10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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人工知能の普及で格差が広がる!労働者が取るべき対策は?

ファミリービジネスとAI(5)AI時代に求められる能力

柳川範之
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授
情報・テキスト
人工知能が発達すると、人間の仕事は奪われるのか。東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏は、そんなことはないという。なぜなら、人間には人工知能では代替できない能力があるからだ。人工知能が発展していく時代、経営のカギとなるのは、人間の有利性をいかに伸ばせるかにあると柳川氏は強調する。(2016年7月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「ファミリービジネスと産業構造の変化」より、全8話中第5話)
時間:09:28
収録日:2016/07/25
追加日:2016/10/21
人工知能が発達すると、人間の仕事は奪われるのか。東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の柳川範之氏は、そんなことはないという。なぜなら、人間には人工知能では代替できない能力があるからだ。人工知能が発展していく時代、経営のカギとなるのは、人間の有利性をいかに伸ばせるかにあると柳川氏は強調する。(2016年7月25日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー講演「ファミリービジネスと産業構造の変化」より、全8話中第5話)
時間:09:28
収録日:2016/07/25
追加日:2016/10/21
≪全文≫

●AIが発達すると仕事がなくなる?


 AIが発達すると、いろいろな仕事や半分くらいの職業がなくなるといった議論が盛んに行われています。このあたりの話は私の専門分野に近いのですが、結論からいえば仕事はなくなりません。ほとんどの仕事は、完全にはなくならず、現実に起こるのは、仕事や職業の中で、コンピュータに代替されてしまう業務と、代替されないで人間がやる業務とに分かれるということなのです。

 例えば、弁護士という仕事があります。弁護士という仕事がなくなる、あるいはなくならないという話がされますが、弁護士という職業自体はなくなりません。ただ、今まで弁護士がやってきた仕事のかなりの部分は、コンピュータがやってくれるようになります。人間としての弁護士がやる仕事は、その中の一部で済むようになります。そのため、人の数があまり要らなくなるのは事実ですが、ほとんどの産業で起こるのは、その中で人間のやる業務が分かれていくという話です。まるきり全部なくなるわけではなく、一部の人が結構な仕事をやっていくという方向に変わっていきます。

 このあたりに大きな誤解があるということです。今後どうなっていくのかという話でいくと、先ほど申し上げたように、コンピュータ、AIが仕事を奪うという話ではありません。仕事を奪うのは、AIそのものではなく、AIの裏側にいる人間なのです。今のところ、AIは道具です。人間がAIを使っています。突然、そのコンピュータやロボットが意思をもち、人間の仕事を奪い出すということはないのです。

 だから願わくは、AIを使いこなす、道具として駆使する側に回るということです。職業として、あるいは働き方としてお金が稼げる、きちんと生き残っていける話が重要なのです。だから、日本全体として、こういう分野にできるだけ力を向けていく必要があるという話をしています。


●人工知能の発達でもたらされる「所得の二極化」


 ただ一方で、それをやると所得分配がかなり歪んでくる可能性があります。これはマクロ的な課題です。コンピュータを使いこなせる人と、ある意味でコンピュータに仕事を奪われる人との間に、かなり大きな差が生まれていきます。すごく稼げる人と、コンピュータに仕事を奪われてしまい、あまりお金を稼げなくなる人と二極化してくる部分が出てきます。

 ここから、いわゆる「中間層が消えてしまい、所得分布が二極化する」という話が出てくるのです。ご承知かもしれませんが、アメリカではすでにかなり起こりつつある話です。共和党のドナルド・トランプ候補が人々に支持されている現象、あるいはイギリスのBrexit(ブリグジット)の現象などの遠因は、こういう構造にあると私は思っています。中間の所得層の給料がどんどん低くなってしまい、彼らの仕事が奪われていきます。その原因として直接見えてくるのは外国人労働者であったりするのですが、そこは本当の意味で重要なポイントではありません。コンピュータや機械が仕事を奪っていっているというところが、この二極化の大きな原因なのです。だから、これをどうしていくかが大事なところだろうと思います。

 ホワイトカラーへの影響が後々大事になります。ここにも大きなポイントがあります。AIの研究者の方々に話を聞くと、AIの進展はどのくらいかということが議論になります。大事なポイントは、AIは完全に人間を代替できるかということです。例えば、100人要る仕事をする場合、人間は誰もいなくて全部コンピュータでできるかどうか。それを人工知能の研究者は目指...
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