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うつの「見える化」に有効な光トポグラフィー検査とは

うつ病治療最前線(4)目に見える精神医療

渡部芳德
介護老人保健施設ひもろぎの園 創設者
情報・テキスト
ひもろぎGROUP理事長・東邦大学薬学部客員教授の渡部芳德氏は、「見えない」難しさを持つ精神医療にいち早く光トポグラフィーの機械を導入、検査を実施してきた。「見えない」ものを「見える」ようにした効果は絶大! 精神医療の現場を技術革新と視覚化の観点で語る。(シリーズ全4話中最終話)
時間:09:19
収録日:2015/09/03
追加日:2015/11/26
タグ:
≪全文≫

●「見えない」という精神医療の難しさ

 
 ひもろぎ心のクリニックの渡部と申します。よろしくお願いします。

 次は、目に見える精神医療ということで、精神科外来における近赤外線スペクトロスコピーというお話をします。

 私は医者になって27年ですが、われわれ精神科というのは、言葉だけを話していて何も機械がいらないのではないかと、最初はそのように思われていました。そのような中、気分障害の患者さんがどんどん増えて、ここ10年で倍増していると言います。

 精神科というのは、非常にあいまいで分かりづらいと、僕自身も精神科になった時に思っていました。精神疾患とは概念しかなく、目に見えないと考えられています。例えば、うつ病や躁うつ病、統合失調症やパニック障害がありますが、その違いを患者さんに明確に説明するのは非常に難しいですし、また同時に、ご家族にもその疾患を説明しても、ほとんど理解していただけないというのが現状ではないかなと思います。僕が精神科医になってその病気を説明するときにも、こちらは教科書を読んでいますから、「こういう症状とこれとこれがあるからあなたは病気です」と言っても、患者さんはポカンとして病識がないわけです。


●病態が目に見える身体科


 一方、体の疾患というのは、がんにしても心筋梗塞にしても、脳梗塞、肺炎にしても病態が目に見えます。例えば、がんならばCTのスキャンを撮ってみて、そこに異常な影があれば「これはがんかもしれない」ということになります。心筋梗塞であれば、心電図を撮る、あるいはエコーを撮る、シンチ(シンチグラフィー)をするということで見えるわけです。脳梗塞の場合もCTを撮れば分かりますし、感染症、肺炎であれば、胸のレントゲンを1枚撮ればすぐ分かるということで、病態が目に見えているから患者さんと一緒に治療に取り組みやすいというのが、身体科ということになると思います。

 実際ここにCTによる画像ケースがあります。上は1年前に撮ったある患者さんのCT画像ですが、影がありません。しかし、1年後の検査で、矢印に示すような直径2センチぐらいの肺がんと思われる所見が見つかりました。これはもう、目に見えて初めて分かって、こういう患者さんには、「じゃあ、治療しましょうね」となるということは、明らかです。


●精神科クリニックの10年前と今


 これは、われわれがちょうど今から10年以上前に、初めてクリニックをオープンした時の風景ですが、精神科は何と言われていたかというと、「紙と鉛筆さえあれば開業できる」と言われていたのです。別に難しい機械を入れる必要もなく、お話だけ伺ってカルテに書きとめて診断してくということで、コストがかからないと言われていました。小さな20坪ぐらいの部屋の中に、診察室と受付とカウンセリングの部屋を三つ設けて行っていたのですが、そのように「紙と鉛筆さえあれば開業できる」と揶揄されたぐらいのものが、精神科だったのです。

 しかし、患者さんもだんだん増えてきて、精神科のクリニックは今、都内で大体1000件ぐらいあります。非常に差別化が進んで、より先進的な治療を行うところと、従来の古いやり方で行なっているところの差が非常についてきたというのが、最近の傾向ではないかと思います。


●治療導入に非常に有効な光トポグラフィー


 そこで、われわれが9年前から着目しているのが、光トポグラフィーの検査です。群馬大学の先生が日本で初めて導入して検査したのですが、近赤外線を用いて、ここの図にありますように大脳皮質にある血流の状態を調べて、語彙流暢性課題という課題を与えたときの血流のパターンを使って患者さんの鑑別診断を行うという機械です。今では大学病院には大体ありますし、都内のクリニックでも2、3件導入されるようになりましたが、9年前にクリニックで導入したのは、われわれが日本で一番最初で、この機械を用いて検査を行ってきました。

 これは実際に検査を行っている血流の測定風景ですけれども、大体エコーの機械ぐらいの、さほど大きくない検査の機械がわれわれのクリニックにあるのですが、これを用いて血流を測定して、それをもとに鑑別診断の補助診断として行っているということです。

 これは実際に健常者の光トポグラフィーのグラフを示しています。課題を与えたときに血流が上昇してまた下がってくるという波形を表していますが、次の表が示すように、それぞれの疾患によってこの波形のパターンが違うということが分かってきました。健常者と統合失調症とうつ病、双極性障害の患者さんでは違うということが分かってきていますので、われわれは当然、問診も行いますが、これを用いてこの波形をとることによって、患者さんの補助診断をします。われわれが補助診断するだけで...
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