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DATE/ 2015.11.25
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運が良い人、悪い人~松下幸之助が問いかけた「運」の意味

 人生には失敗と成功がつきもので運がよい人、悪い人という見方がある。年末年始には、神社詣でに宝くじ、占いと何かにつけて運についての話題が多くなる。運命とは何か、あらかじめ決まっているものとは思ってはいないだろうか?また、運命について無自覚でいることは、人生にとって大きな損失となる。

 では、運が悪いという人と自分は運が良いという人にどんな違いがあるのだろうか。

 運が悪いという人と運が良いという人をそれぞれサンプリングし、喫茶店の前に落ちているお金の存在に気づくか、そして喫茶店の中に入り、どのような行動を取るかを実験調査したエジンバラ大学のリチャード・ワイズマン博士の研究成果が、その参考になるだろう。

 この実験で、自分は運が良いと答えた人は、喫茶店の前に落ちているお金に気づき、喫茶店の中に入ると「実業家」の横に座って自己紹介をし、コーヒーをご馳走して、会話を楽しんだという。また、自分は運が悪いと答えた人は、お金の存在にも気づかず、店内でコミュニケーションもとらない傾向にあったという。

 運が良いと思っている人は常にリラックスしているため、自分の周りの偶然に気づきやすい傾向にあり、活発なコミュニケーションから「偶然のチャンス」を作り出し、確率論的にもチャンスをものにしていくことが研究の成果として明らかになった。

 自分のことを「運がいい」といえる人は、

・運命に謙虚なため、自分の力に酔うことはない
・恵まれているという自覚から、社会貢献の使命感をもてる
・運ということを知っているので、失敗や成功に一喜一憂しない
・努力が必ずしも成功に結ばれないことを知っているので、他者の努力不足を無為に責めない

 こんな傾向も見い出すこともでき、結果としての成功確率を高めているようだ。

 昭和の大経営者である松下幸之助氏は社員面接の最後に必ず「あなたは運がいいですか?」と質問したという。そこで「運が悪いです」と答えた人は、どれだけ学歴や面接結果が良くても不採用にしたという有名なエピソードがある。

 松下幸之助氏の問いかけた「運」には、大きな意味がありそうだ。

「日本人として生まれたのも、この時代に生まれたのも、わしの意志ではない。たまたま、偶然に生まれてきた。生まれた家も、環境も、いわば運命や。わしが決めたものではないわな。」

 運命とは、自分の意志を超えて決定されていることと、松下幸之助氏は語る。

 さらに、
 「人間は、努力すれば必ず成功するということになる。しかし、実際には、決してそういうことではないわね。人生、すべて己の意のままに動かせるということはない。それは、ひとつの運命をそれぞれ担っておるからやな。」

 しかし、人生の成功や失敗、そのすべてが「運」のみならず「努力」によって決まってしまうなら、それほどつまらないものはない。松下幸之助氏は、こうも語る。

 「わしは運命が100%とは言っておらん。90%やと。実は、残りの10%が人間にとっては大切だということや。いわば、自分に与えられた人生を、自分なりに完成させるか、させないかという、大事な10%なんだということ。ほとんどは運命によって定められているけれど、肝心なところは、ひょっとしたら、人間に任せられているのではないか。」

 運命とは90%の決定事項で、残り10%の努力によってこそが、その未来への舵をきることができる。そんな人生の極意がここに語られている。松下幸之助氏の人生が語る「運」とは、リチャード・ワイズマン博士の研究と共通し、運命を切り開く「考え方」や「心の持ちよう」と言い換えることもできそうだ。

 「運」は成功と失敗の結果として語るのではなく、成功者の「考え方」や「心の持ちよう」として学び、2016年はぜひ、「運が良い」と言える人になりたい。

<参考文献>
・『ひとことの力 松下幸之助の言葉』(江口克彦/東洋経済新報社)

(10MTV編集部)