●今、世界でクジラはどんどん増えている
皆さん、こんにちは。小泉武夫です。食文化論、発酵学をやっています。
私は、小さい時からクジラの肉が大好きで、よく食べました。いっぱい食べましたよ。そこで私は、クジラというものをどうして今、こんなに食べられなくなったかということをお話したい。
私は、「クジラ食文化を守る会」の会長です。「クジラを捕って食べるべきです。クジラは日本人を救います」という概念で今、動いています。クジラはなぜ捕ってはいけないのか。実は、国際捕鯨委員会(IWC:International Whaling Commission)というものがあり、そこに科学委員会があります。その科学委員会で、世界のクジラの数を調べる調査捕鯨をやっているわけですが、今、地球上にものすごくクジラが増えているのです。
これは、私の書いた『鯨は国を助く』(小学館)という本なのですが、これに「IWC科学委員会が推定した鯨類の資源量」が書いてあるのですね。見ますと、今、ミンククジラは南半球で76万1000頭とあります。後はグリーンランドなどで10万頭以上おり、合わせると80万頭以上いるのです。それから、ナガスクジラ3万頭。コククジラ2万6000頭などで、とにかくものすごいのです。ゴンドウクジラだと78万頭います。
●商業捕鯨禁止で人間の食べる魚が減っている
実は今、大きな問題があり、そのクジラが人間の食べる分の魚をものすごく食べているのです。驚くべき量を食べているわけです。例えば、この写真を見られると、皆さんびっくりすると思いますけれど、調査捕鯨で捕ったクジラのお腹の中の写真なのです。これを見ると、クジラのお腹の中に入っているのは、われわれが食べている魚ばかりということになります。この写真がそうです。これらがクジラのお腹の中にあった魚で、スルメイカ、サンマ、スケトウダラ、カタクチイワシです。
大体1頭のクジラにドラム缶4本から5本の魚が全部入っているわけです。ですから、最近、アジが捕れないとかサンマが捕れないとか言っているけれど、それは商業捕鯨が禁止されて、クジラを捕っては駄目なため、どんどんどんどんとクジラが増えているからなのです。
どのぐらいだと思いますか。実は、地球上の人間が食べる1年間の魚の量の4.7倍をクジラが食べていると言われています。このままでいったら、クジラばかり増えて、人間が魚を食べられなくなってしまいますね。実は今アメリカの漁業業者が「もっとクジラを捕って、クジラからわれわれの捕る魚を守ってくれよ」と、そういうことを言っているのです。
●クジラが政治の道具にされている!?
では、どうしてアメリカは日本にクジラを捕らせないのか。まったくおかしなことを言っていますよ。「クジラは地球上最大の大きな生き物だから、これを保護するということは、やっぱり環境保全のシンボルなんだ」と、こんなことを言っているわけです。
いや、いや、そうではなく、クジラはこれだけ増えたのです。やはり人間が地球上の中の生命の一番頂点に立った生き物です。確かに捕り過ぎました。われわれは、その過去をしっかりと反省して、生き物としての知恵を生かし、科学調査に基づいて捕ればいい。日本が今、商業捕鯨でミンククジラを捕らせてくれと言っているのは、たった4000頭ですよ。それで解決するのです。
それなのに、南氷洋には70何万頭いるのです。それを一頭も捕ったら駄目だというわけです。なぜ駄目なのか。その一つの大きな理由は、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドを中心として、やはり日本に牛肉を売りたいからです。わざわざあんなところまで行ってクジラなんて捕ってくるのではなく、牛肉買えよ、ということになっているのではないでしょうか。そういう噂がいっぱい出ていますよ。
本当にすごいことですよね。これはおかしなことではないですか。アメリカは反捕鯨国だと言っているけれど、沿岸捕鯨でアラスカではホッキョククジラという大きなクジラを捕って食べていいことになっているでしょう。そうしたら、そこも止めなさいよ、ということになりますよね。
だから、そういう意味で、クジラは本当にいろんな政治や経済の道具にされていますよ。大国が、われわれはクジラを一頭も捕らせないぞと言うだけで、立派なハト派キャンペーンをつくりあげている。これは、ある面でプロパガンダですね。
●クジラが日本人の食を助けてくれた
そういうことをクジラで本当にやられているから、とんでもないことです。日本はそのうち動物性タンパク質の食べ物がなくなってきます。なぜか。例えば、鳥インフルエンザなんて、また出てきたらどうなるか。狂牛病なんて出てきたらどうなるか。豚だって、最近豚コ...