10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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水リスク管理は国ではなく私的設置の基準が席巻しつつある

水ビジネスの動向(3)水リスクマネジメントの現況

沖大幹
国際連合大学 上級副学長/東京大学生産技術研究所 教授
情報・テキスト
東京大学生産技術研究所教授・沖大幹氏が、注目される水ビジネスの最新動向を論じる。まずインフラ輸出の難しさだ。社会的価値が高いインフラの整備は、ビジネスとして見ると撤退しにくさや事業展開の面で、他の業種と異なる。また水リスクの推計手法やマネジメント基準も次々に生まれており、標準化が進みつつあるのが現状だ。(2015年5月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「水ビジネスとグローバルリスクマネジメント」より、全5話中第3話目)
時間:13:42
収録日:2015/05/25
追加日:2016/05/19
≪全文≫

●そもそも「インフラ」とは何か


沖 少し時間が足りないので飛ばしますが、インフラについてです。私は土木、インフラ工学が専門なのですが、「インフラ」と略すと実は意味がありません。「インフラ・レッド」というのは、赤外線のことですね。これは、周波数が低すぎて目に見えない。また、辞書引きますと「インフラ・サウンド」という言葉があります。これも周波数が低すぎて耳に聞こえない。では、「インフラストラクチャー」ですが、一般的に新聞で「インフラ」というと、インフラストラクチャー、社会基盤です。これは、下にありすぎて知覚できないものなのですね。それは、想定通り機能して当たり前ですし、何か問題があったときだけ非難されるのです。

 私の大学卒業は30年ぐらい前ですが、インフラそのものは見えませんから、当然花形ではなく、当時は電気や通信が花形でした。同級生に当時、「お前どこに行くの?」と聞いたら「ドコモという会社に行くよ」と言われ、「何それ?」と聞いたら、「携帯電話をやっている」と。「携帯電話って何?」というような時代でした。その後、ドコモは急成長を遂げましたが。

 携帯電話も、最初は皆さん、たぶん新しい携帯電話が出るとうれしくて買い替えたり、あるいはメールが通じたり、写真が撮れたりしたらうれしいですよね。だんだんそれが当たり前になって、今はメールを送ったよと言われて10秒以内に届かないと、「あれ?」と思いますでしょう。昔は、3日たっても届かないメールがあったのです。そこは、まさに電気通信もインフラになったということで、僕は個人的に思っていますけども。

 もう一つ大事なのが、インフラは撤退がなかなか難しいということです。鉄道を考えてもらうのが分かりやすいのですが、いま路線がある所を無くそうとすると、必ず地元自治体から反対が出ますね。極端なことを言えば、今まで特急が止まっていたのに、止まらなくしようというだけで、ものすごく反対が出ますね。インフラというのは、それだけで社会的な価値やポジションがあるので、上手くいかなかったから簡単に撤退というのが道義的には許されない。もちろん国際的には、海外に行って契約書の通りだからといってやめるのですが、日本の企業はあまりその辺が得意ではなく、ついいろいろサービスをしてしまいたくなるのです。


●水インフラの輸出で陥りやすい思考


沖 もう1点だけ、水インフラの海外輸出量で陥りやすい思考についてです。海外水インフラのオペーレーション・アンド・マネジメント(O&M)をやるというのが、今回の目標なわけですね。そうすると、当然自分の会社のポンプや自分の会社の膜を使うと思うわけですね。ところが、そうはいかないのです。別の例で言いますと、例えば今まで肉を卸していた会社が、居酒屋をやり、ハンバーガーチェーンをやるとします。そうすると、当然自分のところで作った肉を使ってもらえる、使うのが当たり前だと思いますね。しかし、そうではないのです。

 もうけるために一番適切な肉や野菜を使えばいいのであって、自社の製品を使えばいいわけではない。同じように、海外へ行ったときに、非常に高機能な日本製のポンプがここに適切なのか、それともすぐ壊れるかもしれないけども地元の安いポンプを入れ、それが壊れたら直した方がトータルではいいのかというのを考えなければいけない。ということがなかなか考えられない。

 自分の会社の製品が売れるだろうからと思ってO&Mやるというのが、最初に皆さん思うのですね。これは...
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