●質疑応答(1)多様性の社会に対応するにはどうすればいいか
小林 時間も押してきましたし、私が一方的に話していてもつまらないと思いますので、この辺りで一旦時間を止めて、皆さんの方から質問を受けつけます。今までの私のキャリア、あるいは女子の方が先ほど手を挙げていましたが、育児と仕事をどうやって両立しているのかといった話、あるいは学校の内容、それから今はお話ししませんでしたが学校をつくるまでのいろいろな道のりの波乱万丈などについても、皆さんのご質問があればどこでも答えたいと思います。いかがでしょうか。
―― 小林さんが行っているような教育は、若いうちからやっていた方が良いように思うが、大学1年生の私に今からできることはあるか。また多様性のある環境にでたときに対応できるようにするにはどうすればいいか。
小林 ありがとうございます。大学1年生といっても、まだまだ誤差の範囲ですよね。だって、島田先生から見たら、高校生と大学生の差なんて、本当にあまり見えない。たぶん見えないです、人生めちゃめちゃ長いから。逆にいうと、今ここにいること自体がすごく良いきっかけだと思うのですね。私たちはたまたま高校を運営していますが、別に高校でなければいけないわけではないし、もっと早い人もいれば、もう少し遅い人もいます。しかも、その長い人生において、3年や5年なんて本当に誤差です。
いま私は40歳です。もうそのぐらいになると、誤差だと感じます。私も高校の時、カナダに2年留学したので、大学入る時に1年遅れたのですね。その時は「一浪だ」などと思ったのですが、今から考えたら、本当に誤差ですよね。1年とか2年とか3年とか、もう誤差です。ですから、全然気にする必要はないということです。
あと、できることとしては、気づくということがやはりすごく大事だと思います。「あれ? おかしいな」と思ったことを、「あれ? おかしいな」と思うくせ。ステイタス・クォー(今そのままの状態、現状維持)というか、今は既存のものなのだけど、「あれ?」と思うくせがすごく大事です。それを書きとめておくとか、写真を撮っておくとかが、すごく大事なくせだと思います。それをやらないでだんだん歳を取ると、なぜか何もかもがそういうものだなとなってしまいます。そうならないことが何よりも大事だと思います。
二つ目の質問のダイバーシティについて、これはもう飛び込んでいくしかないと思います。自分が留学した頃に思ったのは、一つは多様性を楽しむ感覚です。日本語で「何々さんって変わっているよね」とか「何々さんって違うよね」というと、すごくネガティブな感じですよね。でも海外で、“She is defferent.”というと褒め言葉なのですね。「彼女イケてるねー」みたいな、「ちょっと違うよ、ユニークだよねー」という意味です。海外では「違う」ことに対してもう本当にポジティブなのですね。それは自分に対してもそうだし、他人に対しても、自分と違う人に対して「なんかこの人違うな」というのではなく、「あっ違うな、面白いな」と思える。そのダイバーシティを楽しむような感覚が、すごく大事かなというのが一つです。
もう一つ、振り返って思うのは、多様性が大切だとは言いつつ、やはりそんな良いことばかりではないということです。すごく苦労もするし、ぶち当たるし、批判もされます。私も日本ではこういう感じですが、カナダに行ったら「りんが言っていることは婉曲的過ぎて分からない。イエスかノーかはっきり言え」と言われました。いや、日本では「オブラートに包んでものを言え」と言われきてたのですが、と、そのぐらいのカルチャー・ショックがあるのです。それにすごく悩んだ時期があったのです。自分とは何なのだろう、アイデンティティって何なのだろう、私は何人なのだろうと思った時がありました。
でも今から考えると、そうやって一番悩んだ時期や一番つらかった時期が、たぶん自分が自分と一番真剣に向き合って、一番成長した時期だと思います。どんなにつらい時期があったとしても、振り返ったら絶対そこが一番の糧になるから、「つらいときほどラッキーだ」「私は良い経験しているわ」と自分に言い聞かせていれば、必ず出口は見えてくると思います。頑張ってください。
●質疑応答(2)5教科は満遍なくやった方がいいか
―― 自分も5教科を満遍なくやることには懐疑的だが、今の状況から考えて、小林さんは満遍なく勉強することがいいと思うか。
小林 いや、そんなことはないと思いますね。やはり5教科を満遍なくできなくたっていいのではないかという考えです。
もちろん、バランスも大切で、理系だけやる、文系だけやるということに賛成かというとそうでもありません。これから起こってくるイノベーションというのは、特に分野をまたいで...