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海洋調査で使用される遠隔操縦機(ROV)の特徴

遠隔操縦機~重作業ROV(1)基本設計と開発経緯

浦環
東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役
情報・テキスト
CURVⅢ
九州工業大学社会ロボット具現化センター長・浦環氏が、海洋調査や海底での作業で使用される遠隔操縦機・ROVの特徴と活用事例を解説する。ROVは、ケーブルがついた装置を海底に下ろし、そこから撮影や探査、種々の作業を行うものだ。1960年代に開発が始まり、当初は水爆の回収や有人潜水艇の救助で評価を高めた。(全5話中第1話)
時間:10:41
収録日:2016/06/15
追加日:2016/11/16
タグ:
≪全文≫

●ROVにはケーブルが付いている


 第九回は遠隔操縦機・ROVの話をしたいと思います。ROVは非常に強力な手段で、これを使うと海のことがいろいろ分かります。ROVとAUV(自立型海中ロボット)とは仲の良いお友達のようなもので、そのお友達がいったいどういうことができるのかということをよく知り、その上でROVの仕事はROVに、AUVの仕事はAUVにさせることが大切です。そこで今回は、遠隔操縦機・ROVの説明をしたいと思います。

 最初は重作業ROV、「heavy duty ROV」と言われるものです。おさらいになりますが、海底に出掛けていく手段というのは大きく分けて三つあります。一つ目は有人潜水艇(HOV;Human Occupancy Vehicle)、二つ目は遠隔操縦機である有索無人潜水機(ROV;Remotely Operated Vehicle)、そして三つ目が自律型海中ロボット(AUV;Autonomous Underwater vehicle)です。

 今日の話の中心はROVです。三つはいわばお友達なので、決して敵というわけではありませんが、それぞれに特徴があります。その特徴を知ることがとても大切です。

 まず人との関係です。これらを使う場合、人間はどうなっているかというと、有人潜水艇では人間は潜っていくので、現場には人間が行きます。ROVになると、人は船上にいます。自律型海中ロボットの場合も、人は船上にいます。そしてケーブルが付いているか、付いていないかでも区別できます。有人潜水艇が非常に重要なのは、ケーブルが付いていないことです。付いている有人潜水艇もありますが、あまりポピュラーではありません。遠隔操縦機ROVにはケーブルが付いており、自律型海中ロボットには付いていません。

 このことを忘れる人が多いのですが、有人潜水艇はケーブルがないのです。後で説明しますが、ケーブルがないことは、深い海に潜っていったときに有利です。反対に有索無人潜水機はケーブル付きなので、とても大変なことがあります。よく見ていただければ分かるように、いろいろな特徴があり、現在ではROV遠隔操縦機が非常によく使われています。


●ROVは海底でどのように活動するか


 絵に描いたのは、ケーブル付きの遠隔操縦機です。実はこれには2種類あり、われわれは小さい方をカメラロボットと呼んでいます。これは写真を撮ってくるだけのロボットです。こうすれば、ROVは小さくて済みます。小さくて済むと、取り扱いが簡単になります。もう一つの重作業ロボット(heavy duty ROV)は、簡単に言えばマニピュレータが付いていて、それで物を取ってきたり、あるいはバルブを回すなど、いろいろな作業をします。こちらは大型です。

 最初は小型のROV、カメラロボットについて説明します。これは三井造船がつくっているRTV-100というカメラロボットです。小型のカメラロボットの発祥は、クリストファー・ニコルソンというアメリカの青年が1984年に開発したMiniROVerというものです。その前にもheavy duty ROVがあったのですが、この青年はカメラ本体だけで小さいロボットをつくれば、遠隔操縦機もすごく使いやすいのではないかと考えて、MiniROVerを発明しました。重さが20~30キロ程度のものですが、これで何をしているか。例えば日本であれば、ダムや港湾の調査に使われています。しかしこれは、マニピュレーションができないため、ただ見るだけです。

 似たようなもので少し大きいのは、RCVです。これは1980年代に開発され、北海油田などで使われています。油田がどうなっているかを見に行くだけで、一世を風靡(ふうび)しました。これはどういうオペレーションで動くか。実はこれにはケーブルが付いています。これ単体で潜っていってもいいのですが、ここに「ランチャー」と呼ばれる、かごのようなものが付いています。これを使って下ろして、そこから発進するという仕組みになっています。

 この絵のように海の中で活動するのですが、深いところに潜るとなると、こういったおもりがないとなかなか大変なのです。例えばRTVや小型のMiniROVerもそうですが、ケーブルとゲーム世界を直接つなげるのが、ビークルです。ですがケーブルに潮の流れが当たるなどすると、ずっと引かれていってしまいますので、なかなか操作が大変です。

 そこで、魚を釣るおもりのようなものを付けて、それを使って真っすぐ下に下りていき、そこからビークルが発進すればいいではないかということが考えられます。そうすれば、決まった場所に下ろせます。これだと流されてしまいますから。こういう考え方で行うやり方が一般的に「ランチャー」と言われ、そういう方式が採られています。しかしこれは、システムとしてはだんだん大きくなっているわけです。

 このランチャー方式はheavy duty ROVでも同じです。後ほど述べる「かいこう」という重作業用のロボットをモデルに描いています。頭の上にラン...
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