10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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吉田松陰の教育論は女子教育も重要視していた

ほんものの坂本龍馬(9)質疑応答―母の徳、無償の愛1

松浦光修
皇學館大学 文学部国史学科教授
情報・テキスト
長州藩士・野村靖(名は和作)
wikimedia commons
維新の志士を生んだ家庭とは、どのような家庭だったのか。それについて考えるとき、母親の存在を抜きには語れない。江戸時代の女性は苦労も多かったが、志士を育てた母親は自信に満ち溢れ、志士すらも頭が上がらない存在だったという。そこには“母の徳”があった。そんな母親のいる家族の支えが自己肯定感につながる。(講話「ほんものの坂本龍馬」を終えての質疑応答編その4、全10話中第9話)
時間:11:27
収録日:2015/11/28
追加日:2016/12/23
長州藩士・野村靖(名は和作)
wikimedia commons
維新の志士を生んだ家庭とは、どのような家庭だったのか。それについて考えるとき、母親の存在を抜きには語れない。江戸時代の女性は苦労も多かったが、志士を育てた母親は自信に満ち溢れ、志士すらも頭が上がらない存在だったという。そこには“母の徳”があった。そんな母親のいる家族の支えが自己肯定感につながる。(講話「ほんものの坂本龍馬」を終えての質疑応答編その4、全10話中第9話)
時間:11:27
収録日:2015/11/28
追加日:2016/12/23
≪全文≫

●女子教育を重視した吉田松陰の教育論


質問6:時代劇を見ても、江戸時代の家族は支え合うというイメージがあるが、特に立派な維新の志士を生んだ家庭は、実際どのようなものだったのか。

 やはり、お父さんの存在を大事にする家庭でした。しかし一方で、吉田松陰は、妹さんに女子教育の教訓を語っています(その内容は『新釈 講孟余話』の中で、現代語訳にして載せています)。子どもというのは、特に小さい頃は、母の影響を受けるのだから、母の教育こそが大事だ、ということで、吉田松陰という人は、あの時代には珍しく、女子教育にものすごく熱心だったのです。女性のための教訓書を作らなければいけない、ということで、獄中でもそういうものを作ろうとしています。ですから多分、吉田松陰の脳裏にあったのは、母の姿だと思います。

 (松陰の母は)障害のある親戚をわざわざ引き取りに行くのですね。引き取って世話をして、子どもを育てて、それから農作業もして、家事もする。それらに愚痴一つ言わず、明るく毎日を過ごしている。あの母のような女性が、日本に増えれば、日本という国は自然に良くなる、という思いもあり、松陰は女子教育に、とても熱心な方だったのだと思います。

 もちろん武士の家ですから、厳しいしつけもありましたが、そんなものは、もう当然のことです。それ以上、こまごましたことはもう言わない。大事なのは、先祖を尊ぶことである。嫁に行ったら、その家を尊ぶ。それから子どもを育てるときは、胎教から始める。吉田松陰は、胎教の重要性も言っています。子どものときから、お母さんが汚い言葉を使わない、といったことを重要視していました。

 戦後は何でも男女平等といって、日教組は「男女混合名簿」まで導入しましたが、女性には女性としての幸せがあり、男性には男性としての幸せがある。それを追求することは、差別でも何でもないと、私は思っています。こういう江戸時代の女性たちは、不幸だったのかというと、現代の女性より、幸せだったと思います。人生に満足して、良い人生だったと思って、皆さん亡くなっていかれている、と思います。


●維新志士すら頭が上がらない「母」の自信


松浦 苦労は多いです。例えば、入江九一と野村和作という2人の兄弟の母親で、入江満智という方がいます。大事な息子を二人とも危険に晒して、志士活動を支えていたお母さんです。入江九一は「禁門の変」で討ち死にしますが、野村和作は生き延びて、大臣にまでなります。そして、かつて松陰先生が行きたかったヨーロッパに、何度も行き、帰ってきてお母さんに「パリという街の素晴らしさ」を滔々と語るのですが、お母さんは「ふーん」と言うばかり。お母さんは「私は、もっと素晴らしいところを知っている。それは極楽だ」と言うのですね。「パリなどとは比べものにならないぐらい素晴らしいところだ」ということを言って、息子を、ぎゃふんと言わせたという話が残っています。

 このような、母としての自信ですね。オロオロしない。そういうお母さんの前では、陸軍大将になろうと総理大臣になろうと、頭は上がらないわけです。そういう“母の徳”、女性の“婦徳”と言いますか、それを養成していくことが、実は教育を再生していく上でも、本当は大事なことです。

 だから今、「南京大虐殺はなかった」「従軍慰安婦の強制連行はなかった」ということで、(自虐史観という)「アンチに対するアンチ」を目指して、われわれはやってきましたが、もう次の段階に進んでいます。日本人の生き方を、...
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