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Diaoyou Islands? それとも尖閣?

戦略的国際広報のすすめ

曽根泰教
慶應義塾大学大学院教授(政策・メディア研究科)
情報・テキスト
©国土画像情報
「ガラパゴス」に象徴される内向き国家・日本。政府周辺の言動が海外の誤解を呼ぶ事態も頻発している昨今、「外への発信力」を磨く方法はあるのか。曽根泰教氏が「戦略的国際広報」の重要性を唱える。
時間:15:22
収録日:2014/03/24
追加日:2014/04/10
≪全文≫

●“Diaoyou Islands“か“Senkaku(尖閣) “か


今日は「戦略的国際広報」というお話をいたします。固いタイトルですが、具体的な話から始めたいと思います。
友人のアメリカの学者と普通に会話をしているときに、彼が「日本は、“Diaoyou Islands“が大変だね」と言ったのです。私はこれが「魚釣島」「尖閣諸島」のことだと知っていたものですから、「あ、そうか」と思いました。つまり、アメリカのインテリのほとんどは「尖閣」よりも、中国名の「Diaoyou」が一般的なのかと、大変ショックを受けたのです。
その経験があったものですから、ある会合で「一体『尖閣』という呼び名は、どのくらいの国がどういう形で使っていますか」と発言しました。たまたま同席されていた官房副長官が、後から調べて「アメリカ国務省は正式に“Senkaku“と呼んでいます」と書面による回答をくださいました。ですが、私が知りたかったこととは少し違います。世界の何ヵ国が「尖閣」と呼び、何ヵ国が「Diaoyou」と呼び、 そしてメディアはどちらの言葉を使っているのかに私は大変興味を持ったわけです。
これは、日本が領土問題や領有権問題を議論する以前の話であり、一体何語が使われているのか。竹島か、独島(ドクド)か。日本海なのか、東海(トンヘ)なのか。このことは意外に知られていなかったし、平気でいたと思います。つまり、尖閣を「尖閣」と呼ばないメディアに対して、「正しくは尖閣なのだ」という訴え方を、外務省はやってきたのだろうか。この疑問があるわけです。

●「知られていない」のを知らせるのが広報の第一歩


そして、多くの人が指摘する日本のODAがあります。 中国に対する円借款、ODAはこれまで何度も行われてきました。額的にも大変多かったですが、問題はこのODAに効果があったのかどうかです。つまり、中国の政治家や中国社会科学院の学者たちは、「日本のODAが中国の経済発展に大変役に立った」と非常に感謝していますが、中国国民は知らないわけですね。
この「知らない」という事実に対して、一体どうしたらいいのかは、実は重要な問題です。日本の外務大臣やいろいろな立場の指導者が過去に海外に行ったときには、「日本のODAには大変感謝している」と言われています。でも、これを言うのは専門家や政治家、あるいは官僚であって、国民は知らないのが一般的です。
「実際にいいことをしているのだから、日本はこれで「陰徳」を積んだことになる。長期的に見ればいずれわかってもらえるだろう」という理解でやってきたと思います。しかし、「知られない」のは「ない」と同然です。まず知ってもらう、認知される。これは、広報における第一歩とも言うべき、一つの重要な点になります。
また、日本の官僚はよく「この政策は内容はいいのだが、 伝え方が悪かった」と言います。国民とのコミュニケーションが下手なために理解されていなかったという問題点です。
広報には「認知」と「伝え方(コミュニケーション能力)」の二つの問題がありますが、この二つ目のほうがもっぱら日本では議論になるのです。官僚たちは、間違った政策は決して行わない。しかし、伝え方がまずかった。だから、広報をすればいい。いずれ国民は理解してくれるだろう、と。
しかし、それ以前に、日本国内と海外を問わず、「知られていない」ということ。これをどうするかは、非常に重要なのです。

●“Cool Japan“や「医療ツーリズム」に見る国際広報の問題点


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