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DATE/ 2016.08.27

収入や資産は無関係!老後破産に陥るこれだけの理由

 「老後破産」が社会問題化しています。老後破産とは、現役時代は普通、あるいはそれ以上の生活を送っていた人でも、リタイヤして高齢になった後で、貧困におちいってしまうとことを指します。

 昔は定年退職した高齢者と言えば、毎日が日曜日のお気楽な年金生活というのが当たり前でしたが、今はまったく違うのです。

老後破産する人は現役時代、平均よりも高い給料の人も多い

 2014年の段階で、独居老人の3人に1人が生活保護基準を下回る生活を送っているという推計もあり、今後さらに問題は深刻化するといわれています。

 生活保護を申請すればいいじゃないかという話もありますが、体面を気にしたり、身内に援助要請が行くのをためらって、我慢してしまうケースが多いのが、日本の現状です。それはそれで解決しなければならない問題ですが、生活保護も受給する人が増え、役所も支出を減らすため、受給するハードルを高くして、門前払いしているという話もあります。

 老後破産におちいる人は現役時代、平均よりも高い給料をもらっていた人も多いといいます。ということは、単に年金の受給額が人より少ないからおちいるということではなさそうです。実際、原因は複数あり、その中から主なものをいくつか紹介します。

平均寿命と余命を混同する

 現在、平均寿命は男性約80歳、女性約86歳となっています。ということで、大体そこまで生きることを視野にいれ、老後の資金計画を考えている人も多いでしょう。しかし、これは間違いです。

 平均だから、個別ケースは大きく異なるという話ではありません。もちろんそれもそうですが、今後どれだけ生きるかは平均寿命ではなく、平均余命をみます。

 平均寿命は、平均何歳で亡くなるかを計算したもの。というと、100歳まで生きて老衰で亡くなった人も、若くして事故死したり、自殺した人も含んだ統計だということです。

 なので、この場合は平均余命を見るほうがいいでしょう。例えば厚生労働省の平成22年の平均余命を参照すると、65歳まで生きた人は、その後約19年生きることが期待値として出ます。ということは、65歳まで生きた人は、84歳まで生きるということになり、男性の場合、平均寿命を約4年ほど上回るということです。

 ある程度長生きした人は、平均寿命よりもずっと長く生きる確率が高いのです。

年金だけじゃ足りない

 若者が多く、高齢者が少ないという時代の高齢者は年金がたっぷりもらえていました。しかし、現在は少子高齢化。少ない若者で、多くの高齢者を支えるためには、受給年齢を上げ、額を絞るしかありません。

 核家族化も進んでいるので、同居している息子や孫にいつまでも生活費を負担してもらうということは期待できません。とある計算では、夫婦ふたりで一定の生活水準を維持するためには、年金のほかに1500万~4500万円の貯蓄が必要だともいわれています。

 それだけの貯蓄を、資産運用なしにつくるのは、かなりの努力が必要です。

息子や孫にけっこうお金がかかる

 現在、実質賃金が下がっていて、現役世代の生活もけっして楽とは言えなくなってきました。そのような中、子どもの借金や住宅ローンを肩代わりしたり、孫の教育費を負担するケースも増えているといいます。

 また、子どもがニートになり養う必要が出てくる場合もあるでしょう。また、しっかりした子どもでも、格差社会の中で収入アップしていくためには、大人になってからも教育をしっかり受ける必要があります。そのような環境の中で大卒者増加は当たり前、大学院進学率もかつてより上がっており、それを親が援助することも少なくありません。

 老後の資金計画では、そのような出費を計算に入れていないことも多いでしょうが、頼まれたら、嫌とは言えないのが人情でしょう。最近は「孫破産」という言葉も一部で聞かれるようです。

インフレを忘れている

 現在、デフレといわれていますが、長期で見るとゆるやかにはインフレしています。35ミリリットルの自販機缶ジュースの価格もこの20年の中で、100円から110円、110円から120円、最近は130円と上がってきています。

 もちろん、ディスカウントの店も増えてはいるので、安く買う工夫はできますが、それそれで情報収集や遠出の買い物をしたりと、別のコストがかかってきます。

 このような長期のインフレ傾向を視野に入れず、現在の価格で物が買えるという思い込みは非常に危険です。100円のジュースが130円になったという割合でインフレを考えると、貯蓄の価値は約24パーセントも減ってしまうことになるのです。

かさむ医療費、保険料

 75歳以上の1人あたりの年間医療費は、それ以外の人と比べて実に約3倍とのこと。歳をとれば、医療費がかさむのは当たり前ですが、現役時代と同じ基準で考えてしまいがちなのが、医療費です。

 とはいえ、国が負担するから大丈夫ではあるのですが、それもいつまで続くか分かりません。というのも、こちらも年金問題と同じで、少子高齢化が進むと、国が負担できる額にも限界があるからです。

 病気になれば、民間保険の保険料も上がります。転ばぬ先の杖でいくつも保険に入ると安心かも知れませんが、そうなると月掛の保険料がかさみ、これはこれで痛い出費です。

 このほかにも老後破産におちいる要因はいくつもあります。よってこれからは、働く期間を延長したり、健康寿命を延ばす努力をしたり、あるいは資産運用についてきちんと学ぶこともますます重要になってくるでしょう。

<参考サイト>
・主な年齢の平均余命(厚生労働省ホームページより)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life10/01.html
・大学卒業者数と就職率・大学院進学率の推移(文部科学省ホームページより、文部科学統計要覧平成16~20年版)
http://www.mukogawa-u.ac.jp/~kyoken/data/26.pdf

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