テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

地球上の海水の塩分をトラックに積むと一体どこまで並ぶ?

自律型海中ロボットは何を目指すか(1)知ってから語る

浦環
東京大学名誉教授
情報・テキスト
九州工業大学社会ロボット具現化センター長・浦環氏が語る「自律型海中ロボットは何を目指すか」。今回、浦氏がこのテーマを考えるにあたり問うたのは、まず前提となるわれわれの海に対する考え方だ。さて、科学する姿勢を問うために浦氏が用意した超難問とは?(全4話中第1話)
時間:17:44
収録日:2016/01/12
追加日:2016/06/27
≪全文≫

●自律型ロボットを語るための三項目


 それでは、今回は自律型海中ロボットについてのシリーズの第2回ということで、私がつくるロボットは一体海で何を目指しているか、ということをお話ししたいと思います。つまり、「ロボットが成し遂げるべき仕事とは何か」です。ロボットをつくったときに、「そのロボットがする仕事はこれだ」と言われるわけですが、その仕事の内容をロボットがいかに理解するか、ということが大事だということをお話ししたいと思います。

 まずこのロボットを語るとき、私は今、自律型ロボットを語っているわけですが、このときに、何を言わなくてはいけないか、語らなくてはならないかということは、この三つだと思います。その一番目が、ロボットが働く環境は何か。つまり、深海なのか、この研究所のプールの中なのか、この部屋の中なのか、ということですね。「その環境がどういうものなのか」ということです。それから2番目は、ロボットが成し遂げる作業は何か。ロボットに「これをすればお前は偉いんだよ」と言える、「これをすれば」とは一体何なのか、ということです。そして、3番目は、ロボットは他に代え難いか。つまり、「あんた、できないんだったら来なくていいよ」とか、「あんた、高いからいらないよ」と言われたらロボットは駄目ですね。ロボットではなく、僕がやるから、あいつがやってくれるから、ということになってしまいます。この三つのことに対してちゃんと答えられなければ、そのロボットは働かない、役に立たない。できたとしても、動くかもしれないけれども、「楽しそうね」ということで終わってしまうのです。全てのロボットを語るために必要なのはこの三つであると、私は思っているのです。


●自律型海中ロボットの仕事-海洋資源


 私のやっている自律型ロボットは、働く環境は海中です。それから、やっている作業はこれから申し上げます。「代え難い」という点は、これは簡単です。ROV(遠隔操縦機:Remotely Opereted Vehicle)に代え難いか、それから、有人潜水船に代え難いか、ということを言わなくてはいけません。

 それでは、環境については、前回のレクチャーでわりといろいろ申し上げましたので、この作業についてのターゲットを申し上げたいと思います。この自律型海中ロボットは、何か役に立つ仕事をしなくてはなりませんから、そのターゲットは一体何であろうか。それは、簡単に言えば、お金になるものです。お金になるものは何か。それは、海洋資源だと思います。

 海洋資源とは一体どういうものがあるかというと、四つに大きく分けられると思います。一つ目はエネルギーです。それから、二つ目は食料生物資源。水産と言ってもいいかもしれません。三つ目が鉱物資源。そして、四つ目として情報資源です。

 エネルギー資源とは、今、メタンハイドレートと言われているようなガスハイドレート。それから、バイオマス。潮流、海流発電。それから洋上風力も、係留なども関係して、資源です。これらのエネルギー資源は非常に注目されています。それから、食料資源とは、生物です。水産資源ですが、特にロボットが興味があるのは底生生物です。それともう一つは、この間、中国が攻めてきて問題になった、宝石サンゴ。それから、真珠。こういったものが海洋資源だと思います。そして、鉱物資源は四つ。熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、レアアース泥、マンガン団塊です。最後に、情報資源とはどういうことかというと、例えば海の中で、「中国の潜水艦がどこで動いていますよ」、といったようなこと。それから、海底ケーブルを這わせてアメリカと通信していますが、その通信ケーブルはどのようにできているのか、どうメンテナンスをするかということ。また、海底にいろいろ観測基地を置いて、地震観測をしたりしますが、それらは、われわれに情報をもたらしてくれる。これを情報資源と言っています。


●ロボットづくりに重要なのはまず「知る」こと


 われわれは、それぞれに役に立つようなロボットをつくっていきたいと思っています。そこで、この四つを見回していくわけなのですが、われわれが、前回のお話と同じように、「このことを一体どのくらいいろいろ知っているだろうか」ということを考えてみる必要があるかと思います。

 まず、鉱物資源。これは非常に重要な資源で、われわれがいま行っているSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)のプログラムやいくつかのプログラムは、鉱物資源を対象としているのですが、その鉱物資源に関して少し申し上げておきましょう。


●実例-インド洋のマンガン団塊


 これは、2010年に白鳳丸という船でインド洋に出かけていった時の写真です。インド洋は波が荒いので、ドーンと舳先から波が上が...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。