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日本の「ファミリービジネス」は世界的に見ても優秀?

ファミリービジネスとAI(2)ハイパフォーマンスの理由

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授
概要・テキスト
世界の優良企業の3割以上を占め、高いパフォーマンスを示しているファミリー企業だが、日本の場合、ある点で他国のファミリー企業とは異なる性格を持つ。東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏が、知られざる日本のファミリー企業の特徴を解説する。(2016年7月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「ファミリービジネスと産業構造の変化」より、全8話中第2話)
時間:12:04
収録日:2016/07/25
追加日:2016/09/30
≪全文≫

●ファミリー企業には2種類ある


 世界的に見て、ファミリービジネスには強い関心が持たれています。では日本はどうなのかというと、日本の場合も、実はパフォーマンスが良いのです。あまり外へ情報が出ないので、皆さんご存じないかもしれませんが、世界的に見ても日本のファミリー企業はパフォーマンスが良く、ヨーロッパのファミリー企業もパフォーマンスが高いのです。

 世界のファミリー企業の傾向で面白いのは、ファミリー企業には2種類あることです。創業者がオーナーであるファミリー企業と、その創業者の家族や子孫がやっているファミリー企業です。世界的に見て創業者企業の方が、パフォーマンスが高いのです。これはある意味当たり前の話で、要するに創業者企業とは、ベンチャー企業のことです。ベンチャー企業のトップのパフォーマンスが良いのは世界的に見られる傾向で、これはあまり驚くに当たりません。というのも、ベンチャーの会社だと、うまくいかなかった場合はつぶれてしまうからです。残った会社はうまくいった会社で、こういうところがすごく良いパフォーマンスを示すのはよく知られているのです。

 それはもちろん頑張っているからですし、その能力があるからかもしれません。しかしその子どもが受け継いでいくにしたがって、パフォーマンスはだんだん下がります。子どもが受け継いだファミリー企業を、非ファミリー企業、要するに他の普通の会社と比べると、パフォーマンスが下がってしまうという研究結果もあります。


●何代にもわたってパフォーマンスが良い日本のファミリー企業


 ところが、日本はそうではないのです。日本は、初代のパフォーマンスが良いのはもちろんなのですが、子ども、あるいは孫が受け継いでも、普通の会社よりパフォーマンスが良いという実証研究が出ています。これがある意味で、日本の大きな特徴なのです。「代々受け継いでいるから駄目だ」とか「その子どもが継いだら駄目だ」とか「孫が継いだら駄目だ」というのがよく聞かれる話だと思いますが、実は日本のファミリー企業の場合はそういうことはなく、創業者の子孫が受け継いでもパフォーマンスがすごく良いのです。これは海外に比べると、特徴的に異なる傾向で、なぜなのかということが、世界的にも大きな話題になっています。

 これは少し古いペーパーですが、イギリスの『フィナンシャル・タイムズ』で...
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