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DATE/ 2017.11.15
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世界で戦う日本人は「空気を読まない力」が必要

 今まであまり日常的には使われていなかったのに、2017年、一気に日本中に広まった言葉があります。それは「忖度」です。意味は「他人の気持ちを推しはかること」ですが、日本人は忖度をはじめ、以心伝心、阿吽の呼吸など、言葉にしなくても相手の心を推しはかる、察することを尊んできました。

 しかし、この無言の状況から様子を読み取る、いわば「空気を読む」ということ、これが日本人の国際競争力を弱めていると、株式会社インテカー代表取締役社長で内閣府本府参与でもある齋藤ウィリアム浩幸氏は語ります。

 ●空気を読むばかりではビジョンを語れない、実行に移せない

 齊藤氏はカリフォルニアで育ち、10代でベンチャー企業を起こしました。高度成長期の日本企業とも多く関わり、この時期に厳しく指導されながらも、おおらかに仕事を任せてもらったことが今につながっていると語っています。そして2005年、日本の次世代の支援をすることで恩返しをしようと、活動拠点を日本に移しました。

 齊藤氏は、アントレプレナーの条件の一つに、明確なビジョンを持ち、語る力が挙げています。しかし、日本人は忖度、察知力を評価し、空気を読むことに熱心で、ビジョンを語る力が弱い。しかも、日本の若者には元気がない。ただ、日本人は何が問題かを比較的よく分かっているし、解決策もけっこう知っている。それなのに空気を読んでしまうため、周囲に逆らってでもやってみるということをしない、あるいはやる前から失敗を恐れて実行に移さない。ビジョンを語る言葉とそれに伴う行動がなければ、多種多様な価値観がせめぎあう国際社会でリードをとることはできない、と齊藤氏の檄が飛びます。

●「失敗」ではなく「経験」ととらえてみる


 しかし、こうした意識を変えるのは決して難しいことではない。「失敗」を「経験」と置き換えてみればいい、と齊藤氏はアドバイスも忘れません。かくいう齋藤氏も、実は過去6回ほど倒産の危機に見舞われたのだとか。その都度、失敗時の例を参考に、アイディアを出し、改良して経験を積み重ね、徐々に業績を上げていったのだそうです。

 失敗を成功へのチャンス、経験と捉え直し、「やってみよう」と思ったことはまず実行に移してみる。周囲の賛同、反対といった空気を読み過ぎない。目に見えない空気を読むより、はっきりと言葉にしてビジョンを語る、議論する、ディベートする、プレゼンする。齊藤氏は「読む」より「語る」の徹底を、リーダーシップの条件にしています。 

●ビジョンとパッションを持って道を切り拓こう


 そして、ビジネスにおいて、ビジョンと並んで重要なのがパッション、情熱です。道半ばで諦めそうになっても、パッションを持っていれば乗り越えられる、と齊藤氏はいいます。これも経験から得たことです。齊藤氏がつきあいのあった80年代の日本企業のキーマンは、今にして思えば、ある意味強引というか、後先関係なく突進していくパッションのあふれる人が結構いたそうです。

 また、自身のパッションも重要ですが、ビジョンをきちんと語ることができれば相手のパッションに火をつけることもできます。ビジョンとパッションは、「語る」ことでつながっているのです。

 カリフォルニアで育った齊藤氏ですが、日本人であることを誇りに思っていると言います。今でも日本は世界の多くの国から愛されており、期待されている。そのことを日本人はもっと知るべきだ。海外にいるとそう感じると答える齊藤氏。それは、何事も “Absolutely,Yes”という姿勢で挑戦し続けてきた氏から日本の若者に向けた、パッションのこもったメッセージともいえるでしょう。
(10MTV編集部)