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天国の松下幸之助は消費増税をどう評価するのか?

松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(4)無税国家と新国土創成~二大国家経営テーマ(後編)

松下幸之助
パナソニック(旧松下電器産業)グループ創業者
情報・テキスト
画像提供:公益財団法人松下政経塾
税収が右肩上がりで伸びる中での「無税国家」構想と、税収が減少して国の借金が増え続ける中での「消費税増税」――松下幸之助の弟子でありながらも、逆に消費税の引き上げを断行した第1期生で第95代内閣総理大臣・野田佳彦氏が、それぞれの時代背景におけるリアリティの違いから、日本の財政の持続可能性を考えるに至った経緯を明かす。天国にいる幸之助は果たしてこれをどう評価するのだろうか? (後編)(第3章4話目)
時間:15:21
収録日:2015/06/17
追加日:2016/01/18
カテゴリー:
≪全文≫

●塾の二本柱に 無税国家と新国土創成


 政治、経済ともに模範的になったら、世界に対して、無言のうちに大きな教訓を与えることになる。皆が見に来て日本をまねする。そういうふうになれれば、国民としてもいいと思う。

 まず塾そのものが、一つの計を持たないといけない。国家百年の計というものはあっていい。ところが、日本には国家百年の計がないわけで、来年の計や再来年の計はあっても。だから、百年の計は、五十年の計はというもの、政府でそれを立てていない、いまだに。そのことをこの塾で考える。こう思っている。これが一つ。

 もう一つ大きなものとして、現在の日本の国は、(人口が)1億あって、国土が狭い。ほとんど山。可住面積は非常に狭い。これでいいのか。食料をとってみたら、食料を皆自給できない。3割は輸入している。米だけが余っている。飼料とかそんなものは足りない。それで3割輸入している。だから、全く独立した国家だといった場合は、自活できない。その国と交渉して、物資を分けてもらって輸入するからやっていけるけれども、それが途絶したら駄目になる。それで、新国土創成は、どうしてやったらいいかということを、この塾で考える。

 だから、この塾は政治団体でも何でもないけれど、政策を立てて、こういうことが必要であるということを世間に発表して、それで国民の一人一人にだんだんそれを浸透させていこう。そして百年の計を立てて、百年先の青写真を描くという仕事をこの塾でやろうと思う。皆さんは塾生として、それに手伝ってもらう。少なくとも勉強を一人でやる、こうして。そうでもないと、勉強も具体的にできないと思う。

 一方で、政治の面で、今このままいったら破綻してしまう。全然足りないから金が。増税、増税と、増税してもこれ以上できない。だから、無税国家をやれと。無税国家やって、同時に傍ら、国土を倍にする。人口を2億にする。こういうことを、政治的に考えてやらなければいけない。

 それを、この塾で考えて逐次発表していく。皆さんは、その研究員となって、勉強してもらう。諸君が2年生になったら、かなりの仕事としてそれを手分けして、君は何を担当する、君は何を担当するということで、そして研究する必要があれば、塾外に出て研究していく。そういうことをやる。こういうことを今日は具体的に話しようと思う。

 具体的な研究の題目を持たないと、勉強できない。本当は。書物を読んで勉強するということは、ある程度の知識がつくけれど、実際に腹に覚えられない。だから、そういうことを具体的に研究していく。そして、ここは国民に納得してくれと。「なるほど、それが必要だ」と。「少々困難があっても、これはやらなければならない」ということを、全国民に浸透させる。その仕事をこの塾でやろうと思う。諸君も勉強する目安ができるからいいと思う。そういうふうに思っている。今、困るほど研究する問題がある。

 そういうものを信念として持っていたら、そうすると諸君が政治の面に立ったときに、はっきりとものが言える。今のままでは具合が悪い。塾は政党でも何でもないけれども、不偏不党だけれど、塾そのものに一つの目標ないと。「こういう国をつくるために、諸君はこういうふうに勉強してくれ」と、やれば初めてそこで、その目的に向かって邁進するエネルギーが生まれてくるだろうし、信念が生まれてくるだろう。こう思っている。

 何か目標がないといけない。目標を立てて、しかし、それをやっていく過程においては、「今日の政治はこういう点においていけない」「こういうふうに変えていったらええ」というものに入っていく。だから、何も百年先に完成した姿に今すぐなるのではないから、それをやるためには「今日の政治をどうすればいいのか」という、今日の政治から研究していかないといけない。だから、今は今日の政治だけがあって、明日の政治がない、今は。だから、「百年先の政治はこうだ」「そのためには今日はこういかないといけない」と。

 今日の政治から始まらないことには、百年先の政治は分からない。国民も、「百年の政治はこうや」言ったって、「はー?」というようなもの。分からない。今年がこうだったらこうなっていくということから始めて、政治批判していく。むしろ「今日の政治の欠陥というものは、こうだ」「長所はこうだ」ということから入っていくには、非常にいいと思う。

 今は、日本に百年の計というような、国家百年の計がない。だから、今日の政治がもたもたしている。目標がないからどこをどう通って行ったらいいか足元が分からない。「今の政治はここを変えていかなければいけない」、そういうことをやる。わしはそう思っている。百年先の政治を説くには、今日の政治から検討していかなければいけないと、こう思っている。...
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