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DATE/ 2017.03.29

最低賃金は一体どのように決められているのか?

 最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額。定めるのは国で、毎年「最低賃金審議会」が、1. 労働者の生計費、2. 労働者の賃金、3. 通常の事業の賃金支払能力を総合的に勘案して定める、とされています。最低賃金の額は時給の形で発表されますが、雇用形態に関係なく、すべての労働者に適用されます。詳しいことは厚生労働省の特設ページに記載されていますので、ここではそのチェックポイントを見ていきましょう。

最低賃金には種類がある?

 最低賃金には、「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。特定(産業別)最低賃金は、地域別に定められた水準よりも高く設定する必要があると認められた業種です。

 たとえば和歌山県の場合、地域別最低賃金は753円(発効2016年10月1日)ですが、2種類の産業には特定最低賃金が設けられています。鉄鋼業:871円、百貨店、総合スーパー:799円(発効2016年12月30日)です。これらの業種で働く人たちは、そちらの最低賃金以上が保証されなければならないということです。

 一方、東京都の場合、鉄鋼業、出版業、各種商品小売業など6種類の産業で特定最低賃金(各種商品小売業792円<発効2009年12月31日>から、鉄鋼業871円<発効2014年3月23日>まで)が設けられていますが、いずれも東京都の時間額932円(発効2016年10月1日)より低額になっています。これに関しては、「『地域別最低賃金額』が『特定(産業別)最低賃金額』を上回る場合は、『地域別最低賃金額』が適用されます」ということで、東京都の最低賃金は現時点で時間額932円以上と考えればいいことになります。

県別の最低賃金額や推移を知るには?

 全国の最低賃金額とその推移は、厚生労働省の特設ページから確かめられます。ここでは全国平均(加重平均)、東京都、沖縄県の過去5年間の推移を抜き出してみました。

<平成24年度:25年度:26年度:27年度:28年度>
全国/749円:764円:780円:798円:823円
東京/850円:869円:888円:907円:932円
沖縄/653円:664円:677円:693円:714円

 この5年間で全国の最低賃金額平均は、749円から823円へ、1時間当たり74円アップしています。7.5時間働いたとすれば、1日の賃金で555円、20日間働いたとすれば月額11,100円、年間の賃金で133,200円アップしている勘定になります。その手ごたえは感じられているでしょうか。

最低賃金額以上かどうかのチェックポイントは?

 自分の賃金が最低賃金ラインを超えているかどうかを確かめるにはいくつかポイントがありますので、チェックしてみてください。

1. 以下のものは賃金から除外して計算すること
臨時に支払われる賃金(結婚手当など)、深夜手当、休日手当、時間外労働手当、家族手当、通勤手当、精勤手当、賞与など1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金。

2. 月給制の場合
(基本給+調整手当など)÷(<年間総労働日数÷12>×1日の所定労働時間)が最低賃金額を超えているかどうか。

3. 派遣労働者の場合
雇用されている会社と派遣先の所在地が異なる場合があります。たとえばA県に住んでいる人がB県の派遣会社に登録していて、そこからC県にある会社に派遣されていた場合、最低賃金は派遣先の所在地であるC県の最低賃金が適用されます。

下回っていたらどうすればいいの?

 最低賃金未満で働いていた場合、雇用者は労働者に対して最低賃金との差額を支払わなければなりません。また、たとえそのことを知らずに取り決めをしていても、最低賃金額と同様の支払い契約を結んだと見なすことができます。

 最低賃金を下回っている場合、まずそのことを会社側に話してみて、それでも解決しない場合は労働基準監督署に相談するという流れになります。

国際比較は?最低賃金の上昇は、いいことばかりじゃない?

 日本の最低賃金は、国際的に見るとどうなのでしょうか?Yahoo!ニュースによると、経済協力開発機構(OECD)に加盟する34カ国のうち、比較可能な25カ国(国によっては最低賃金制度のない国があります)で2015年、実質最低賃金が最も高かったのはルクセンブルグ(11.23ドル)、フランス(10.9ドル)とオーストラリア(10.86ドル)が続いています。日本は11番目(6.95ドル)でした。ちなみに、1ドル111円(3月24日現在)だと仮定すると、それぞれ時給はルクセンブルグが1247円、フランスが1210円、オーストラリアが1205円で、日本が771円となります。

 またアメリカでは、オバマ政権末期に「Fight for $15(15ドルを求める闘い)」運動が発生。2016年にはカリフォルニア州やニューヨーク州などで、今後段階的に時給が15ドルまで引き上げられることが議会で承認されました。今後どこまで波及していくのかが注目されています。

 最低賃金がアップするのは働く人にとっていいことですが、企業にとってはどうでしょう。輸出向け製品をつくっている場合、人件費の違いが国際競争力に跳ね返ってしまいます。そのため、たとえば日本全国で「最低賃金1000円」が実現した場合、生産性が1000円に満たない労働者が切り捨てられる恐れがあることが指摘されています。

 働く側にとっては、当然、賃金は上げてもらいたいもの。しかし、今後は企業によって働く側の「生産性」もよりシビアに見られていくのではないでしょうか。

<参考サイト>
・厚生労働省:必ずチェック最低賃金
http://pc.saiteichingin.info/
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000134251.html
・Yahoo!ニュース:アメリカ各地で最低賃金を時給1680円に引き上げ。なんと日本の倍!
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160402-00010000-bfj-int

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