10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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なぜトランプ現象は起きたか?反グローバリズム台頭の理由

アジア政治経済の過去と現在(1)アメリカ大統領選挙から読む

白石隆
政策研究大学院大学 学長
情報・テキスト
これからのアジア情勢を考える上で、今年(2016年)のアメリカ大統領選挙は重要なトピックだ。政策研究大学院大学学長・白石隆氏は、クリントン候補が優勢であるとした上で、なぜトランプ現象は起こったのか、どうしてアメリカで反グローバリズムが台頭したかに注目すべきだという。そのポイントは、ここ20年間の、欧米とアジアの経済成長の違いにある。(全7話中第1話)
時間:13:14
収録日:2016/09/20
追加日:2016/11/01
これからのアジア情勢を考える上で、今年(2016年)のアメリカ大統領選挙は重要なトピックだ。政策研究大学院大学学長・白石隆氏は、クリントン候補が優勢であるとした上で、なぜトランプ現象は起こったのか、どうしてアメリカで反グローバリズムが台頭したかに注目すべきだという。そのポイントは、ここ20年間の、欧米とアジアの経済成長の違いにある。(全7話中第1話)
時間:13:14
収録日:2016/09/20
追加日:2016/11/01
≪全文≫

●大統領選挙はクリントン候補が優勢か


 世論調査で見ると、(アメリカの大統領選挙における両候補の支持率の)差は3パーセントかそれ以下で、ご指摘の通り、ひっくり返りそうなものもあります(2016年9月時点)。ただアメリカの大統領選挙は、州ごとに選挙人を選ぶわけです。その選挙人が大統領を選ぶという、一応、二段構えのやり方です。ですから必ずしも世論調査、あるいは大統領候補の支持率が、大統領の選出に直接つながるわけではありません。つまり、世論と大統領の選出の間には非常に重要なワンクッションがあり、そこでかなり変わってしまうという特徴があります。

 ですから、私自身はもちろんアメリカの政治の専門家ではありませんが、私なども参考にしているワシントン在住の人たちの分析を見ていると、クリントン女史が負けるのはなかなか難しい、というくらいのところに、もう既に来ているのではないかと思います。先日、ロンドンエコノミストに、「(クリントン候補が)負けるのはなかなか難しい」ということが出ていました。あのあたりの見立てで、大体合っているのではないでしょうか。

 むしろ私自身は、どうしてもマクロを見ることが得意ですから、どうしてああいう現象(トランプ現象)が起こったのか、どうしてあそこまで反グローバル化の動きが強くなったのかを考えています。


●なぜアメリカで反グローバリズムが台頭したか


 一つの見方は、例えば1995年から2005年までの10年間と、2005年から2015年までの10年間、この2つの10年間という期間に、1人当たりの実質国民所得がどのぐらい伸びたのかという点です。アメリカとヨーロッパとアジア、いずれのケースも計算は簡単にできます。IMFのワールド・エコノミック・アウトルックにあるデータを使って、2カ月ぐらい前に計算してみました。

 非常に面白いことに、アメリカもヨーロッパも、1995年から2005年の10年間は、1人当たりの国民所得は大体25パーセントほど伸びたのです。一方、日本は約5パーセント程度でした。私の記憶では、アメリカ、カナダ、イギリス、スペインなどが約25パーセントと非常に良く、ドイツが比較的少なく約17パーセントほどです。

 ただ次の2005年から2015年では、世界金融危機が引っ掛かり、それから欧州危機もあったので、ガタンと減ります。アメリカ、カナダ、イギリスが大体5パーセント程度。100だったのが105ぐらいまでしか伸びていません。スペインはマイナスで、フランスは100が104ほどです。しかしドイツだけが一人勝ちで、100が115ぐらいまで伸びていました。

 これをどう解釈するか。私の解釈は非常に単純です。要するに冷戦が終わり、1995年から2005年、つまりアジア危機などでアジアが大変だった時に、向こう(欧米)はすごく調子が良かった。ですから、ヨーロッパの人もアメリカ・カナダの人も、「世の中は良くなるものだ」と思った。自分たちの生活は、これから10年間良くなる、そういう経験をした10年でした。

 しかし2005年から2015年になると、世界金融危機などがあり、経済成長率がものすごく鈍化して、ある時はマイナスになってしまった。結局、100だったのが105ぐらいしか伸びなかった。「話が違うじゃないか。やはりグローバル化は悪いことではないか」と思い始めた。つまり、期待が裏切られたからです。

 格差の問題も確かによく言われますし、私も格差の問題は間違いなくあるとは思います。しかし、もっとマクロに、非常に単純な数字だけで見ると、やはり期待が裏切られたということが、彼...
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