●自律型ロボットといっても、泳ぐのと歩くのでは違う
今日は第4回です。これまでは海についての一般的な話をしてきましたが、今回はロボットの話です。それも特に、私たちがつくったロボットを何回かにわたってご紹介したいと思います。
最初に復習ですが、私たちがつくっているロボットは「自律型海中ロボット」といわれているもので、全自動です。遠隔操縦ロボットではありません。自律型ロボットには、例えば陸上ではホンダの「ASIMO」があります。これも実際にはいろいろ通信しているのですが、全自動で動いているように見えます。この映像はロボフェスタ神奈川2001で、ASIMOが初めて階段をひとりでスタスタと下りるところです。実はこのロボフェスタに、私たちも「うちのロボット」を出したのですが、すぐ隣ではASIMOがこのようなことをしていたのです。なかなか画期的でした。当時のスタッフたちが苦労して実現したらしいのですが、うまくいっていました。
うちのロボットは、こういうことはできません。陸上ロボットがいいのは、かわいらしいところです。全自動でジャンケンをしたりすると、皆が見てくれて「いいね」と言ってくれるわけです。この写真はASIMOのスケルトン模型で、内部がどのようになっているかが見える。それをきれいなお姉さんが説明してくれるというのは素晴らしいと思います。ですが、うちのロボットは水中で動くので、なかなかそうはいかない。
しかし一方で、ASIMOは海に潜れません。このとき、ASIMOの開発メンバーの方々は僕らの水中ロボットを知っていて、われわれのブースに見に来て「これが水中ロボットか」と言っていました。そこで、「それじゃあ、ASIMOと水泳の競争をしましょう」と言ったら、「泳げません」と返されました。自律型ロボットといっても、海の中で泳ぐことと陸で歩くことはいろいろと違うのです。その違いは重要です。
●パイプの表面写真を撮るのがTri-Dog1号の仕事
その2001年当時、私たちは「Tri-Dog(トライドッグ)1号」というロボットをつくっていました。これは、その数年前に行われた進水式です。Tri-Dog1号が初めて水の中に潜ったのです。ロボフェスタ神奈川2001では、このロボットを泳がせました。ASIMOはいかにもロボットという感じがしますが、Tri-Dog1号は、普通の人が抱いているロボットのイメージとはかなり違います。しかも、普段は海中ですから、動いているところをなかなか見てもらえません。これはプールで泳いでいるところを撮ったものです。ちなみに、後ほど詳しく説明しますが、全自動ロボットというのは、鉄腕アトムのように命令しなくても勝手に動いてくれるロボットのことです。
この映像は、同じくTri-Dog1号がJAMSTEC(海洋研究開発機構)のプールで泳いでいるところです。真ん中に直径1メートルのパイプが立ててあって、そのパイプの周りをぐるぐる回っています。ロボットはこのパイプと1メートルの距離を保ち、パイプと正対するように動いています。このようにパイプの表面写真を撮ってくるのが、Tri-Dog1号の仕事です。
これは10倍速で撮影しているのでスピーディーに動いていますが、実際はノソノソしています。一つ目のパイプを観察し終わったら、他にパイプがないか、ぐるりと回ってみると、後ろにあったので、またその周りを観察していきます。このロボットは、全自動でこのように動きます。実際には、例えば熱水チムニーや、羽田空港D滑走路を支えるパイプがたくさん立っているのをご存じかと思いますが、そうしたパイプの表面を調査するためにプールでテストをしているのです。実際にこの能力を高めた結果、Tri-Dog1号はさまざまな場所での観測を成功させています。
●ロボットたちは危険なところで活躍しなくてはならない
次は2007年の映像です。深さ5メートルのプールの中にテントが置いてあったり、坂がつくってあったりします。そこで障害物にぶつからないよう、一定の距離・高さを保って、海底を観察する練習です。こうした練習を踏まえて、実際の海に出ていくのです。そして順調にいけば、このロボットが海底の写真を撮ってくるわけです。
これは何をしているかというと、ハードウェアというよりソフトウェアの調整です。センサーから来たデータを使って、目的の行動を果たすためのプログラムのデバッグやソフトの高度化をしているのです。こうしたソフトウェアを研究することで、遠隔操縦機や有人潜水船とは違う「ひとりで動くもの」をつくり続けてきたのです。
私は今までこの研究を30年ほど続けてきて、20くらいのロボットをつくってきました。見ていただいて分かる通り、さまざまな形の...