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DATE/ 2017.12.10

「給料前借りサービス」法律的な問題はあるのか?

 給料日までまだ1週間あるのにあと千円でどうやって過ごすか…、友人の結婚式が続いて財布がピンチ…、そんな思いをした時に強い味方が給料前借りサービス。大手の金融機関だけでなく新興ベンチャーも手がける、今注目を浴びているサービスなのです。

労働基準法で定められてはいるものの…

 漫画の「こちら葛飾区亀有公園前派出所」では警察官の両さんこと両津勘吉が給料の前借りをお願いするシーンが時折ありましたが、現実にはなかなか頼みにくいですよね。実は法律では、前借りの制度がきちんと定められているんです。

 労働基準法第25条は「使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない」としています。ですが「お金が学べる情報ポータル ファイグー」によると支払いの期限が決められていないうえ、法律的な義務はないため、結局のところ前借りができるかどうかは各会社次第のようです。

 そこで頼りになるのが冒頭で述べた給料前借りサービス。その名の通り、給料日前に給料を受け取れるサービスです。日経電子版の記事によると、ここ数年でそうした事業を手がける企業は約20社に増えているそうです。社によって細かい仕様は違いますが、よくある仕組みはこうです。企業に前借り用のシステムを導入してもらい、従業員から前払いの申し込みがあるとルールに応じて現金を従業員へ振り込む。サービス提供社の儲けはおおまかに分けて、企業から受け取るシステム使用料というケースと従業員から前借りの金額に応じた手数料を徴収するという2つのパターンがあります。

法的にはグレー?課題もある前借りサービス

 金融とITを組み合わせた、いわゆる「フィンテック企業」だけでなく、三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行(さくら情報システムとの提携)などメガバンクも手がける前借りサービス。企業にとっては福利厚生の強化につながり、人事に特化したメディア「HR NOTE」によると採用応募数の増加や離職率の低下が期待できる、とされています。

 サービスが広がる一方で、法律的に問題に成りうるという指摘もあります。前払いを申し込んだ額に対し手数料が徴収される仕組みを取っている社もありますが、弁護士ドットコムによるとこの手数料を利息と見なした場合、法定金利を超えてしまうということになります。現時点ではグレーなサービスもあるようです。

 とはいえ、企業にとっても従業員にとっても需要はあるサービス。きちんと法的な部分をクリアすれば、今後も広がり続けることは間違いないでしょう。

<参考サイト>
・日本経済新聞:給料「前借りサービス」広がる 非正規社員、財布苦しく
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22645780U7A021C1EA1000/
・HR NOTE:給与前払いサービスとは?
https://hcm-jinjer.com/media/contents/b-contents-5972/
・弁護士ドットコム:広がる「給料前払い」サービス、法律上は借金?中にはグレーなものも…課題を検証
https://www.bengo4.com/c_5/n_6978/
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