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世界の発電トレンドは「自然エネルギー100%」

加速する自然エネルギーの拡大(1)世界的構造変化の背景

飯田哲也
認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所 所長
情報・テキスト
エネルギー分野において世界的な構造変化が起こっている今、私たち日本の消費者は、新エネルギー時代にどう向かっていくべきなのか? 認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所所長・飯田哲也氏が、世界中で急速に普及しつつある自然エネルギーの実態とその背景について解説する。(全2話中第1話目)
時間:13:22
収録日:2015/12/25
追加日:2016/03/21
≪全文≫

●世界の潮流は「自然エネルギー100%」


 皆さん、こんにちは。環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也と申します。世界史的に見ても非常にグローバルで大きな変化が今、世界全体で起こっていることを、最初にお話をさせていただきます。そして、後半は、それをとりわけ地域や個人など無数の人たちが世界中で起こしているのですが、それは20年ほど前に始まったインターネットによる変化と同じような変化で、そうした非常に大きな構造変化が今、エネルギーの世界でも起こっているという話をさせていただきたいと思います。私はそれを「エネルギーデモクラシー」と呼んでいます。

 まず世界的な変化ですが、この10年間である意味、世界のエネルギーのパラダイムががらりと変わりました。最初のグラフを見ていただければ分かりますように、10年前、あるいは数年前の例えば2009年にコペンハーゲンで行われた地球温暖化サミットでも、自然エネルギーはまだ取るに足らないものと思われていました。しかし、今回(2015年12月12日)パリで行われたCOP21が合意となりました。その成功に至った背景にあるのは、世界の何百社もの企業や自治体、あるいはデンマークやスコットランドといった国の単位で、自然エネルギー100パーセントを目指そう、あるいはそれができるんだという声でした。


●あらゆる面で中心に躍り出た自然エネルギー


 例えば、10年ほど前、世界中の風力発電は(累積で)わずか原発50基分、5000万キロワットでした。けれども、2014年の1年間だけで5000万キロワットとなり、累積では3億7000万キロワットでした。これは、次のグラフを見ていただければ分かるように、実際に原発の設備容量に追い付いたということです。まだ正式な統計は出ておりませんが、2015年の末にはこれをはるかに超え4億数千万キロワットになるでしょう。ということで、風力発電は原子力を置き去りにして急速なスピードで増えています。

 太陽光発電ですが、10年前にはわずか原発3基分にも満たない200数十万キロワットが世界中にあるだけでしたけれども、これが2014年度1年間だけで原発40基分、4000万キロワット増え、2015年はさらにそれを上回る勢いで増えています。2014年末の時点で原発の設備容量の半分である1億8000万キロワットとなり、2017年の末には原発に追い付く勢いで太陽光発電が増えると思われます。

 取るに足らないと思われていた自然エネルギーがいまや、エネルギーの供給面において圧倒的に中心の扱いとなり、地球温暖化対策としても中心的な役割を担っています。そして、世界で投じられる自然エネルギーへの投融資額は、2014年度で36兆円。2015年度はさらにそれを上回ると予測されています。これは、石油、石炭、天然ガス、原発、全てを合わせた投融資額よりも大きく、これもこの10年間で8倍増となっています。いまや産業、経済、さらに金融面でも非常に期待される、しかもクリーンな投資だということです。


●この10年で原発を超え加速度的に普及


 この10年間の大きな変化の真っただ中にあった2011年3月11日、日本は東日本大震災と東京電力福島第1原発のあの事故にいわば遭遇をしたのです。これは本当に大変な事故で、いまだに収束のめどが立っていません。そういう状況ではあるものの、この大きな不幸の中、数少ない、いや、唯一ともいえる幸運は、原子力立国計画を掲げ原子力にまっしぐらに進んでいた日本がこの事故を契機に非常に野心的な固定価格買い取り制度(フィードインタリフ)を成立させたことです。これで、日本も立ち止まって、自然エネルギーへの世界の方向、あるいは自然エネルギーによるエネルギー革命にようやく歩み始めたという状況です。

 この50年間の発電量の変化を見ても、このトレンドははっきりしています。自然エネルギーは、太陽光、風力だけではなく、水力、地熱、バイオマス、いわゆる俗にいう5大自然エネルギーのことですが、これらを全て合わせた発電量に10数年前の時点で原子力がほぼ追い付いて、世界の原子力と自然エネルギーの発電量はほぼ並びました。ですが、この10年において、実は原子力の発電量は福島第1原発事故よりも前にすでにピークアウトしており、今はむしろ減りつつあるのです。これは、新設の原発よりも老朽化原発が撤去される、あるいは老朽化原発の稼働率が下がっていることが大きな原因です。

 一方で自然エネルギーは、この10年間の加速度的普及によって、いまや世界の原発の発電量の倍に到達し、しかもその勢いは増しているのです。地球温暖化対策でも期待されている通り、世界で新設される発電のいまや6割が自然エネルギーです。今後の新設ですが、化石燃料に関し...
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