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山内容堂が土佐藩に悲劇をもたらした悪しきリーダーシップ

ほんものの坂本龍馬(7)質疑応答―国学と土佐藩の悲劇

松浦光修
皇學館大学 文学部国史学科教授
情報・テキスト
山内容堂
wikimedia commons
皇學館大学国史学科教授・松浦光修氏によれば、国学は実証的な文献考証に基づくもので、決してオカルト的なものではない。その合理精神は坂本龍馬にも流れ込んでいる。また松浦氏は、土佐藩の悲劇が、藩主・山内容堂の悪しきリーダーシップに由来した、と話す。むやみに切腹を命じたことが、貴重な人材の喪失につながったのである。(講話「ほんものの坂本龍馬」を終えての質疑応答編その2、全10話中第7話)
時間:05:33
収録日:2015/11/28
追加日:2016/12/16
山内容堂
wikimedia commons
皇學館大学国史学科教授・松浦光修氏によれば、国学は実証的な文献考証に基づくもので、決してオカルト的なものではない。その合理精神は坂本龍馬にも流れ込んでいる。また松浦氏は、土佐藩の悲劇が、藩主・山内容堂の悪しきリーダーシップに由来した、と話す。むやみに切腹を命じたことが、貴重な人材の喪失につながったのである。(講話「ほんものの坂本龍馬」を終えての質疑応答編その2、全10話中第7話)
時間:05:33
収録日:2015/11/28
追加日:2016/12/16
≪全文≫

●実証を重視した「復古神道」の合理的側面


質問3:坂本龍馬の合理主義的精神と、国学はどのようにつながるのか

松浦 国学というと、何か盲目的な信仰だとか復古神道だ、というイメージがあると思いますが、そうではありません。本居宣長の学問を見ると分かります。それまで中世に仏教と習合してきたり、儒教と習合してきたりした神道が、少しも日本古来のものではないということを、実証的な文献考証で明らかにしていったのが、宣長です。

 近世という時代は、そもそも朱子学が非常に合理主義的な考え方ですが、国学も実は非常に合理的なのですね。古代の文献を研究するのに、なぜ仏典を必要とするのだ? なぜ儒教の言葉を使うのだ? 古代の文献は、古代の文献によって研究しなくてはいけないという、現代では当たり前の考え方を、本居宣長の学問は、契沖から受け継いでいます。その過程で、宣長を継いだ平田篤胤が排撃するのが、仏教と習合した神道や儒教と習合した神道です。そういう非合理的な、あるいはオカルト的な神道といったものを排除していくのですね。

 そうやってできるのが「復古神道」というものです。龍馬から見れば、神代に天狗の面が、あるわけがないではないか。だから、こんなものは偽物だ、ということになります。これが龍馬流の合理主義ということだろう、と思います。


●真に災いしたのは、藩主・山内容堂の悪しきリーダーシップだった


質問4:土佐藩内部にあった異なる身分への差別意識や対立は、実際の歴史にどう影響したか

松浦 確かに、その上士・下士の対立があったのは事実だと思います。それもありますが、ただ幕末の、あの土佐藩の悲劇は、やはり山内容堂(土佐藩主)さんの悪しきリーダーシップが災いしたのではないか、と私は思っています。山内容堂さんというのは、確かに名君であるのですが、意見が、ころころ変わるのですね。

 調子が良ければ、尊王攘夷派、例えば武市半平太などを盛り立ててみます。しかし京都で8月18日の政変があって、尊王攘夷派が追い落とされたとなると、今度は自分の藩で尊王攘夷派を弾圧します。リーダーシップはあっても、“悪いリーダーシップ”を発揮してしまった部分があり、それが土佐藩の人材を消していったのです。

 同じような例は、水戸藩にもあります。水戸藩も、内紛で結局、人材がほとんどいなくなってしまいます。だからそれは、何も土佐藩だけの問題ではなく、藩において“良きリーダーシップ”を発揮できなければ、混乱のときは結局内紛になるのです。内紛によって、藩が消耗していくということだと思います。

 だから、土佐藩独特の階級的なもの、という問題もあったとは思いますが、それだけでは、あのような悲劇は生まれないと思います。そして、武市半平太を切腹させるべきではなかったのです。あれは間違いだったのです。武市半平太を島流しにでもしておけば、維新後の土佐藩の立場は、全く違ったと思います。


●相次ぐ切腹が有為な人材の消耗につながった


松浦 薩摩藩は、西郷隆盛さんを切腹させませんでした。島流しにして、生かしておきました。そして、いざとなったら呼び戻して、政局の中心に据えました。龍馬さんは「人を殺すものではないぞ」ということを手紙に書いています。「人を簡単に殺したらいかん。西郷吉之助を見よ。島流しにされて帰ってきた。今、薩摩藩は西郷がいなくては動かないような状態になっているだろう」と。

 ところが土佐藩は、人をよく殺しました。あれは...
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