10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義 ログイン
DATE/ 2016.12.14
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海上自衛隊・元海将が語る日本の安全保障

 世界のあちこちで紛争が絶えず、ミサイルに化学兵器、そして情報戦と武装方法も多様化する中、日本ものんきに「対岸の火事」などとは言っていられなくなってきた。こうした状況下、日本の安全保障戦略にも変化が起き始めているのだ。

 日本の安全保障の構造を源流から下流に至る川の流れで説明してくれるのは、前海上自衛隊佐世保地方総監・吉田正紀氏。海将として国防のトップで指揮をとってきた人物である。(10MTV収録 わが国の安全保障の構造(1)その源流から下流まで)

   吉田氏によれば、日本の安全保障の構造は、川の源流、上流、中流、下流にたとえると分かりやすいそうだ。源流の核は当然のことながら日本国憲法であり、そこから派生する専守防衛や非核三原則、また日米安保条約といったわが国の安全保障の根幹にかかわるものが源流に含まれる。以下、上流、中流にあたるのが防衛計画の大綱、自衛隊防衛力整備の計画など、そして下流では自衛隊という現場が全ての流れを受け、活動している。

 下流は、国際社会の「現実」という海と交わり、短いスパンで変化している。一方、上流に近づくにつれて変化のスピードはゆるくなり、源流ではここ半世紀あまり、ほとんど変化がなかった…というのが昨年までのこと。2013年に国家安全保障局が創設され、以降、国家安全保障戦略の策定、特定秘密保護法の成立、集団的自衛権行使の容認など源流、上流が変化し始めたのはご存知のとおりだ。

 しかし、どのような変化がおころうとも、「現実」という荒海に出て行くのは下流、現場の人々だ。かつて吉田茂元総理は、防衛大学校一期生卒業の折、「自衛隊が国民から歓迎されるのは、外国から攻撃されての国家存亡や災害など、国民が困窮し国家が混乱に直面する時だけである。君たちが日陰者である時の方が、国民や日本は幸せなのだ」と述べた。

 また、吉田氏も退官に際して「一発の弾も撃たせず、一発の弾も撃たず、制服を脱ぐことを誇りとします」と挨拶したという。

 源流にいささかの変化が生じても、日本の安全保障の底流にあるこれらの言葉は不変だと思いたい。

(10MTV編集部)