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四つの可能性に託す農家の将来像

岩盤既得権・規制分野の成長可能性(1)農林水産業

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
今、岩盤規制にドリルの歯を立てるべき分野の一つが農林水産業である。ここでは、自給率、農業生産などに対するイメージと実態の食い違いに言及し、130万戸に及ぶ零細農家のための新しい農業の可能性を提示する。(島田塾第109回勉強会 島田晴雄氏講演『日本経済は果たして、どこまで成長出来るのか』より:全14話中9話)
時間:09:32
収録日:2014/01/14
追加日:2014/03/20
≪全文≫

●岩盤規制打開と高齢化社会の可能性


 さて、高齢者が多く人口が限られていると言えるのが日本の問題です。高齢者社会の可能性を生かすにはどうすればいいのでしょうか。今日は、2つの話を申し上げて括りたいと思います。

 1つは、安倍晋三首相の言っている「デッドロックレギュレーション」、つまり岩盤規制です。安倍さんは「私はドリルの歯になって突き立ってみせる」と言っています。大丈夫かな、と思ってしまいますが、岩盤規制は3つの典型的分野にあります。1つは農林水産業。もう1つは医療。そして残る1つはエネルギーです。

 そして、2つ目に皆さんとお話ししたいのは、高齢社会のもつ非常に多くの可能性をどうすれば生かせるのか、ということを最後にして新春の所感にしたいと思います。


●農業情報の欺瞞:食糧自給率4割、農村の衰退


 それでは、3つの分野について一言ずつお話しします。

 まず、農林水産業ですが、皆さんは農林水産業についてどのようなイメージを持っていますか。2つのイメージを持っていませんか。

 「日本は食料生産が足りなくて安全保障が保たれない。食糧自給率は4割だ」
 「農村が疲弊している。このままいくと農村が消えてしまう」。

 データーをよほど歪めて見ればそう見えなくはないですが、これらのイメージは、全く全体像を示していないと言えます。ちなみにこのキャンペーンを推進しているのは農水省ですが、それは他意があるからこういうことを言っているのです。

 自給率についてお話ししておきますと、食料自給率は4割と言われていますが、これは米麦トウモロコシといった穀物の自給率を指します。確かに4割の自給率です。お米は4割ですから、残り6割は何かというと、全部家畜の飼料です。つまり、われわれが食うに困っているわけではないのです。

 それからもう1つ。「農業生産」というから米に焦点が当たり過ぎていますが、農業生産販売額総額は10兆円です。お米、他の穀類は全部足しても2兆円しかありません。あとは、何かというと、自給率100パーセントの野菜、90パーセントの果物。70パーセントの畜産です。これらは全部統計に入っていません。おかしいですよね。


●農家は政治の犠牲者


 では、農村が疲弊しているということについてですが、全人口比の農村人口はどのくらいあるのでしょうか。日本の自給率の倍と言われている英国は0.8...
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