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毛沢東、曽国藩、劉少奇―多くの中国の英雄が湖南省出身

湖南省訪問記~共産党の英雄たちを輩出した地(1)長沙の町と湖南大学を訪ねて

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
千葉商科大学学長・島田晴雄氏が率いる「島田村塾」は、湖南省を訪問した。そこで島田氏は「中国の大矛盾」「50年前のシカゴ」「親切な中国」を見たという。いったい何を見たのだろうか。(2016年6月28日開催島田塾第136回勉強会島田晴雄会長講演「ラオス、湖南省訪問の報告」より、全2話中第1話)
時間:16:29
収録日:2016/06/28
追加日:2016/09/22
カテゴリー:
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≪全文≫

●本当の中国、本当の日本を知り合うべきではないか


 湖南省訪問記をお送りしたいと思います。島田村塾に3度ほどいらっしゃった段躍中先生のご紹介で、湖南省に行こうということになったのです。段先生はとても不思議な中国人で、さまざまな側面がありますが、日中交流、日中の正しい理解のために、仁王立ちで頑張っている方です。

 今、中国では日本人のイメージが政治的に相当歪曲され、バイアスがかかっています。以前、江沢民さんは徹底的に「日本は悪だ」と言い続けました。江沢民さんは上海の出身で、鄧小平さんから「中央へ出てきて主席をやりなさい」と言われた人です。彼は上海交通大学を出ていたので上海では相当力があったのですが、中央には人脈がありません。そうしたときに国民を統合するには、なぜか日本を叩くのが一番良いのです。それで日本を叩けということになって、教科書も出版も放送もテレビも、例えば残酷な日本兵が出てきて、中国人民を切り裂くようなシーンを毎日のように見せていたのです。中国政府は、今でもそうしたことをしています。多くの中国人は、あれは政府のお仕着せだから実際とは違うと思っているのだけれど、朝から晩まで見せられると、やはり何となく日本人のイメージは悪くなります。

 ところが、段先生は、それはつくられたイメージなのだ、そのようなものに惑わされるのは不幸なことだと訴え続けています。「本当の中国、本当の日本をお互いに知り合うべきではないか」と。段先生は日本に来て「日本僑報社」という会社をつくり、そうしたメッセージの本をこれまでに300冊ほど出版してきました。まさに(日中交流のため)仁王立ちで頑張っているのです。


●毛沢東、曽国藩、黄興など、多くの英雄が湖南省出身


 段先生のご出身は、湖南省の長沙という大都市の隣にある婁底市(ろうていし)です。そこから縁があって日本に来られたのです。われわれは北京や上海にはよく行きますが、千何百キロも離れた内陸の長沙まで行くことはなかなかありません。しかし、この湖南省は、中国にあまたの省がある中でも特別な省です。何しろプライドが非常に高いのです。

 なぜかというと、まず現代中国をつくった毛沢東が湖南省の出身だからです。彼は湖南省の英雄、神様なのです。ところが彼一人だけでありません。毛沢東が中国の指導者の中で最も尊敬している人に曽国藩がいます。毛沢東さんは、「この人以外にいない」ということまで言っているそうです。曽国藩の生家は、段躍中先生の出身地・婁底市にあり、われわれもそこを訪ねました。彼は大変な思想家であると同時に戦略家であり、武闘家でもあります。清朝末期にガバナンスが弱くなって、諸外国から侵略された時期があり、この状況を放置しておいていいのかということで、国内に独立国をつくろうとする大きな運動が起こりました。「太平天国の乱」です。相当な勢力を得て、一時期、清王朝が下手をすると負けるのではないかというくらいの情勢になりました。そこで、いろいろと手を尽くして平定しようとしたのですが、できませんでした。その時に曽国藩さんが兵を率いて、太平天国の乱を治めたのです。この大変な英雄も湖南省の出身なのです。

 さらに、皆さんがよく知っている劉少奇さんという戦後の中国を発展させた偉大な主席も湖南省の方ですし、党主席になった胡耀邦さん、上海市長から有名な首相になった朱鎔基さんもそうなのです。皆、湖南省の出身なのです。

 また、清朝を倒した辛亥革命をリードした孫文(スン・ウェン)は、中国では孫中山といわれ、中国でも台湾でも尊敬されている珍しい人ですが、お人好しで脇が甘く、15回ほど失敗しました。その彼を脇で支えたのが、西郷隆盛と並び称せられる豪胆な英雄、黄興さんで、この方は湖南省・長沙の出身です。大変な武闘家だったそうです。この2人のおかげで、実は長沙市は鹿児島市と姉妹都市になっています。石川好先生が黄興についての立派な大論文を書いて、中国人もそれを勉強したということです。

 最後に、中華民国議会がつくられた時に議長を務めた後、袁世凱に殺された宋教仁さんも湖南省出身。これだけの英雄が全部湖南省の人なのです。このことを知れば、湖南省の人たちの誇りが高いというのは、「No wonder why?」です。そこで、ぜひそこへ行ってみましょうということになったのです。


●断続的に立ち並ぶビル群に中国の大矛盾を見た


 長沙は約700万人の大都市で、湖南省全体では人口約7000万人です。中国南部、洞庭湖という大きな湖の少し南に位置します。湖南省はまさに中国のお腹のようなところにある重要な省ですが、情けないことに、日本からは航空便が週に2本しか出ていません。

 われわれはスケジューリングの関係で、航空便を使わないで、上海か...
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