんは王女様

 6月の終わりごろ、ねず美ちゃんの様子に変化がありました。

 日ごろから仲がよくないねず美ちゃん、たびちゃん、タバちゃんですが、それでも喧嘩をすることはなかったのに、ねず美ちゃんがウーウー唸って、2匹を近づけさせなくなりました。たぶん妊娠したのです。

 そのうち、ゴハンだけ食べてどこかに行ってしまい、家に帰らなくなりました。近所を探してもいないので心配していたら、朝方帰ってきたりします。

 家に帰らないのは、顔デカくんのせいかもしれません。顔デカくんはどんどんずうずうしくなり、猫の出入り口から家の中に入ってきて、あちこちにオシッコをかけています。オシッコは困るので、顔デカくんが入らないように、かなり重い傘立てを猫の出入り口に置いて塞いだら、なんとそれをズラして入ってきていました。顔デカくんの顔の力は相当なものです。

 顔デカくんがひんぱんに来るのは、おそらく体がウズウズするからです。夜になっても家の周りでニャーオ、ニャーオと猫なで声で鳴いています。

タバちゃん、黒ホッカくんと対面。


 うちには3匹のメス猫がいますが、たびちゃんは避妊手術しているし、タバちゃんはまだ子どもだし、狙いはたぶんねず美ちゃんですが、ねず美ちゃんは只今妊娠中です。でも、顔デカくんはバカだから、ねず美ちゃんに乗っかろうとします。顔デカがうざったいからねず美ちゃんは家に帰らないのではないか、というのが美子ちゃんの推測です。

 ある日、美子ちゃんが「顔デカがタバちゃんに乗っかっていたよ」と言います。しかし、タバちゃんの体が小さいのでうまくいかなかったようです。顔デカくんは、ねず美ちゃんに拒否されてタバちゃんに乗り換えたのか、それとも前からタバちゃんにも目をつけていたのか、どちらかわかりませんが、タバちゃんを口説こうとしていることは間違いありません。

 タバちゃんは、生まれてまだ5ヵ月しか経っていないので、僕らはまだ子どもだと思っていましたが、猫は1年で人間の20歳になるようなので、5ヵ月だと10歳ぐらいです。微妙な年令ですが、猫はもう大人の部類に入るのでしょうか。

 ねず美ちゃんがイラだっているのも、顔デカくんが自分の娘を誘惑していることに気がついていて、それがストレスになっているのかもしれません。

 あるとき、ねず美ちゃんの頭を見ると、ハゲが2ヵ所できていたので、獣医さんに連れて行きました。獣医さんは、おそらく自分の居場所がなくてイライラして、神経性の脱毛症になったのではないかと言いました。それからは、一部屋を閉め切ってねず美ちゃんだけにしておくことにしました。そうすると、確かにねず美ちゃんは落ち着いてきました。


求愛する顔デカくんに、じらす素振りをするタバちゃん。

 タバちゃんは体も小さいし、尻尾は途中でぶち切れたみたいだし、猪首だし、外見のいい猫ではありません。首輪をしていなければ、どう見てもみすぼらしいノラです。

 しかし、お母さんに可愛がられ、産まれた直後はお姉さんのたびちゃんにも可愛がられて育ったので、自分がみすぼらしいなどとは絶対思っていないはずです。

 美子ちゃんが一度、キキちゃんに会わせるために、両親のマンションにタバちゃんを連れて行ったことがあります。キャリーバッグからタバちゃんを出したら、キキちゃんがいるのもおかまいなく、部屋が見渡せる一番いい場所にあるソファーにちょこんと座り、王女様みたいな顔をしていたそうです。

 そんなタバちゃんだから、顔デカくんに求愛されて、自分がさらに素敵な猫のように思っているのではないかと思います。顔デカくんだけでなく、黒ホッカくんにも求愛されているのかもしれません。

 顔デカくんが遊びに来たとき、タバちゃんは突然木に登りました。タバちゃんは木登りが得意で、それを顔デカくんに見せたかったようです。自分の身体能力を誇示して、自分が優れた猫であることを顔デカくんにアピールしているのでしょうか。

得意の木登りを見せるタバちゃん。(お尻を出しているのはたびちゃん)

第1回 マキ・キュー

第2回 猫の駆け引き

第3回 ネズミのような猫

第4回 黒ホッカおじさん

第5回 騒々しい庭

第6回 猫に話しかける

第7回 チーコ物語

第8回 猫の乗っ取り

第9回 ねず美ちゃんの母性

第10回 猫の癒し