10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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坂本龍馬は平和主義者ではなく武力倒幕論者だった

ほんものの坂本龍馬(5)復古すべきは龍馬の自己肯定感

松浦光修
皇學館大学 文学部国史学科教授
情報・テキスト
『大政奉還図』邨田丹陵筆
wikimedia commons
坂本龍馬は、凡庸な「平和主義者」でもなければ「民主主義者」でもなく、ましてや「無神論者」でもない。現代の龍馬がそう見えるのは、戦後的な価値観から切り貼りされた虚像だからに他ならない。むしろ取り戻すべきは、戦後の虚像からは見えてこない、たくましい自己肯定感だ。皇學館大学国史学科教授・松浦光修氏が、龍馬の歴史的な意義を語る。(全10話中第5話)
時間:12:54
収録日:2015/11/28
追加日:2016/12/09
『大政奉還図』邨田丹陵筆
wikimedia commons
坂本龍馬は、凡庸な「平和主義者」でもなければ「民主主義者」でもなく、ましてや「無神論者」でもない。現代の龍馬がそう見えるのは、戦後的な価値観から切り貼りされた虚像だからに他ならない。むしろ取り戻すべきは、戦後の虚像からは見えてこない、たくましい自己肯定感だ。皇學館大学国史学科教授・松浦光修氏が、龍馬の歴史的な意義を語る。(全10話中第5話)
時間:12:54
収録日:2015/11/28
追加日:2016/12/09
≪全文≫

●「武力倒幕論者」としての坂本龍馬


 もう一つ、これも大事なことですが、「武力倒幕論者」としての坂本龍馬についてもお話しします。ドラマなどでは、龍馬が大政奉還という平和的な政権交代を主張する「平和主義者」として、格好よく描かれています。その一方、薩摩や長州の人々は、何でも武力で解決しようとする“野蛮な人たち”という具合に、戦後のドラマでは描かれることが、少なくなかったわけです。

 ところが、確かに龍馬さんは平和的な政権交代である「大政奉還」を主張していますが、同時に当時の土佐藩に対して1,000丁の小銃を売りつけています。これをどう解釈すべきか、ということですね。「平和主義者の武器商人」、何だか意味がよく分かりません。

 要するに龍馬さんは、平和的な政権交代を説きつつも、一方ではちゃんと内戦に備えていた、ということです。そのための軍事力を充実させるという、したたかさを併せ持っていたことが分かります。

 大政奉還後の龍馬さんの言葉として、林謙三という人物が、その晩年に往時の龍馬さんが、こういうことを言っていた、と記録に残しています。

 「将軍が、私たちの建議を容れて、大政を奉還しても、いぜんとして日本は、危機一髪の状況にあります。その上、薩摩、長州、土佐、安芸の四藩で進めてきた運動も、今になっては二派に分かれようとしています。薩長は今もしっかりと団結して、二つの国の全土と全人民を賭けても、その目的を達成しようとして、断固として動きません。薩長は、こう思っています。

 『数百年の天下泰平の夢に眠りこけた日本を目覚めさせるのは、ふつうの手段では難しい。それを驚かせ、目覚めさせようとすれば、大砲の音が天に響き渡り、万の雷を地から吹き上げさせるしかない。これが軍隊を必要とする理由である。そうでなければ、ほんとうの意味で王政復古をなしとげ、長く積もり積もった悪弊を、一挙に洗い尽し、欧米列強と並び立つ日本をつくることはできない』

 このように、いろいろと考えてくると、戦争が起こることは、まちがいありません。今回の大政奉還も、あるいは一時しのぎの幕府の策略に過ぎないのかもしれません。しかしながら、もしもそうなら、西郷、木戸、大久保のような人物たちが、そのことを見抜けないはずもなく、それくらいのことは幕府も、よく知っていることでしょう。ですから、大政奉還も、まんざら策略ではなく、幕府の真意といってよいでしょう。しかし、そうであっても、それが大きなものになるか、小さなものになるかはわかりませんが、結局のところ、いずれ必ず戦争が起こることは、まちがいありません」

 ここから分かるように、龍馬は、「戦争反対」をヒステリックに叫ぶ「平和主義者」などではありません。近いうちに必ず倒幕戦が起こると、極めて冷静に時代の流れを読んでいたのです。それこそが本物の幕末の志士で、甘っちょろい現代の、脳内お花畑のような人々とは全然違います。

 龍馬さんの時代も、今の時代も、国際情勢は厳しい。今も昔も、同じです。ですから現代の私たちは、龍馬さんにいろいろと学ぶところがある、と思います。歴史は、単に過去に終わったこと、というだけではありません。そこには、私たちが未来を生きるためのヒントも満ちています。その観点から、今の私たちが龍馬さんに学ぶとすれば、まずは、その自由で明るい豪快な生き方ではないでしょうか。


●龍馬のような自己肯定感が現代人には必要だ


 せっかくの機会ですから、どうすれば私たちも龍...
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