10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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最大の変更は金融政策目標が「量から金利へ」移行したこと

日本銀行の新しい政策枠組み(1)二つの変更ポイント

植田和男
東京大学大学院経済学研究科教授
情報・テキスト
2016年9月21日、日銀金融政策決定会合を経て金融政策のフレームワーク変更が発表された。東京大学大学院経済学研究科教授・植田和男氏は、これを「追加緩和ではないが、考え方の大きな変更」と呼んでいる。ここに至る背景や枠組み変更がもたらすもの、今後の金融政策について、植田氏に解説していただく。(全2話中第1話)
時間:11:29
収録日:2016/09/27
追加日:2016/10/10
2016年9月21日、日銀金融政策決定会合を経て金融政策のフレームワーク変更が発表された。東京大学大学院経済学研究科教授・植田和男氏は、これを「追加緩和ではないが、考え方の大きな変更」と呼んでいる。ここに至る背景や枠組み変更がもたらすもの、今後の金融政策について、植田氏に解説していただく。(全2話中第1話)
時間:11:29
収録日:2016/09/27
追加日:2016/10/10
≪全文≫

●操作目標を量から金利へ、コミットメントは強まる方向


 今日は、日本銀行が先週(2016年9月21日)発表した興味深い措置について解説していきます。

 資料のサブタイトルにも「追加緩和ではないが、考え方の大きな変更」としたように、今回の措置は、追加緩和とは解釈しにくいものの、非常に大幅な考え方の変更だと言われています。

 表面上の変更ポイントは、これまでの金融政策目標が量を目標にした運営だったのを大幅に変え、金利を目標としています。この場合の目標は、われわれの言葉では「操作目標」と言います。最終目標の「インフレ目標」とは違い、当面金融政策が働き掛ける目標という意味で使います。これまでは、ベースマネー増加や国債買い入れ額が操作目標でした。今回の操作目標は、金利は金利でも、短期金利と長期金利の両方を、単純にいえばコントロールしたい。そのような政策に移動したということです。

 短期金利は厳密には日銀当座預金のごく一部ですが、とりあえずこれまで通りのマイナス0.1パーセントに据え置きます。そして、新しい点として、10年国債の利回りを約0パーセントに維持するように、いろいろなオペレーションを行う、あるいはオペ上の工夫を行うと発表しています。

 ここでははっきりとは言っていませんが、金利をコントロールする動きに伴って、実質的に量の目標にはあまり重きが置かれなくなるということかと思われます。おそらく当面は、無理に量を減らすことはしないものの、何らかの理由で量の増分が減るということが起こっても、日銀はあまり気にしないということだと思います。

 今回のもう一つのポイントは、金融政策のコミットメントを若干強めたことです。これまでは「インフレ率が2パーセントになるまで」という表現だったところを、「安定的に2パーセントを超えるまで」金融緩和を続けるとし、具体的な内容として「マネタリーベースが増えていく状態を続ける」と約束しています。これまでの約束では、マネタリーベースが年間80兆円で拡大すると言っていましたが、今度は単に増えていくということだけを約束しています。


●金利とマネーの量が描く相関関係を整理する


 では、以前「マイナス金利」をご説明した時に用いたのと同じ図で、全体の動きをもう一度図式的に整理しておきましょう。

 タテ軸には金融政策でいう「金利」の次元をとり、横に「量」の次元をとります。日本の場合、「通常の緩和」と見なされてきたのは、1990年代の半ばぐらいまで金利(特に短期)を下げていくことでした。しかし、1995年ぐらいにほぼ0パーセントに近づいたため、その後いろいろ考えられました。2000年代以降は、量を拡大する方向で金融緩和政策をやったりやめたりして、とりあえず直近までは中央金融の名の下で、進められてきたわけです。

 しかし、今から申し上げる理由で、量の拡大にも限界があるのではないかということが次第に明らかになってきました。そこで、今年の1月には、金利をマイナスにする措置を行えば、多少の量的拡大と相まって、赤線で表したマイナス金利の下限に近づける方向に行けるのではないかという局面に入りました。

 この方法にもいろいろな問題があり、なかなか素直に移行できない中で、今回の見直しが発表されたわけです。


●「国債買い入れ」を中心に、量的緩和の限界を見直す


 「量の限界」は、よく言われていることですが、もう一度確認しておきましょう。特に日銀が意識していたのは、今後の国債買...
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