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海を語るならまず陸を知れ! 浦環、ザンビアへ飛ぶ。

自律型海中ロボットは何を目指すか(2)海底鉱物の可能性

浦環
東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役
情報・テキスト
自律型海中ロボットの研究に携わる九州工業大学社会ロボット具現化センター長・浦環氏の信条は、「海中ロボットを語るなら海底鉱物資源を知ること」「海底鉱物資源を語るなら陸の資源を知ること」。ザンビアで見聞してきた陸の銅鉱山開発の現状から、なかなか進まない海底鉱物資源開発の実態と背景について徹底解説。(全4話中第2話)
時間:11:12
収録日:2016/01/12
追加日:2016/07/04
≪全文≫

●目指す鉱物資源の敵はやはり鉱物資源


 前回お話ししたような、海の状況や海に関するわれわれの間違った直感がたくさんある中で、われわれが目指すところは鉱物資源です。鉱物資源は、前回四つあると言いましたが、海底熱水鉱床。これは、銅、鉛、亜鉛、金、銀です。それから、マンガン団塊。マンガン団塊は、マンガン、それから銅、ニッケル、コバルトです。そして、コバルトリッチクラスト。これは、マンガン、銅、ニッケル、コバルト、ここまではマンガン団塊と似ているのですが、コバルトリッチクラストには白金が含まれます。白金とは、大気汚染などの触媒として非常に重要なものです。

 こういった鉱物資源をわれわれは目指しているのですが、これに対して敵がいます。敵とは何か。陸上の鉱物資源です。陸上の鉱物資源を知らないで海底の鉱物資源を語ることはできませんし、海底の鉱物資源を知らないで海中ロボットを語ることはできないわけです。そうすると、元に戻って陸上の鉱物資源を考えてみましょう。


●どんどん進む陸の銅鉱山開発


 今、海底の鉱物資源で期待されているのは、銅です。銅は非常に重要です。なぜかというと、銅は電線です。電気を運ぶ、電力を運ぶ線で、文明社会にとってなくてはならないものです。なぜならば、エネルギーは電気で送られますから。どんどん発展していくと、電線を引いてエネルギーを各家庭、各工場に運ぶ必要があります。ですから、中国やインドが経済が発展していくと、銅の需要はどんどん増える。そうすると、銅を開発しなくてはなりません。それで、世界の陸上の銅鉱山はどんどん開発されています。日本にとっても銅は重要なので、あちこちを開発しているわけです。

 ここでお見せしているのは、アフリカのカッパーベルト地帯のザンビアにあるンチャンガという陸の銅鉱山です。日本の銅鉱山は、穴を掘ってトンネルを掘っていくのですが、ここはオープンピット(露天掘り)です。オープンピットを掘っているのを見たところですが、色が変わっているところが見えますね。ここは、銅がたくさん含まれているところです。どれだけ広いかは分からないですが、これは底が見えています。ここに映っているのが私です。私は2001年、今から15年前にここへ出かけていきました。

 私が開発しているのは海中ロボットなのに、なぜこんな山の中に行っているのかというと、これを知らずして海中ロボットを語ってはいけないということなのですね。なぜならば、この10MTVの講義の別のグループに東京大学生産技術研究所の岡部徹先生がいらっしゃいますが、彼らはこれ(陸上鉱山)をやっていて、私たちは海をやっているのですが、先ほども言ったように陸は敵です。敵なので、敵を知らずして自らを語ってはいけません。そこで、わざわざ出かけていったわけです。

 このスライドは、今のGoogle Earthでンチャンガを見たところです。大きさは10キロですが、これが皆、オープンピットになっていて、人が住んでいて、こういうところで製練をして銅を出しています。これの広さが一体どんなものかというと、これと同じ縮尺で東京都を出します。見てください。山手線の内側ぐらいのところが、全部銅鉱山のためにできていて、その3分の1ぐらいが銅のピットです。こういうところで銅は掘られているわけです。今よりも少し規模が小さいのですが、これはチリのロスペランブレスという鉱山で、アンデスの山の中にあって、5キロぐらいのところにオープンピットで掘っています。これは日本の商社などがお金を入れて、何百億、何千億という開発プロジェクトをやっています。


●海底鉱物資源開発が進まない理由


 陸上ではこのような大規模開発が行われているのに、これに対して、どうして海底鉱物資源開発は今、行われていないのでしょうか。熱水鉱床があるのに、それは今のところは開発されていません。その理由と思われるものが、ここに書いてあります。探索活動にお金がかかる。つまり、「海中ロボットが行かなければいけないけれど、浦の海中ロボットは1匹いくら?」「1億円」。「ええっ? それなら自動車で陸上で行った方がずっと安い」と、こうなってしまうわけです。そうすると、正確な埋蔵量が推定できない。それから、海はそこに船を持っていかなければならない。いろいろなことがあって、初期投資もきっと大きいだろう。よく分からないわけです。それから、深海底から鉱物を持ち上げなくてはいけません。オープンピットでは、トラックが行ってブルドーザーが行けば、そこにドーンと積み込めます。それから、ここではもちろん大気汚染も起こったり、廃液が出たりと、いろいろ問題がありますが、海を掘れば海が汚染されます。これも非常に、どうすればいいのか分からない。いろいろなものがドーっと流...
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