●ファミリー企業には2種類ある
世界的に見て、ファミリービジネスには強い関心が持たれています。では日本はどうなのかというと、日本の場合も、実はパフォーマンスが良いのです。あまり外へ情報が出ないので、皆さんご存じないかもしれませんが、世界的に見ても日本のファミリー企業はパフォーマンスが良く、ヨーロッパのファミリー企業もパフォーマンスが高いのです。
世界のファミリー企業の傾向で面白いのは、ファミリー企業には2種類あることです。創業者がオーナーであるファミリー企業と、その創業者の家族や子孫がやっているファミリー企業です。世界的に見て創業者企業の方が、パフォーマンスが高いのです。これはある意味当たり前の話で、要するに創業者企業とは、ベンチャー企業のことです。ベンチャー企業のトップのパフォーマンスが良いのは世界的に見られる傾向で、これはあまり驚くに当たりません。というのも、ベンチャーの会社だと、うまくいかなかった場合はつぶれてしまうからです。残った会社はうまくいった会社で、こういうところがすごく良いパフォーマンスを示すのはよく知られているのです。
それはもちろん頑張っているからですし、その能力があるからかもしれません。しかしその子どもが受け継いでいくにしたがって、パフォーマンスはだんだん下がります。子どもが受け継いだファミリー企業を、非ファミリー企業、要するに他の普通の会社と比べると、パフォーマンスが下がってしまうという研究結果もあります。
●何代にもわたってパフォーマンスが良い日本のファミリー企業
ところが、日本はそうではないのです。日本は、初代のパフォーマンスが良いのはもちろんなのですが、子ども、あるいは孫が受け継いでも、普通の会社よりパフォーマンスが良いという実証研究が出ています。これがある意味で、日本の大きな特徴なのです。「代々受け継いでいるから駄目だ」とか「その子どもが継いだら駄目だ」とか「孫が継いだら駄目だ」というのがよく聞かれる話だと思いますが、実は日本のファミリー企業の場合はそういうことはなく、創業者の子孫が受け継いでもパフォーマンスがすごく良いのです。これは海外に比べると、特徴的に異なる傾向で、なぜなのかということが、世界的にも大きな話題になっています。
これは少し古いペーパーですが、イギリスの『フィナンシャル・タイムズ』でも、この論文に関するレポートが記事になっています。世界的に見て、日本のファミリー企業は創業者でなくてもパフォーマンスがとても高い。日本の大きな特徴として、子孫が経営している場合でもパフォーマンスが高いことが、世界的でよく知られている話です。これは少し真面目な話になりますが、私たちがここ数年ずっと、日本のファミリー企業がなぜパフォーマンスが良いのかを学術的に実証研究したり、データを見て調べたり、理論的に研究したりしています。
日本ではあまり知られていないので、知っていただきたいのはファミリー企業全体に関して、実は世界のかなりのファミリー企業が世界の経済を引っ張っているということです。しかも日本は、家族経営でも、創業者の孫など何代にもわたって、良いパフォーマンスを示しているところが結構あります。なぜなのかというと、少し面白い話があります。
●養子制度が原因?
皆さんがどのように感じるか、ぜひ意見を聞かせてほしいのですが、彼らの説明は、日本のファミリー企業のパフォーマンスが良いのは、養子制度があるからだということです。養子制度があるため、実子ではなく、実は婿養子が後を継いでいる。婿が継ぐ場合、婿に良い人を連れてこられます。能力のある人を婿に連れてくるから、パフォーマンスが上がる。もう少し言うと、本当に婿が来なくてもいい。婿が実際に来なくても、婿が来たらその人に家業を取られてしまうのではないかと思い、実子が頑張る。こういった仕組みで、日本のファミリー企業は子どもや孫の代のパフォーマンスが良いという説明をしたのが、この論文です。
われわれの研究は、この論文の批判から入っています。この説明は、話としては面白いのです。なぜ日本だけ特別なのかを考えた場合、養子縁組で成年養子が来るというのは、世界で見ても割と珍しいパターンです。日本に珍しい制度があるということと、日本だけ孫子の代まで大変パフォーマンスが良いということは確かに合致します。そのため、話としてはよくつくられています。
しかし本当にそうだろうか。婿に取られるから(実子が)頑張るとか、そういう話ではないだろうというのが、われわれが直感的に抱いていることです。私たちの研究は、この論文を否定しようというところからスタートさせた部分があります。
●確たるオーナーシップを持っていることが、ファミリー企業の強み
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