10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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地球温暖化問題は大気という衣が地表を暖めて発生している

地球温暖化問題(1)気温の問題と温室効果

住明正
理学博士/東京大学名誉教授/サステイナビリティ学研究機構・特任教授
情報・テキスト
「大気があるから、地球の温度は安定している」と、国立研究開発法人国立環境研究所理事長・住明正氏は語る。それはなぜか。「温室効果」とはどういうものか。シリーズ「地球温暖化問題」第1回。(全4話中第1話目)
時間:07:36
収録日:2015/09/28
追加日:2015/11/23
≪全文≫

●温暖化問題にはいろいろな切り口がある


 今日はこれから、「地球温暖化」をめぐる最近の話題を少しお話ししようと思います。最初に、地球温暖化問題とは何かをご説明します。人々が普段話している地球温暖化問題には、実はいろいろな切り口があります。一つは、地表の気候システムに関するエネルギー収支の問題。それから、気候システム内部でエネルギーがどのように分配されるかという問題。そして、地球が温暖化していくことによる社会への影響と、われわれがどのように対応するかという問題の三つがある。これらはしばしば一緒くたに議論されがちですが、分ける必要があります。

 気候の問題は、基本的には「気温の問題」です。気温とはエネルギーのことですから、物理法則で考えることができます。多くの物理学にそういった自然法則がありますので、地球全体のエネルギーバランスの問題は、物理的に捉えることができるのです。


●可視光を使うよう、生物の目が進化した


 地球全体の気候システムに関するエネルギー構造を考えると、まず全てのエネルギーは太陽から来ています。太陽から入ってくるばかりだと、地球はどんどん温まってしまいます。地球の気候が安定しているのは、入ってくるエネルギーと出ていくエネルギーが釣り合っているからです。一瞬一瞬で釣り合っているのか、それとも1年、10年、100年で釣り合っているのかには議論の余地がありますが、一定の時間の中でバランスしていると考えることができます。

 現在、われわれ気象学者が主に考えているのは、地球の表層、地面付近で、地球に入ってくるエネルギーが気候システムの中でどのように分配されるかという問題ですが、それについては後で詳しくお話しします。

 太陽はだいたい6000度の物体が対応する黒体放射を出し、そのエネルギーはさまざまな電磁波となって地球に届きます。地球は大気という衣を着ていますが、幸せなことに、太陽光線の大部分は大気の主成分である酸素や窒素に吸収されずに地表に到達します。これは非常に大事なことです。

 太陽光線の主な部分を可視光といいます。人の目に見える光という意味ですが、これは逆に、地上に最もたくさん存在する光を使うよう、生物の目が進化してきたと考えるべきです。同じことを海について考えると分かりますが、水蒸気が多くの太陽光を透過させる一方で、液体となった水は太陽光を強く吸収します。ですから、海へ潜っていくと、あっという間に暗くなります。実際に太陽光は、海洋の上層10メートル、あるいは20メートルほどしか入りません。そうした点が空気と水の大きく違う点です。

 大気の主成分である窒素と酸素が、たまたま太陽エネルギーの主な部分である可視光の吸収性を持っておらず、豊かな太陽エネルギーが地表に届くことが、地球環境、特に生物の存在に大きな影響を及ぼしているのです。


●地球は大気があるから、安定している


 地球の平均気温は、全体でだいたい250K(つまり-23度)と考えられます。そうした地表気温に対応して、宇宙に向かって放射線として熱を出していくのが「地球放射」です。地球放射の波長は太陽に比べると長く、いわゆる「赤外線」の領域で、二酸化炭素や水蒸気などがよく吸収するものです。そこで地表から出ていくエネルギーがより多く捕らえられ、地表がより温められる。「温室効果」といわれるものです。

 地球は大気という衣を着ているから、寒くならず、安定した環境にあるといえます。大気が含...
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