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DATE/ 2017.07.15

生魚を食べて食中毒…アニサキスって一体なに?

 日本人は鮮魚を使った生魚の料理が大好きな民族です。スーパーだけでなく、最近はコンビニでも刺身や寿司が並び、現代は生魚を食べることへの抵抗感や危機感はほとんどないといっていいでしょう。しかし、美味しい鮮魚の影には、不気味な寄生虫が潜んでいることがあります。

 昨今、話題にのぼっているのが「アニサキス」という寄生虫です。本来は海洋ほ乳類に寄生し、クジラなどのお腹で繁殖してフンとともに海の中に排出され、それを食べた魚を摂取することで人にアニサキスが寄生しまうのです。

 一度体内に入るとみぞおちに激痛が走り、嘔吐などを引き起こすため、アニサキスによる食中毒を「アニサキス症」と呼びます。今回はアニサキスについて解説します。

白い糸のような姿をしたアニサキス

 まず、アニサキスがどんな見た目をしているのかを知りましょう。この小さな悪魔は、長さは約2~3cm、幅は0.5~1mmほどと、白い糸のような姿をしています。基本的に小さく丸まり魚の体内に潜り込んでおり、色も半透明に近いのでよくよく確かめないとその姿は見落としがちです。

 サバやイワシ、カツオ、サケ、イカなど寄生する魚介類は多種多様で、「どの魚を食べなければいい」という法則はありません。では、見た目で判断がつかず、口に入れてしまった場合はどんな症状がでるのでしょう。

腹痛や嘔吐を引き起こし、最悪の場合は手術も

「アニサキス症」の代表的な症状は2種類あります。感染した場所が、胃か腸かによって症状は変わるのです。

 胃に寄生された場合、みぞおちに激痛が走り嘔吐を引き起こします。これは、アニサキスが胃壁に寄生し、内臓を食い破ろうとするために起こる症状です。一匹の魚にアニサキスも一匹とは限りません。体は小さいですが、一匹でもかなりの激痛が引き起こされ、数匹同時に寄生されると胃の中が血だらけになることも……。これを急性胃アニサキス症といい、潜伏期間は食後数時間から十数時間ほどとされています。

 腸に寄生された場合は、激しい下腹部痛を引き起こし、症状が悪化した場合は腹膜炎や腸閉塞を起こすほど重篤化します。潜伏期間は食後10数時間から数日後かかることもありますが、腸に寄生された場合は症状が出ないこともあります。アニサキス症のほとんどは、胃で起こる急性胃アニサキス症なのです。

 アニサキス症を判断するには、内視鏡を使用した目視が必要です。腸アニサキス症の場合はエックス線や超音波検査を用い、原因を調べることになります。治療は内視鏡を使った摘出か、重篤の場合は手術による摘出。逆に症状が重くない場合はアニサキスが自然と死滅するのを待ちます。アニサキスは人の体内では1週間ほどしか生きられないのです。

アニサキス症を予防するには加熱と冷凍

 アニサキスによる食中毒の予防には、一にも二にもまず「加熱」です。60℃で1分加熱、70℃以上の高温であれば瞬時にアニサキスは死滅します。しかし、刺身や寿司は魅力的な食べ物です。どうしても生魚を食べたいという時もあるでしょう。そういった場合は、なるべく新鮮な魚を選び、早めに内臓とその周辺の肉を取り除くようにしてください。

 低温状態では-20℃で24時間以上冷凍すると死滅することがわかっています。家庭用冷蔵庫では-20℃を超えた冷凍は難しいかもしれませんが、レストランやスーパーなどで、きちんと冷凍することで発症を予防することができます。

 また、わさびや酢、塩漬けにするなどして食中毒を予防することがありますが、アニサキスにおいては効果はないと覚えておきましょう。

おかしいと思ったら最寄りの医療機関へ

 いかがでしたでしょうか? アニサキス症を発症すると、七転八倒するほどの痛みを伴うと言われます。生魚を口にする際は、魚をよく観察をし、気になる点があれば取り除くか、口にするのを避けましょう。

 アニサキスを口にしたからといって、必ず症状が出るとは限りませんが、一度症状を発症した人は再び発症しやすくなります。生魚を食べたあとに胃痛や腹痛を感じたら、最寄りの医療機関へ行きましょう。

<参考サイト>
・アニサキス症の予防法とは
http://www.skincare-univ.com/article/013527/
・アニサキス症とサバのアニサキス寄生状況
http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/health/webversion/web28.html
・アニサキスによる食中毒を予防しましょう
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html

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