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精神病院の経営戦略で高齢化時代に求められるものとは

うつ病対策と経営リスク(4)精神科発イノベーション

渡部芳德
ひもろぎGROUP理事長/東邦大学薬学部 客員教授
情報・テキスト
精神科にも、イノベーションは必要だ。ひもろぎGROUP理事長・東邦大学薬学部客員教授の渡部芳德氏は、常に時代の先を読み、社会の変化に対応できる精神科の経営を目指して種々の改革を行ってきた。その足跡を振り返りながら、これからのあるべき病院経営を語る。(2015年10月15日開催 日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「企業でのうつ病休職者の社会復帰(リワークプログラムの実情)~ストレスチェック制度を有効活用した人材育成と企業経営~」より、全5話中4話目)
時間:06:00
収録日:2015/10/15
追加日:2016/01/28
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≪全文≫

●「ひもろぎGROUP」はどんな経営を行ってきたか


 後半は、経営者のメンタルヘルスについてです。経営者のメンタルヘルスについてお話する前に、私はどんな経営者かということを少し見てもらいましょう。

 私がやっているのは「ひもろぎGROUP」という医療機関ですが、なぜこんな名前なのか。それは、ご神木から漏れてくる、「日の漏るる垣」から「ひもろぎ」という名前を作りました。ひもろぎGROUPは、1965年に福島県の白河で開業した精神病院が始まりでした。

 そこから35年間、ずっと古い精神病院をやっていたのですが、2000年に介護施設、2002年に東京にクリニックをつくり、2004年に病棟を閉じて、2005年に社会福祉法人化、そして東京のクリニック拡張ということで、次々やってきています。「アン‐サポ」をつくったのは、2013年です。そして今度、私たちは来年の6月にクリニックを移転させよう考えています。

 こんな形で、時代に合わせて次々と改革を行ってきたのが、精神科医ではなく経営者としての私の一面です。


●これからの高齢化時代に求められる病院経営


 私もよく読むピーター・ドラッカーの本の中にもある通り、大事なのは見えざる改革が起きていることで、高齢化からはもはや逃れられないのです。人口構成の変化によって誕生した年金社会は、新しい問題を生み、新しい政策を要求します。高齢化は進んでいますよ。

 このままでいくと、地方はどんどん駄目になります。原発事故で一番問題になったのが、人材流出です。福島県から人がいなくなるということが一番の問題で、若い人がどんどん出てしまうということです。そうすると、田舎の不動産の価値はなくなってしまいますよね。高齢化というのは、すごく大きな問題です。

 それで、今から10何年前に老健(介護老人保健施設)をつくって運営しているのですが、お年寄りもだんだんとピークが過ぎてくると減ってくる。すると今度は介護施設がたくさんできているため、施設の患者さん、利用者の取り合いが起こっているわけです。都内ではまだそんなことは起こっていないですが、地方ではだんだんそんなことが起こっているということです。

 これではまずいだろうということで、われわれは人材を確保するために、東京にクリニックをつくったのです。それは、医局制度(ほとんどの医者が大学病院の医局から各病院へ派遣されていた制度)というものが崩壊して、大学から医者をもらうという手段がもうないですから、お医者さんは東京で確保するしかないのです。今、ひもろぎGROUPで働いているお医者さんは全て、東京のクリニックから来た人で、白河の施設も担当してもらっている状態です。

 それから、精神病院を閉じた後、福祉ホームをつくっています。生き残る医療法人になるにはどうしているかというと、成功していないものは全て閉鎖し、改善し、新たな展開を図る。それから、イノベーションを体系的に行い、施行態度を根本から変える。いつも最善のものをつくることが大切だと思い、今まで変化をしてきました。ですから職員は、私があまりに次々行くので、ついてこられなくて大変な思いしている人もいると思います。


●精神病院の高齢化にどう対応するか


 それから、先を読むということですね。この先にどんなパラダイムシフトが起きるのかということを考えながら変革を行っていかないと、すぐ陳腐なものになってしまいます。私が精神病院を閉じてから相当たちましたが、今一番問題になっているのは、精神病院の高齢化が起こっていることです。

 精神病院というのは、患者さんが入院すると、アパートのようにお金がジャンジャン入ってくるわけです。ところが、精神病院に入院してから30~40年たった人というのは、だんだんと亡くなっていきます。しかし、亡くなった後に新しい精神科の患者さんが入ってこないのです。なぜかというと、お薬がとてもよくなった結果、大体9割の患者さんは発症しても外来で診ることができるからです。そうすると入院病棟が空きますよね。

 ここ2~3年、精神病院のベッドの稼働率が急速に落ちています。そうすると、もう病院の経営が成り立たなくなる。私たちが、こういうことが起こるだろうということを予測できたのは、一生懸命治療していたら、病棟の稼働率が下がってくるからです。(反対に)手を抜くと上がるのです。

 真面目にやっていたら病院がなくなるなと思ったので、「えいっ、閉じてしまえ」ということで閉じたのですね。当時、病院を閉じたら、福島では「なぜそんなことをやるのか」と言われていました。今になってみると、「ああよくやったね」と言われるのですが、先を読むということです。


●地方の温度差と人材育成がビジネスチャンスをもたらす


 私...
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