10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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複数の国境問題を抱えた現状は百年前の国際情勢の相似形

今の時代は「日清戦争前夜」

石川好
作家
情報・テキスト
ジョルジュ・ビゴーによる当時の風刺画(1887年)
諸方に国境問題をかかえた中国が、現在の国際情勢を「日清戦争前夜」とみなすことの意味と影響。日中関係の悪化が懸念される今、日本がなすべきことは何か。石川好氏が関係の構造を読み解く。
時間:07:08
収録日:2013/10/31
追加日:2014/05/01
≪全文≫

●中華文明、屈辱の歴史。帝国列強に侵された国境と尊厳


中国は今、いくつかの国境の問題を抱えています。そんな中、歴史学者や共産党中央委員会の間で、ある非常に興味深い見方がひそかに出てきています。今の時代を「日清戦争前夜」であるとみなす見方です。もっとも、1894年に勃発した日清戦争が再来して日本と中国の間に戦争が始まるという意味ではありません。中国の国境をめぐる問題の状況があたかも「日清戦争前夜」であると言っているのです。こういうことです。
日清戦争(1894~1895)をさかのぼること10年、1884年には、清朝政府はフランスと清仏戦争(1884~1885)をしています。これはベトナムの宗主権をめぐる戦争です。中国が宗主国としてベトナムを植民地、属国としていたところにフランスが侵出してきた。そこで清仏戦争が始まります。中国はこの戦争に負けてベトナムを失います。中華文明の重要な周辺国であるベトナムをフランスに取られてしまうのです。
また6年後には、今度は今の新疆ウイグル自治区にあたるウイグル、新疆をめぐって、清朝政府はロシアと戦争寸前までいがみ合ってしまいます。
それから4年後に日清戦争が起こります。これも勃発の大きな理由は、朝鮮の独立と開国をめぐる問題にあります。朝鮮は宋主国である中国に気兼ねをしてなかなか独立をしない。そこで業を煮やして日本が介入して、日清戦争という事態が1894年に起こるわけです。
この視点で捉えると気づくことがあります。それはこういうことです。中国は中華文明の光の外縁にあるベトナムを、ヨーロッパの大国によって失ってしまいました。また、北方のウイグル族が住んでいた新疆にもロシアが攻め込んできて奪おうとしている。東にある朝鮮半島にも、新しい大国である日本が、そこをめぐって独立戦争をしかけてきている。こうした状況は、中国から見れば、自分たち中華帝国、中華文明の外縁が、外部の力によって侵されはじめているということになります。
日清戦争は、日本から見れば、朝鮮半島を独立させたい、そうでないとロシアが南下してくるから危険であるということで起こったものですが、中国側から見るとそうではありません。それをさかのぼること10年前にベトナムを失い、新疆にもロシアが攻め込んできている状況の中、東の朝鮮半島も日本がやってくるという危機的状況。日清戦争という事象は、中華文明なるもの、光源としての中華帝国が侵されはじめる、その一つの現象であるわけです。


●「日清戦争前夜」の時代観が日中関係に落とす影


では、そうした流れの中で、現在を「日清戦争前夜」と捉える背景を振り返ってみると、一体何が起こっているのでしょうか。それは、今また再び同じような状況ができつつあるということなのです。
まず、日本と中国、あるいは日本と韓国の間においては、日本と韓国の軋轢から、なんとなく韓国がどんどん中国に近づいているように見えます。次に、ベトナムにおいては、急速に中国の影響下を離れて、独立した新しい経済圏を作ろうとしているのではないかと。さらに、ロシアはロシアで、かつて新疆を取ろうとしてきたのと同じように思い切って南下し、ウラジオストクでAPECを開催したり、あるいは北朝鮮までロシアの影響力を及ぼそうとしている。
こうした朝鮮半島、朝鮮半島の付け根の北朝鮮のあたり、そしてウイグル族の問題、ベトナムの問題、東シナ海の問題が、中国にとってはあたかも日清戦争前夜であるように見えてきた。そこで、中国政府や共産党の歴史の専門家...
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