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ロボットにとっては頭脳や身体よりも「五感」が大切だ

自律型海中ロボットの仕事(3)ロボット学のサイクル

浦環
東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役
概要・テキスト
「ロボットにとっては、頭脳(コンピューター)や運動器官(ハードウェア)よりも、五感(センサー)が大切だ」と、九州工業大学社会ロボット具現化センター長・特別教授の浦環氏は語る。センサーが大事だというのは、一体どういうことか。浦氏が「ロボット学」のキモを短時間で教えてくれる。(全4話中第3話)
時間:14:20
収録日:2016/05/17
追加日:2016/08/29
≪全文≫

●自分たちでフィードバックサイクルを回すのが「ロボット学」


 私たちがロボットをつくるときに重要なのは、ロボットがきちんと仕事をすることをユーザーに見せることです。つまり「できました。使ってください」ではなくて、私たち自身がロボットを運転して、海底の観測、資源の調査、情報の収集をすることで、ロボットがしなければならない仕事、ロボットの環境に対する知識を増やして、次のロボットを開発していくのです。つまり、「フィードバック」です。このフィードバックの循環がないと、良いロボットはできません。自動車を開発するときも、「社長が言うような自動車をつくりました」ではなくて、その自動車を自分で運転して、どこが良いか、どこが悪いかを理解することが大切でしょう。テストではなく、それを実際に行うことで、より自動車が良くなっていくのです。その点では、ロボットも自動車も同じです。

 特に観測用のロボットの多くは、エンジニアたちが現場で使うチャンスはほとんどありません。基本的にはユーザーが使うものです。われわれはそれではいけないと考え、積極的に自分たちがユーザーとして観測を行い、観測データをサイエンティストの人たちに示すようにしてきました。これはとても大事なことです。このサイクルを回すことを「ロボット学」と呼んでいるのです。


●ロボット研究では「センサー」と「ロジ」が大事


 繰り返しになりますが、自律型海中ロボットの具体的な定義は、自身が取ったセンサーデータを解析することで、周囲の環境と自分自身の状態を理解して、海中で自ら行動を決められることです。自律型海中ロボットの基本は、「センサーデータ」なのです。

 これは「ツナサンド(Tuna-Sand)」というロボットですが、これが行動を決める際は、搭載されているセンサーが情報を獲得して、その情報をコンピューターが処理し、タスク(仕事のパーツ)を次々に切り替えていきます。この「タスクの切り替え」が、最終的に行動を決めるのです。つまり、人間に例えると、センサーが五感で、コンピューターは頭脳、仕事をするのは運動器官です。この三つがそろわないと、ロボットはきちんと動きません。特に重要なのはセンサーです。センサーが何をセンシングして、コンピューターにどのようなデータを教えてくれるのかが、行動の質を左右します。ついついロボットの研究者はコ...
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