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「水は心にもいいんだよ」――『星の王子様』

水ビジネスの動向(4)水問題をめぐる感情論

沖大幹
国際連合大学 上級副学長/東京大学生産技術研究所 教授
情報・テキスト
地球環境の持続可能性を高めるには、食料・エネルギー・水の相互関係に注目すべきだ。水に関するさまざまな思い込みは科学的な説明で修正できるが、それでもなお水をめぐる議論は人間の感情に左右される。東京大学生産技術研究所教授・沖大幹氏が考える、これからの環境問題とリスクマネジメントに求められる思想とは何か。(2015年5月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「水ビジネスとグローバルリスクマネジメント」より、全5話中第4話目)
時間:15:28
収録日:2015/05/25
追加日:2016/05/26
≪全文≫

●模索が進むウォーター・フットプリントの推計手法


沖 時間の関係もあるので先に進みます。ウォーター・フットプリントの話をします。ウォーター・フットプリントの策定に、日本からのエキスパートとして私も参加して、だいたいどんなことが決まったかをお話しします。

 少しテクニカルな話です。ポイントとしてはウォーター・フットプリントというと、先ほどのバーチャル・ウォーターのところで示した、肉1キロに2万倍の水が必要である、米だったら3600倍の水が必要だったということをウォーター・フットプリントなのかと思われると思いますが、あれは量なのです。そういうライフサイクル・アセスメントという枠組みでは、それはインベントリと言われて、影響ではないのです。われわれが知りたいのは、水を使って何が悪いのか、どんな悪影響があるのだというのを、示した量に換算しなさいというのが一つです。これができればいい。でも、なかなか難しいです。私はまだ完璧なウォーター・フットプリントの推計手法はないと思っていますが、今いろいろ研究され提案されている段階です。

 もう一つは、水利用の量的かつ質的な変化を特定することです。どういう意味かというと、例えば、水を30立方メートル取って、30立方メートルを川に返したら、それはもう量的には変化させていないから、ウォーター・フットプリントがゼロかというと、その間に水が汚れます。そうしたら、やはり水を使ったことになるだろう。それはちゃんとウォーター・フットプリントとして評価しなさい、ということです。もっと言うと、温排水のように、温度が取った温度よりも7~8度高くなってしまっているのはまずいだろうということで、その温度の変化分も影響として、質的な変化としてウォーター・フットプリントに計上しなさい、というようになっています。これは、先ほどのCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)や、WBCSD(ワールド・コンソーシアム・オブ・サステイナブル・ディベロップメント)につながってくるわけです。


●ウォーター・フットプリントは質的影響を定量化する


沖 さらに、私はここが実は面白かったのですが、汚染物質の、大気や水への放出について、水の場合は先ほどの質的変化なのですが、例えば大気に酸性化物質を排出しても、それがどこかで酸性雨になって水を汚し、使える水資源の利用可能性を減らすのであれば、それはウォーター・フットプリントに数えろ、とヨーロッパは言うのですね。やはりヨーロッパのこういった環境問題、特に越境汚染問題というのは、酸性雨のところに始まっています。

 そこから邪推すると、温暖化の問題の前にオゾンホールの問題がありましたが、酸性雨に関しては、排出を減らして情報を共有してやれば止まると思ってやったのですね。長距離越境汚染に関する問題です。また、オゾンホールの問題も、フロンの排出を減らせばなんとかなると思われた。ですから、一部の人たちは、少なくとも温暖化の問題もCO2の排出を同じようにやれば解決すると思って、たぶん始めたのではないかという節があります。いずれにしろヨーロッパにとっては、汚染物資の大気の排出というのは、環境問題にとって非常に重要だというのが分かります。

 水を使う、貯水操作をする、また土地利用でも水の利用可能性が変わります。そういう行為によって水の利用可能性が変わり、生態系や資源に対してどんな悪影響があるかというのを定量化したのを、ウォーター・フットプリントと呼びましょう、というのが、ISO(国際標準化機構)での定義です。

 ただし、先ほども少し言いましたが、そのウォーター・フットプリントは、使った量そのものではなくて、影響量です。例えば、同じような製品があって、片方は水の豊かな北海道で春先の雪解けの水を使い、きちんときれいにしてから流している。でも、水が豊かな所は、あまり節水しようとは思わず、節水投資がされませんので、その製品1単位をつくるのに200リットル使っている。ところが、同じ製品を沖縄でつくったときには、水が足りません。しかも入梅前のダムの水です。水質もなかなかきれいにできない。水が足りないところでは、回収水の使用などの投資がされますので、製造に使用する量としては150リットルです。どちらの方が環境への影響が少ないだろうかというと、量だけ見れば製品Bなのですが、専門家で普通に議論すると製品Aなのです。では、それをどうやって適切に量として、この下にウォーター・フットプリント何リットルという風に表現できるかというところが、まだ少し難しいのです。いま皆で知恵を出し合っているところだということになります。


●食料・エネルギー・水の三位一体型思考


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