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失敗してもいいから難しいテーマを選んで挑戦せよ!

水と地球と人間と(7)勉強と研究の違い

沖大幹
国際連合大学 上級副学長/東京大学生産技術研究所 教授
情報・テキスト
大学時代、科学や数学の研究をすることは、社会に出て、ビジネスをする上でも役に立つという。それは一体なぜなのか。地球規模の水循環と世界の水資源に関する研究の第一人者である東京大学生産技術研究所教授・沖大幹氏の語る「シリーズ・水と地球と人間と」第7回。(インタビュアー:大上二三雄氏/エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社代表取締役)
時間:06:47
収録日:2015/03/19
追加日:2016/04/21
大学時代、科学や数学の研究をすることは、社会に出て、ビジネスをする上でも役に立つという。それは一体なぜなのか。地球規模の水循環と世界の水資源に関する研究の第一人者である東京大学生産技術研究所教授・沖大幹氏の語る「シリーズ・水と地球と人間と」第7回。(インタビュアー:大上二三雄氏/エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社代表取締役)
時間:06:47
収録日:2015/03/19
追加日:2016/04/21
≪全文≫

●科学や数学で解けていない問題は多い


── 先生は『東大教授』という本も書かれましたが、この中に出てくる「勉強と研究の違い」のくだりが本当に面白かったので、少し伺ってもいいですか。

沖 高校生の時、受験勉強がだんだん嫌になっていきました。勉強しなくてはならないからではなく、一番顕著なのは物理ですが、問題がいつも同じで飽きてくるからです。20世紀の初めに生まれていれば発見のチャンスはあったのに、世の中は分かったことだらけだ、などと思っていました。

 ところが、大学に入ると、その認識が間違っていたことがしみじみと分かってきました。高校までの教育では、分かっていることを分かるように教えることが先生の仕事ですから、私はすでに分かっている世界しか知らなかったわけです。

── 解答のある世界ですね。

沖 しかし、科学で解けていない問題はたくさんあるのです。むしろ解けている問題こそ、ほんのわずかにすぎません。数学も同様だと言います。一番簡単な例で言うと、私たちは、数学は数式で何でも解けると思っていますが、高校では解ける数式を習うのです。解けない問題は教えても解けないわけですから、解かないのです。このことを高校の時には分かっていませんでした。


●新しい課題の発見と挑戦自体に価値がある


沖 大学に入ると、答えがないかもしれない問題に挑戦していくことになります。研究とはそういうものです。考えてみると、実は社会に出てビジネスを行うときも同じで、成功するかどうかは分かりませんが、挑戦しなくてはなりません。

 大学でやる勉強の価値とは、答えがあるかどうか分からないけれど、新しい課題を見つけて必要な資料を集め、あるいは誰に話を聞けばいいかを考えて、決められた締め切りまでに、100点は無理としても、80点、90点の答えを出すことです。そのために、一番効率の良いやり方を追求することです。そういった経験を、一度大学でできるといいと思います。幸いなことに、理系、特に工学系は、卒業論文を書くときに一度できるのです。

 東大の工学系は、1学年に900~1000人の学生がいます。皆オリジナリティーのある研究ができるとは限りませんが、それに挑戦すること自体が、社会に出てから、新しい課題に挑戦するための良い練習になっているのではないかと思います。

大上 課題設定能力を学習する機会になっているわけですね。実は最近、理系の経営者が増えてきています。例えば、松下電器(現パナソニック)や、三井物産の新社長がそうです。理系の課題設定能力がビジネスに求められているのかもしれません。

沖 この点もビジネスと共通点すると思いますが、課題は世の中にたくさんあるわけです。その中で、挑戦する価値のある課題と、答えが出てもあまり価値のない課題を見極めることも大切だということです。

── 大事なポイントですね。

沖 模擬的に少し試してみて、深入りしても仕方がないと考えるか、続けた方がいいと判断するか。これも研究者だけでなく、経営者に求められている能力だと思います。

大上 それは、理系の世界なら経験できますね。文系では現状は難しい。

沖 私は工学系に居ながら、個人的には、東大生3000人のうち、1000人も工学エンジニアに育成する必要があるのだろうかと疑問に思っています。なぜなら、製造業はGDPのたった2割ですから。

 それなら、他に何かやるべきことがあるかというと、残念ながらあま...
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