テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.08.03

歴史は日本人がつくった!?~中国発祥ではない熟語集

 昔の人は、和漢洋、つまり日本、中国、西洋の知を書物を通してバランスよく取り入れてきた。

 その顕著な例が、数々の優れた翻訳語である。

 たとえば「新聞」「演説」「哲学」「社会」「資本」「思想」など、現代の日本語になくてはならないこれらの言葉は、実はもとから日本語として存在していたのではなく、翻訳語として定着したものなのだ。

 これを読んで初めて知ったという人も多いのではないだろうか?

 たとえば、英語の「ニューズ」という言葉は、今「ニュース」とそのまま言っているが、中村敬宇という人は「新聞」と約した。ニューズ、それを新たに聞く。これが今の「新聞」という言葉の起源になった。

 「スピーチ」という言葉は、あの福沢諭吉が最初に「演説」と訳した。「演説」という言葉はもともと日本語にはなかった。

 また「フィロソフィー」。これは西周が「哲学」と訳した。最初は「希哲学」だったが、のちに一字を省き「哲学」となったそうだ。

 このように、現代の日本語を成り立たせるために必要不可欠な言葉は、明治以降に欧米から入り翻訳されいったものがほ数多くある。「社会」「資本」「芸術」「職業」「生産」「思想」…こうした言葉は、さらには、もともと日本が漢字を輸入した中国に逆輸出されていくことになった。

 ちなみに日中の間でよく「歴史問題」が取り沙汰されるが、この「歴史」という言葉も、もともと中国にはなく、日本から「歴史」という言葉が逆輸出されて中国に入り「歴史(リシ)」と呼ばれて定着している。

 日本の知識人は、欧米から入った未知の言葉を1つ1つ日本語に翻訳していったわけだが、便利な辞書もそろっていない時代の翻訳の苦労は大変なものだったろう。こうした先人の偉業は、書物を通して得た和漢の教養と鍛え上げた論理的思考力があってこそのものだと言えるだろう。

 昨今インターネットの翻訳サービスの精度があがってきたが、ここで書いてきたような過去の偉業があったからこそ成立しているということを、たまには思い出してみよう。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

陰の主役はイラン!?イスラエル・ハマス紛争の宗教的背景

グローバル・サウスは世界をどう変えるか(4)サウジアラビアとイランの存在感

中東のグローバル・サウスといえば、サウジアラビアとイランである。両国ともに世界的な産油国であり、世界の政治・経済に大きな存在感を示している。ただし、石油を武器にアメリカとの関係を深めてきたのがサウジアラビアであ...
収録日:2024/02/14
追加日:2024/04/24
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
2

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

権威主義とポピュリズムへの対抗…歴史を学び、連帯しよう

民主主義の本質(5)民主主義を守り育てるために

ポピュリズムや権威主義的な国家の脅威が迫る現在の国際社会。それに対抗し、民主主義的な社会を堅持するために、国際社会の中で日本はどのように振る舞うべきか。議論を進める前提として大事なのは「歴史から学ぶ」ことである...
収録日:2024/02/05
追加日:2024/04/23
橋爪大三郎
社会学者
3

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

起業の極意!サム・アルトマンと松下幸之助

編集部ラジオ2024:4月24日(水)

ChatGPTを開発したことで一躍有名となったOpenAI創業者のサム・アルトマン。AIの発展によって社会は大きく、急速に変化しており、その中心的な人物こそが彼であるといっても過言ではありません。

そんなアルトマンが...
収録日:2024/04/15
追加日:2024/04/24
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景

ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か

ルネサンス美術とはいったい何なのか。これを考えるためには、なぜその時代に古代ギリシャ、ローマの文化が復活しなければならなかったのかを考える必要がある。その鍵は、ルネサンス以前のイタリアの分裂した都市国家の状態や...
収録日:2019/09/06
追加日:2019/10/31
池上英洋
東京造形大学教授
5

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る

オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え

2016年ノーベル医学・生理学賞の受賞テーマである「オートファジー」とは何か。私たちの体は無数の細胞でできているが、それが日々、どのようなプロセスで新鮮な状態を保っているかを知る機会は少ない。今シリーズでは、細胞が...
収録日:2023/12/15
追加日:2024/03/17
水島昇
東京大学 大学院医学系研究科・医学部 教授