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地域活性化で重要なのはミクロの視点

東北、沖縄発―チャンスをつかんだ地域活性化実例

伊藤元重
東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授
情報・テキスト
地域活性化で重要なのは、当事者がどこまで覚悟を持ってやるかということだ。東京大学大学院経済学研究科教授・伊藤元重氏はこのように語る。中央の政策に頼るより、自らチャンスを発見し、地域に元気を発芽させた実例を紹介しながら、当代屈指の経済学者がおくる地域活性化論。
時間:14:10
収録日:2015/09/17
追加日:2015/11/12
≪全文≫

●地域活性化で重要なのはミクロの視点


 地方創生や、あるいは地域経済をどのように活性化させていくかということが、いま日本中で議論されていて、それぞれ自分たちの地域を活性化させるために、地域もいろいろな取り組みをしています。こういうものが、いろいろな形で実を結んでくれたらいいなとは思います。ですが、地方の経済の問題を見ていて本当に思うのは、結局最後はやはり地域の住民や、あるいは地域の企業など、その当事者がどこまで覚悟を持ってやるのか、もしくはその時代の流れをしっかり見て動くかということだろうと思うのです。

 これは日本全体でもそうなのですね。例えば、アベノミクスで成長戦略をやって、しかし、「成長戦略はちょっと力不足だな。これでは日本の経済はなかなか元気にならないな」という議論はあるのです。もちろん成長戦略は大事なのですが、でも、まあ、ちょっと待ってほしいなと思うのは、やはり日本の主役は民間です。「政府の政策が悪いから日本経済は元気にならない。だから、自分の地域や自分の企業の経営もその業績も悪い」ということでは困るだろうと思うのです。ですから、やはり最終的には個々の住民や、あるいは企業などが、どこまで動くかということだろうと思います。

 そういう意味で、地域をどうやって元気にするかということを考えてくると、やはりかなりミクロの視点が重要だろうと思うのです。ですから、地域全体が雪崩を打つようによくなるということよりも、地域の中に元気になってくれるような芽がどれだけ出てくるかということだろうと思います。


●徹底的な壊滅をチャンスにした水産加工業者


 私がいくつかの仕事を通じて見ることがある現場の中で、面白い話を紹介したいと思います。一例として、東日本大震災で東北地方、特に岩手、宮城、福島の3県は非常に厳しい状況になっていて、もちろん、まだその復興のために皆さん非常に努力されているわけです。ただ、そういう中でもう何年か現場を見ていると、突然、「ああ、こういう見方もあるのか」ということに直面することがあるのですね。例えば、宮城県の石巻に少し前に行った時に、水産加工業者の方々とお話ししました。もちろん宮城県石巻はものすごい津波の被害にあって、水産加工業は壊滅的な打撃を受けたわけですし、中には命を失った加工業業者の方もいるわけです。われわれがお会いしたのは、地元でいま結構面白い動きをしている若手の経営者のグループです。何人かの若手経営者がいわば仲間をつくって、いろいろなことを一緒に共同で取り組んでいるのですが、その人たちが言っていました。例えば、石巻、宮城県、あの辺りですと、ホタテ貝やカキなどが採れるのですが、これまでは、そのように採って加工したものを、地域の卸売業者や、あるいは東京のような大消費地の中間業者に卸していって、商売を続けてきたわけです。

 しかし、こういうマスの流通経路に乗せた商品は、もちろん大量に売ることはできるのですが、どうしても利益率が低いのです。そして、一度そういうものが津波でやられてしまったために、どういうことが起きたのかというと、もう一回ゼロから考えてみるという動きが出ました。そうすると、自分たちのところで採れるホタテやカキが最大の価値で売れるためには何があるかなということを、皆で考えたのだろうと思います。ちょうどその時に出てきたアイデアが、「いや、台湾の人はカキやホタテが大好きだ。もちろん宮城県のカキやホタテだったら食べてくれるだろう」ということで、そのカキやホタテを加工して、何かおいしく味付けをし冷凍して、それを台湾に売るというビジネスを採ってみたのです。そうしたら、実は想像以上に手応えがあったということを言うわけです。つまり、この宮城県の水産加工業者の方から見ると、一回徹底的な破壊に直面し、相当真剣に考えた中で、やり方を少し変えたことによって、結果論として見ると非常にうまくいったということだと思います。


●販売方法の転換でチャンスを得た醤油メーカー


 こういうことは震災時期でいっぱいあります。陸前高田に、八木澤商店という地元では大きな醤油のメーカーがありました。もちろんご存知のように、陸前高田は町ぐるみに全部津波でやられてしましました。この八木澤商店は、地域でいろいろな意味もあって、その隣、近くの一関の山の中に新しい工場をつくってやってきたのです。その時、何をやったかというと、いわゆるクラウド・ファイナンシングというのですが、要するに、インターネットで少額の支援を受けるような資金を集めて、それで再建資金にしたのです。実はそのクラウド・ファイナンシングがやる仕組みとは、詳しい金額は忘れましたが、例えば、それに参加すると1万5000円を寄付であげる、要するに復興に対する寄付です。そして、...
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