10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン
このエントリーをはてなブックマークに追加

日本人の自己肯定感を強めるのは古来の祖先信仰

ほんものの坂本龍馬(8)質疑応答―家族が育む自己肯定感

松浦光修
皇學館大学 文学部国史学科教授
情報・テキスト
なぜ、かつての日本には、坂本龍馬に見られる自己肯定感があったのか。皇學館大学国史学科教授・松浦光修氏は、その秘密は、先祖と家族の愛情だと話す。先祖を祀ったように、子孫も自分を祀ってくれるだろう。現代人が取り戻すべきは、そんな素朴な愛情と自信ではないだろうか。(講話「ほんものの坂本龍馬」を終えての質疑応答編その3、全10話中第8話)
時間:18:40
収録日:2015/11/28
追加日:2016/12/20
なぜ、かつての日本には、坂本龍馬に見られる自己肯定感があったのか。皇學館大学国史学科教授・松浦光修氏は、その秘密は、先祖と家族の愛情だと話す。先祖を祀ったように、子孫も自分を祀ってくれるだろう。現代人が取り戻すべきは、そんな素朴な愛情と自信ではないだろうか。(講話「ほんものの坂本龍馬」を終えての質疑応答編その3、全10話中第8話)
時間:18:40
収録日:2015/11/28
追加日:2016/12/20
≪全文≫

●日本古来の祖先信仰が自己肯定を強める


質問5:なぜ維新当時の日本には強い自己肯定感があったのか。

松浦 やはり、日本人古来の家族で育まれてきたもの、信仰と言えば信仰なのですが、信仰以前の教育(の影響)があったと思います。そのあたりは、もう柳田國男などが論じた世界に入っていきます。

 それは、命というのは、ちゃんと先祖からきて、また先祖のもとに帰っていく、という考え方です。神道の考え方では、死というのは確かに避けるべきものですが、あまり深刻にならないのですね。死んだらどこで裁きを受けるのだろうとか、最後の審判は来るのか、などを心配せずに、順繰りに産まれては死んでいき、子孫が続いていく。そして自分が先祖を祀ってきたように、自分の子孫は自分を祀ってくれる。その安心感が、やはり日本人を非常に明るく、前向きにしていたと思います。

 今の現代人が不安なのは、自分が一代で生まれて、一代で死んでいく孤独な存在だ、という考え方があるからです。それが現代人を、やたらと不安にさせているのではないでしょうか。命は先祖から子孫へとずっとつながっていく、という安心感は、例えようもなく日本人を、安心させていたと思います。

 戦後のGHQがやった政策は、3世代同居を否定する2DKの普及でしたね。共産主義者の設計者が2DKを普及させたということが、今では分かっています。生まれた子供たちが、おじいさん、おばあさんの元で育てば、おじいさん、おばあさんが亡くなる姿も分かるでしょう。おじいさん、おばあさんが先祖を祀っていた姿も分かるでしょうし、彼らが伝えてきたものも伝わるのですが、2世代にしてしまうと、それが切れてしまうのですね。


●北陸地方に残る3世代同居の「効能」


松浦 3世代同居がうまくいっている日本の都道府県は、ほとんどなくなりました。それでも一番残っているのは北陸の方で、福井県、富山県、石川県です。この辺りには3世代同居が多いのです。大阪万博の頃に日本に来て、日本が好きで、ずっと住みついて、保田與重郎の研究をしているロマノ・ヴルピッタさんが言うには、北陸には昔の日本が残っている、ということでした。それが私には印象的で、確かに考えてみれば、北陸は3世代同居が多いのです。そして、子どもの学力調査や体力調査でも、一番高いのです。

 (しかし、日本から)3世代同居というものが破壊されてしまいました。そして先祖というものの意識(も破壊されました)。日本人には、宗教という宗教はないのですが、先祖を大事にするという想いは、古代からあったと思います。例えば、稲荷山から出てきた鉄剣にも、“誰々の子は誰で、誰々の子は誰”といったものが、何代にもわたり書かれているのです。ということは、古墳時代のようなずっと昔から、日本人は先祖というものの意識を、しっかり持っていたわけです。

 だから、死ぬことが怖くない、とは言いませんが、現代人ほどの恐怖感はなかったのではないでしょうか。思う存分生きて、頑張って働いて、それで死んだら、他のみんなは忘れても子孫は忘れないで、仏壇なり何なりで、自分のことを拝んでくれる、と思える感覚と、自分は(死んだら)そのまま地球上から何もなくなり、この世から消滅してしまうという恐怖感におびえるのとでは、全然違ってくると思います。日本人の霊魂観、先祖観というものを取り戻さないと、本当の意味での自己肯定感の回復は、難しいかと思います。


●現代人は自己肯定感の強さを取り戻すべきだ


松浦 昔の人たちは...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。