10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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国学や水戸学を重んじる知的系譜を紡いだ坂本龍馬の家柄

ほんものの坂本龍馬(4)知られざる龍馬の学と気骨

松浦光修
皇學館大学 文学部国史学科教授
情報・テキスト
楠木正成像(楠妣庵観音寺蔵、伝狩野山楽画)
wikimedia commons
皇學館大学国史学科教授・松浦光修氏によれば、坂本龍馬に「学がない」と考えるのは大きな誤解だ。彼の家柄は、垂加神道や国学、水戸学を重んじる知的系譜を紡いでいた。龍馬の敬神尊王の精神は、大いなる“家の伝統”に支えられたものだったのだ。知られざる龍馬の知的系譜が、明らかになる。(全10話中第4話)
時間:08:53
収録日:2015/11/28
追加日:2016/12/06
楠木正成像(楠妣庵観音寺蔵、伝狩野山楽画)
wikimedia commons
皇學館大学国史学科教授・松浦光修氏によれば、坂本龍馬に「学がない」と考えるのは大きな誤解だ。彼の家柄は、垂加神道や国学、水戸学を重んじる知的系譜を紡いでいた。龍馬の敬神尊王の精神は、大いなる“家の伝統”に支えられたものだったのだ。知られざる龍馬の知的系譜が、明らかになる。(全10話中第4話)
時間:08:53
収録日:2015/11/28
追加日:2016/12/06
≪全文≫

●楠木正成を讃える歌を詠んだ龍馬


 神様と皇室に関して、もう一つあります。この時代、幕末の志士であれば一人残らず、絶対に英雄として尊敬している、ある歴史上の人物がいたわけですが、それは一体誰でしょうか。言うまでもなく、楠木正成(楠公)です。龍馬さんも、楠公を尊敬しています。これも多分、絶対テレビでは伝えられないことですが、本当の龍馬さんの考えですので、お話しします。

 一般に龍馬さんは、「学がない人」だと言われていますが、そんなことはありません。実は当時の「学問」という言葉は、イコール儒学という意味でした。ですから龍馬には、漢籍の教養があまりない、というだけの話です。儒学には興味がなかったので「学問がない」と言われていたわけです。

 一方、皇學館の「皇學」です。世間では「国学」と言われていますが、その学問を龍馬さんはきちんと学んでいました。そのため、和歌も上手に作っています。ここに挙げたのは龍馬さんの和歌ですが、有名な楠木正成を称えた歌です。

 月と日と むかしをしのぶ 湊川 流れて清き 菊の下水

 この歌の意味は、戦後教育を受けてきた現代人には、さっぱり分からないと思います。これは明らかに、楠木正成を称えている歌です。月と日というのは、単なる月と日ではありません。私は、湊川神社に今もある、有名な楠木正成の墓石の裏に刻まれている文章を踏まえたものだ、と思っています。

 それから「菊の下水」というのは、楠木正成の家紋である「菊水紋」を指していると思います。上半分が菊で、下半分が水の流れです。菊は皇室の象徴ですね。それを読み込んでいるわけです。

 ですから、ひっくるめて、歌の意味は現代語訳にするとこうなります。

 「正成の忠義は、湊川の墓碑にもあるように、月日のように永遠のものだと言われているが、本当にその通りである。その昔の楠木正成の事績を思えば、正成が討ち死にした湊川の流れは、今も清らかに菊、すなわち皇室を潤している」

 まことによくできた和歌です。


●龍馬の南朝尊重をうかがわせる手紙


 龍馬さんは、楠公を敬慕していたという点でも、いわばオーソドックスな、志士らしい志士です。龍馬さんが、南朝の皇族方や忠臣に強い関心を持っていたということは、慶応元(1865)年にお姉さんに宛てた手紙からもはっきり分かります。龍馬さんの手紙というのは本当に面白く、自然なユーモアにあふれているものが多いのですが、これもその一つです。

 「私が土佐にいたころ、吉村三太という、若いのに頭の禿げたやつがいましたが、そいつが、『新葉和歌集』という楠木正成公のころ、吉野の朝廷で編纂された和歌集を持っていました。それが欲しくて京都でいろいろと探してはみましたが、ぜんぜん手に入りません。ですから、その吉村から借りて、お姉さんの旦那さんに写させて、急いで私のところへ送ってください」

 龍馬さんが、南朝の皇族方や忠臣たちを仰いでいたことは、ここからもはっきりしています。ですが、そういうところは、戦後の小説やドラマでは、全くと言っていいほど触れられることがありません。先ほど言った通りで、要するに戦後社会は、龍馬さんを戦後社会に都合のいいように、切り取って伝えているに過ぎないのです。

 ここまで話したことをまとめると、龍馬さんは、神様も皇室も楠公も大事にする人で、いざとなったら、たとえ強い相手でも命をかけて戦うことも厭わない人でした。それでこそ、幕末の志士です。
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