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ユーロ圏の中でドイツの存在感が増大

新しい東方問題(2)イランの強みと「ドイツ帝国」の野望

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/明治大学研究・知財戦略機構国際総合研究所特任教授
情報・テキスト
メルケルとブッシュ(2006年)
歴史学者・山内昌之氏は、昨今のギリシャ危機やイランのウラン濃縮停止合意問題などにおいて、注目すべきはイギリスでもフランスでもアメリカでもない、ドイツの存在感だと語る。「ドイツ帝国」と称されるその強さの秘密は? ドイツに牛耳られるギリシャの将来とは? 山内氏がギリシャ、イラン問題を例にとり、EUの勢力地図を読み説く。シリーズ「新しい東方問題」第2回。
時間:08:33
収録日:2015/07/29
追加日:2015/08/27
≪全文≫

●イランの核開発をめぐる「うそ」


 皆さん、こんにちは。

 前回は、いわばギリシャのうそと借金ということについて、プルタルコスをはじめとする古代ギリシャの知恵者たち、ヘロドトスといった歴史家たちの知恵などを紹介しつつ、語ったわけです。他方、その時に触れた今回のイランの核開発合意、核の濃縮停止合意につきまして、今日は少し語ってみたいと思います。

 このイランのある意味でうそというのは中東の安全保障が絡むだけに、北朝鮮の核開発に関わるうその数々に振り回されてきた日本や日本人にとっても、見逃せない大事な現象です。また、イランの核開発には北朝鮮の技術者が絡んだというのも、周知の事実であります。

 イランは、2002年に極秘につくられていたウラン濃縮施設の存在が暴露されて以来、濃縮停止に関するイギリス、フランス、ドイツとの合意を、最終的に反故にしました。その他、2006年にはさらにウラン濃縮を再開するという形で、公約の違反も犯しました。国連安保理は、2006年から10年まで4回にわたってイラン制裁決議を採択しましたが、イランはその間も、申告していない別の濃縮施設で濃縮度20パーセントというすこぶる高い濃度のウラン製造を開始するなど、言ってみますと、うそを重ねることによって国際的な信用を失いました。


●核濃縮停止合意を得たイランの二つの強み


 2012年にアメリカが金融制裁を発動し、かつヨーロッパ連合(EU)がイラン製の原油の禁輸措置をとったのは、自然の成り行きと言えるかもしれません。それでも、今回アメリカをはじめとした国連の安保理常任理事国、P5プラス1、この1はドイツでありますが、あるいはEU3プラス3と呼ばれる、EUの英仏独プラスアメリカ、中国、ロシアといった6カ国が、イランに対して将来の核開発を許す含みを残す最終合意に今回たどりついたのは、ギリシャにはない優位性がイランにはあったからであります。それは、ギリシャがうそと借金の二重苦で自らを苦しめ、自縄自縛になったのと違い、イランには目立った借金、多額の債務を外国に負っていなかったということがあります。また、イラン自身が持っている未開拓の大きな市場、マーケットとしての価値というものが、EUやアメリカの企業にとって大変魅力的に映っているからに他なりません。


●イラン市場に対するドイツ資本主義の欲望


 ここで注目するべきことは、国連安保理常任理事国の5カ国以外に、ドイツが入っているということの意味であります。ドイツが入っていたのは、まさにこのイランの市場としての価値に対するドイツ資本主義のあくなき野望、あるいは欲望を意味しているということになります。サウジアラビアや、あるいはイスラエルといったアメリカの同盟国は、この今回の最終の合意が、自らの国の安全保障を非常に危うくするといって、アメリカに対する批判を強めています。しかし、こうした批判は、直接にすぐドイツに向かってこないというところがミソなのでありまして、こういうところの間隙をついて、巧みにドイツはこの最終合意直後に、産業家たちの大使節団、大デリゲーションをテヘランに派遣するといった、全く抜け目のない措置に出ています。

 他方、ギリシャやイタリアやスペイン、ポルトガルといった国々がユーロ圏に参加したことによって、ユーロの価値が全体として国際的には安くなりました。そのユーロ安で輸出力が高まりますので、それによってドイツのフォルクスワーゲンがトヨタを追い抜くといったよ...
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