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人間が生きる上で大事な営みを多摩六都科学館で体験しよう

育てよう! 科学の心と視点

髙柳雄一
多摩六都科学館 館長
情報・テキスト
多摩六都科学館
「なぜ10は3で割れないの?」「満月も半月も三日月も同じ月なのに、なぜ違って見えるの?」――そう考えるところから、科学の心がスタートする。私たちが住む不思議だらけのこの世界と、そこで生きていくための人間の大事な知恵ともいうべき、子どもたちに伝えたい科学の視点について、多摩六都科学館館長・髙柳雄一氏が分かりやすく解説する。
時間:08:00
収録日:2016/07/27
追加日:2016/08/28
≪全文≫
●「科学とは一体何なのだろう?」

 こんにちは。私が今いる場所がどこか、想像できますか。多摩六都科学館の中のプラネタリウムに座っています。

 館長をやっております髙柳雄一と申します。いま私は「科学館」という言葉を使いましたが、皆さんは科学館にいらしたことはありますか。年配の方は子どもの頃に行った経験がおありでしょうし、小さいお子さんも夏休みなどは科学館に行って遊ばれたことがあると思います。

 科学館にはさまざまな施設がありますが、いくつかの特徴があります。私が務めている多摩六都科学館には五つの部屋があって、その部屋一つひとつが、ある意味で世界への入口になっています。そこで出会ういろいろな世界を楽しんでもらったり、おじいちゃんやおばあちゃんと一緒に体験してもらったりして、「科学館はどんな世界なんだろう?」ひいては「科学とは一体何なのだろう?」ということを考えていただければいいなと思い、館長をずっと続けています。


●「割り切る」工夫~生きる知恵から生まれた知恵

 「科学とは何だろう?」――皆さんはどのようにお考えですか。昔、私がラジオで「夏休み子ども科学電話相談」の回答者をやっていた時に、あるお子さんから「どうして10は3で割れないのですか?」という質問が来たことがあります。その時、私はどのように答えようかずいぶん迷いましたが、スタジオの中に時計があったので、そのお子さんに「1時間は3で割れるよね。20分を三つ集めると1時間になるよね」という話をしました。

 私はその時に「割り切り方」という言葉を使ったのですが、時間は物差しでは計れません。時計で計ります。時計の針の動きを見ると、いろいろな動き方を利用しながら時間の流れを計っています。このように、私たちが住む世界で生きていく上で必要なさまざまなことを理解するにあたり、割り切り方は非常に大事なのです。

 例えば、「月日」という言葉があります。1カ月は31日、30日のこともあります。それから1日は24時間ですが、実は、1年は365日ピッタリではなく、プラス4分の1日ほどあるのです。ですから、4年ごとに「うるう年」を設けて補正をしています。さらにもっと細かい補正まで必要になるくらい、世の中は細かく見ると、きちんと割り切れない世界がたくさんあります。そうした中で、人間は生きていくためにさまざまなことをしなければなりません。その時に、「このような割り切り方をすれば役に立つ」「どのように役立つのか」ということを見つけ出す一つの営みこそが、科学なのです。そう考えると、科学というものは実は人間が生きていくために、非常に力を与えてくれるものだという見方もすることができます。


●朝日も夕日も同じ太陽~視点で変わる世界

 それから、ここはプラネタリウムの中なのでお話ししてみたいのですが、皆さんは夕日を眺めるのと朝日を眺めるのと、どちらがお好きでしょうか。「星の王子様」という小説では、王子様は小さい星に住んでいますので、椅子をずらして移動しながらたくさん夕日を眺めるシーンが出てきますが、皆さんが眺めている夕日の太陽は、ある場所から見れば実は朝日なのです。そんなことを考えたことはありますか。つまり、私たちが自然界で何かを見るときに、いろいろな視点があるということです。例えば、お月様だって、満月も三日月も半月も同じお月様です。「なぜあんなふうに見えるのだろう?」と考えるところから、科学の心がスタートするのです。

 このように「なぜだろう?」と考えることを、よく「好奇心」と言いますが、人間は好奇心を持つことによって、いろいろなことを見つけ出してきました。その知識が生きていく上で役立つのです。


●鏡の中の自然~多様な形が生み出す世界の眺め方

 好奇心といえば、皆さんはよく鏡を見て身繕いをしますよね。実は鏡の中に映っている自分の顔は左右が逆になっています。学校でも習うことですが、イソップのお話は聞いたことがありますか。橋の上から川の水面に映っている犬を見て、自分の仲間がそこにいる、しかも骨をくわえている。それを見た犬が骨をくわえていたのでしょうね。それが水面に映ったのです。しかし、左右が逆なので、その犬は自分だと気付きませんでした。もし左右が逆になることを知っていたら、自分ではないと気付いたかもしれません。

 細かく見れば、鏡の中の世界と外の世界は、似たところもあれば違うところもあります。そして、私たちが鏡に映った顔を見たり、お化粧をしたりするのは、その似たところを利用しているのです。他方、科学者は「どこが違うのか」ということを突き詰めていき、最先端の物理学の世界では、鏡の中と外の対称性を理論化し、素晴らしい発見をしてノーベル賞をもらった人まで出ています。


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