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「失敗」のない人間はリーダーになれない

世界標準の危機(6)「失敗」が育むリーダーシップ

齋藤ウィリアム浩幸
株式会社インテカー代表取締役社長/内閣府本府参与
情報・テキスト
日本の政府反対運動も、世界標準から見れば「かわいい」ものだ。内閣府本府参与の齋藤ウィリアム浩幸氏はこう話す。世界の現実はもっと困難で切実であり、時間のかかる政府の対応など待っていられない。生きるか死ぬかの瀬戸際が日常化する現代だからこそ、体制維持ではなく、いくつものトライと「失敗」ができるリーダーが必要だ。(全8話中第6話)
時間:09:03
収録日:2015/11/19
追加日:2016/01/25
ジャンル:
≪全文≫

●リスクを背負うのが、リーダーシップだ


齋藤 結局、リーダーシップの定義が大事だと思いますね。私はちょうど今年の夏、大学で卒業のスピーチを頼まれたのです。これはアメリカではすごく名誉なのです。それで結構久しぶりに、真剣に講演の原稿を書いたんのです。そこでやはり一番思ったのは、エリートが持つべき意識についてです。

 日本やイギリス大学で教えていて思うのは、エリート教育というか、いいところを出ると、ある勘違いをしてしまう。彼らを見ていて一番心配なのは、今の世の中のつくりというのは、東大なり何なり(私もUCLAですが)、そういうところを出るというのは、すごく恵まれています。親や周囲にすごくちやほやされて、集中して何かの試験を通ってそういう大学に入ったと思うのです。ある面で、すでにエリート的なところがあると思うのです。

 そういう教育を受けて卒業すると、自分はもう頂点に立っているという勘違いをしてしまうと思います。私がその人たちに向けたスピーチの一番のポイントは、注意です。あなたたちは変な勘違いをしてはいけない。あなたたちは天才少年などではない。これからの世の中では、ハングリーさや興味を持ち、パッションを持って何かに対して頑張って取り組むことがリーダーシップだ。リーダーシップというのはそういうことだから、リスクを背負って、それをどう乗り越えるか、フェイル・ファストでやっていくという人物を、社会としては期待している、ということをポイントとして伝えました。


●日本のリーダーたちは、失敗をしないままトップに立ってしまう


齋藤 アメリカの大学では、そこまで言わなくてもよかったかもしれません。私は、日本の大学でエリートのところに出て行って、どこか会社に入る。そこに入ると、裸の王様ではないが、それ(会社)を維持するだけで、非常にコンサバな、なるべく問題を起こさない、失敗を減らす、そういうエスカレーター方式で上がっていく。結果的に一番上に立つ人は、そういう失敗をしたこともない、イコール「経験」をしたことのない人がトップになる。

 しかし実は逆なのです。リーダーシップという意味での評価の仕方が、日本ではだいぶずれていますね。リーダーというのは、一番問題を起こしていない人ではありません。いろいろなことをトライします。もちろん時々問題もありますよ。変な風にも見られますが、それをどうにか乗り越えた人が、本当のリーダーなのです。

 それが、日本の評価では正反対です。だからトップに立つとすごくかわいそうなことに、そこで初めて、誰かのせいにするという言い訳ができなくなってしまうことです。でもトップに立っていて、皆が見ているからさらに緊張してしまう。さらに間違えたくないから、さらに何もしないというようなことになってしまって、すごくかわいそうですよね。

── そういう風にトレーニングされてきてないのに、いきなりその場所に立ってしまうと。


●多様性とチャンスが、アメリカのハングリーさを持続させる


齋藤 これは、皆にとってもかわいそうだと思います。よく言われるのが、今、人気があるベンチャー、成功しているベンチャー、例えばウーバーでもフェイスブックでもマイクロソフトでもそうですが、大体トップの人は皆、高校の平均の成績はCなのですね。Aではないのです。やはり成績が良いだけではなくハングリーさが必要だと思うのです。

── アメリカの社会が面白いなと思うのは、豊かになった後でも、ハングリーさを持続できますよね。

齋藤 年功序列もある面で激しいことは激しいのですが、イノベーションが続く一つの要因は、やはり多様性の違いですね。皆にそういうチャンスがあります。黒人が大統領になるとか、そういうチャンスが本当にある国という点では、アメリカは誰にも負けないですよね。日本の場合、重要なのは年次で、どう頑張っても頑張らなくても給料があまり変わらないのだったら、私もそういうシステムにいたら、あまり変なことはしたくないですね。

── それは社会的にはすごく安定しているし、優しい人がいっぱいできます。そこでつくった仕組みが、生産性が高くて富が維持できるのだったらもつのですが、齋藤さんが言われていたように、そろそろバブルが弾けてしまうだろう。問題はそこですね。

齋藤 エスカレーターに乗ったままでやっていけるというのは、ある面では素晴らしいけれど、上司が部下にちょっと怒鳴ったからといってパワハラで怒られるということになると、これは弱くなりすぎですね。

 そうなると、皆お手上げ状態になって、もう何もしたくなくなるのは当然ですよね。これでは駄目ですね。


●政府など本来は頼るものではない


齋藤 こんなことを言ったらたたかれるかもしれませんが、最近いろいろなことがあって...
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