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泣きっ面に蜂のかゆみを撃退する新薬登場!

かゆみのメカニズム(4)透析や肝疾患に伴うかゆみ

髙森建二
順天堂大学 名誉教授/順天堂大学大学院医学研究科皮膚科学 特任教授
情報・テキスト
抗ヒスタミン薬が効かないのは、アトピー性皮膚炎だけではない。腎臓透析に伴うかゆみ、肝疾患に伴うかゆみもその例で、つらさは筆舌に尽くしがたい。しかし、このかゆみのメカニズムを追究することにより、ぴたりとかゆみを抑える薬が日本で開発・販売された。かゆみの研究の第一人者である順天堂大学名誉教授で同大学院皮膚学特任教授・髙森健二氏にお話をうかがう。(第4話中最終話)
時間:06:22
収録日:2016/01/19
追加日:2016/02/25
≪全文≫

●透析や肝疾患のかゆみは、夜も眠れない


 本日は、透析に伴うかゆみと肝疾患に伴うかゆみについてお話しします。

 これらの疾患のかゆみ、特に原発性胆汁性肝硬変のかゆみは、かゆみの中でも最も強いかゆみを呈することが知られています。これらの患者さんは、夜も眠れないような強いかゆみにいつも悩まされています。

 通常、私たちはかゆみがあると、かゆみ止めの薬である抗ヒスタミン薬を使いますが、腎透析や肝疾患に伴うかゆみは、全くそれらの抗ヒスタミン薬によっては収まりません。

 しかし、数年前に日本の企業により、これらの疾患のかゆみの原因が解明され、薬が開発されました。その結果、患者さんは、かゆみから解放され、生活の質(QOL)を上げることができるようになりました。


●かゆみの原因は、オピオイドという麻薬様物質


 これらの疾患ではオピオイドという物質がかゆみを起こしていたわけですが、オピオイドというのは、モルヒネに似た構造を持った物質です。

 一般にモルヒネというのは、手術の後やがんの末期などで出現する強い痛みを止めるために使用されていますが、長く使っているうちにかゆみが出てくることが分かっていました。

 実は、このモルヒネに似たオピオイドが、腎透析や肝硬変のかゆみに関係していることが分かってきたわけです。

 かゆみを起こすオピオイドには、β‐エンドルフィンとダイノルフィンという物質があります。β‐エンドルフィンは、μ‐オピオイド受容体に結合すると、かゆみを起こします。また、ダイノルフィンは、κ‐オピオイド受容体に結合することによって、かゆみを止めることが分かってきました。

 そして、透析や肝疾患に伴うかゆみでは、かゆみを起こすβ‐エンドルフィン/μ‐レセプター系が、かゆみを止めるダイノルフィン/κ‐レセプター系よりも優位になっていることが分かってきたのです。


●しつこいかゆみがピタリと収まる新薬ができた


 したがって、かゆみを止める系であるダイノルフィン/κ‐受容体系を優位にしてやることによって、かゆみが止まるのではないかということが考えられました。

 そこで、このκ‐受容体系を優位にする薬が開発され、患者さんたちに投与されることになりました。そうすると、これまでどんな治療をしても治らなかったかゆみが、この薬によってピタリと止まることが明らかになりました。患者さんは、夜も眠れないようなかゆみから解放され、QOLを回復しました。

 私たちは、製薬会社と協力して、透析や肝硬変などの肝疾患に伴うかゆみの原因を明らかにして、それに応じた薬を開発することができたわけです。この薬の名前は、一般名を「ナルフィラフィン塩酸塩」といいます。商品名としては、「レミッチ」あるいは「ノピコール」という名前で、現在広く販売されています。透析や肝硬変のかゆみに広く使われることになって非常に効果を上げ、患者さんからは非常に喜ばれています。


●単なるかゆみと侮らず、必ず受診・相談を


 今まで、かゆみについていろいろお話ししましたが、かゆみの原因は決してヒスタミンだけではなくて、多岐にわたっていることがお分かりいただけたかと思います。治療としては、抗ヒスタミン薬だけではなく、その原因になっている物質に対する治療法が必要になってくるわけです。

 例えば、虫刺されやじんましんのようなかゆみから、内臓の異常があるためにかゆみが起きている場合、あるいはすい臓がん...
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