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対米ドル・対円ともに最安値圏に下落したブラジルレアル

ブラジルレアル安の行方(1)レアル売り・五つの理由

高島修
シティグループ証券 チーフFXストラテジスト
情報・テキスト
2011年以来、ブラジルレアルが長らく下落を続けている。シティグループ証券チーフFXストラテジスト・高島修氏は、そこに「五つの理由」があるという。いったいどのような理由なのか。高島氏が語るシリーズ「ブラジルレアル安の行方」全3話中第1話目。
時間:09:53
収録日:2015/11/25
追加日:2015/12/17
≪全文≫

●ブラジルではレアル売りと株価下落が進行


 シティグループ証券の高島修です。今日はブラジルレアルについてお話ししたいと思っています。

 大きく三つのテーマがあります。一つ目は、ブラジルレアルがなぜこれまで売られてきたのか。二つ目に、ブラジルレアル売りの出発点は2011年ですが、そこでどういった政策転換が行われ、現在はどのように変わってきたのか。3番目は、今後どういったポイントを見れば、ブラジルレアルが底入れするか、それともまだ売られていくかを見極められるのかということです。

 今年に入って、新興国通貨の売りが一段と加速しましたが、中でもブラジルレアルが突出して売られてきました。対米ドル相場は、2011年ごろは1ドル2レアルでしたが、今年の9月末には1ドル4レアルを超えました。2011年前後に比べ、レアルの価値が2分の1ほどになったということです。対円相場もレアル売りが優勢で、2007年ごろはだいたい1レアル60円前後でしたが、今年9月には1レアル40円を割り込んでいます。

 実はブラジルは株価も下落しており、過去5年ほど、ほぼ一貫して下落基調をたどっています。為替市場におけるレアル安・ドル高が進んでいるために、ドル建てで見たブラジルの株価は一段と下落する格好になっています。世界的には、2008年のリーマン危機による市場の混乱からマーケットが落ち着いていったのが2009年から2011年ですが、この3年間の平均を100として、ドル建てのブラジルの株式相場の動きを見ると、今年は40あたりまで下がってきています。その間、アメリカ株の他、ここ数年間は日本株も上がっていますし、世界的にも株価はどちらかというと上昇基調にありました。ブラジル株式市場の長期的かつ大幅な下落は、世界でも突出した弱さだといえると思います。


●レアル売りにはいくつかの理由がある


 こうしたブラジルレアル売りの理由として、一つ底流にあるのは、折からの構造的な経常赤字です。インドやインドネシアもそうですが、経常赤字が大きくなると、通貨は売られやすくなります。さらに今年は、経済成長率が一時マイナス成長に陥るほど、景気が悪い。これが二つ目の理由として挙げられます。

 そうなると三つ目として、政治的にジルマ・ルセフ大統領の支持率がどんどん低下していることが挙げられます。一時期は支持率が10%を下回るほどで、政治的リーダーシップが取りにくい状況になっています。景気の悪化に加えて、ペトロブラスという国営石油会社で1992年以降、さまざまな汚職があったことが発覚し、そこにルセフ大統領も関係していたのではないかという話が出てきたことが支持率低下の大きな要因です。四つ目に、経済成長率の低下、政治的な混迷を受けて、格付け会社がブラジル国債の格付けを下げています。そのことも市場ではかなり注目されています。


●資源価格の下落が拍車をかけた


 五つ目の重要なポイントとして、原油が象徴的ですが、昨年後半以降に資源価格が大幅かつ持続的に下がっていることが挙げられます。いまお話ししたペトロブラスはブラジル国内の設備投資の相当部分を占めていますが、原油価格が下がってくると、この設備投資が減ってしまいます。それから、ブラジルはオーストラリアと同じように鉄鉱石を産出・輸出していますので、鉄鉱石価格が下がるのもマイナスの要因となってきます。

 いま見ていただいているグラフは、今年9月までの世界の主な新興国通貨の対米ドルでの上昇率、下落率を示したものです。ここで示した新興国通貨の全てが、今年の1月から9月にかけて、対米ドルでマイナスのパフォーマンス、すなわち下落していたことが示されています。ただ、下落率は通貨によってまちまちで、もっとも大きいのがブラジルレアル。下落率はほぼ3割に達しています。

 それ以外では、緑色がブラジルをはじめとした中南米通貨ですが、グラフを見ていただくと、その中南米通貨の下落率が総じて大きいことがお分かりいただけると思います。コロンビアは石油、チリは銅を産出というように中南米通貨の国には資源依存度の高い国が多く、そういった通貨のパフォーマンスが悪かったということです。一方で、赤の棒グラフ・アジアの国々は、資源依存度が低いところが多い。その筆頭が、台湾、インド、中国ですが、いずれも下落率が小さいものに留まっています。マレーシアやインドネシアの下落幅は、他のアジア諸国に比べて大きいですが、どちらも資源依存度が高い国です。今年9月頃までの新興国通貨は、原油、資源価格の動向に相当影響されていたのです。経常赤字、景気の低迷、政治的な混乱、格下げ、並びにこうした資源価格の低迷が、ブラジルレ...
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