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ROVを使った正確な事故調査が原因解明につながる

遠隔操縦機~重作業ROV(4)海底という現場に行く

浦環
九州工業大学社会ロボット具現化センター長・特別教授/東京大学名誉教授
情報・テキスト
「ダービシャー」沈没事故の海底調査
九州工業大学社会ロボット具現化センター長・浦環氏は、ROVの技術的問題の多くがケーブルによって引き起こされると言う。しかしその不便さを超えた便利さがあるとも述べる。何よりもROVは、人間が到達できない深さに潜り、撮影や残留物の回収が可能だ。そうした調査が、事故原因の解明を大きく進展させるのである。(全5話中第4話)
時間:11:23
収録日:2016/06/15
追加日:2017/01/28
≪全文≫

●ケーブルが絡むと故障しやすい


 お見せしているのは、重作業ROVの写真です。これが先ほど出てきたCURVです。これがDOLPHIN-3K、これが後で出てくるWoods HoleのJASONというものです。別の写真はScorpioといって、先ほどの「えひめ丸」引き上げ時に活躍したものです。これは新しいROVで、こういったものが海底油田のために働いています。

 これはアメリカが1960年に開発したCURV(Controllable Underwater Recovery Vehicle)です。名前にある通り、“Recovery”という言葉が非常に重要です。これは、マニピュレータが付いていて、物を拾ってくる。プロペラが付いていて、ROVというのは大体こういう形をしています。あくまでも想像図ですが、水素爆弾を写真のように拾ってきたという絵です。実際はこうではなくて、この水素爆弾にパラシュートが付いており、そのパラシュートにCURVが引っ掛かってしまった。マニピュレータでそれをつかんで上げてくれば格好よかったのですが、パラシュートが絡んでしまったため、引き上げられたということです。まさに「けがの功名」です。でも世の中には、そういうことがたくさんあります。

 なぜ、そんなことをわざわざ言うのか。理由は、遠隔操縦機についているケーブルです。ケーブルが付いているため、いろいろなものに絡まりやすい。これが問題なのです。有人潜水艇にはケーブルが付いていません。それは非常に大きな特徴で、何より絡まりにくい。自律型海中ロボットもケーブルが付いていません。このように、ケーブルというのは非常に不便なものです。

 油価がボーンと下がった1986年の1年前に、日本の海事新聞にこういうROVがあるという宣伝が載りました。「ドラゴンフライ」というものです。こういうものが出てきて、石油開発ではすごく役に立っているという宣伝です。このドラゴンフライは、当時としては最新鋭のROVです。

 これはPerry Tritech'sが開発したScorpioです。それが「えひめ丸」をリカバーしました。このビークルも、開発されたのは1980年代です。「えひめ丸」の事件は2000年以後ですから、古いものを相変わらず使っていたということだと思います。

 アメリカのWoods Holeが開発していた「JASON」で、ランチャーに対応するものが付いており、そこから出ていていろいろなことをやっています。世界の海洋科学では非常に活躍しているROVです。これは産業用ではなく、海洋の科学、サイエンスのためにいろいろな調査をしているもので、お見せしているのはまだ出来上がる前の計画図です。実際にこういうことをやっています。


●「ダービシャー」の沈没を追ったROV


 お見せしている写真は「ダービシャー」という船の調査に行ったときのものです。「ダービシャー」は1980年に沈没したもので、97~98年に今のJASONを使った調査があります。これはバルクキャリアといって、ばら積み貨物船です。当時、積んでいたのは微粉精鉱というもので、それを積んで日本に来る途中でした。ここにアンカーが付いていて、ANCHOR WINDLASS、アンカーウインチがあります。ハッチが閉まっています。

 1980年9月、大東島の沖合に差し掛かった際に台風に突っ込んでしまい、SOSも出さないまま沈没しました。乗組員は全員行方不明です。船とともに沈んでしまいました。この船がいったいなぜ沈没したのか、なぜ台風の中でSOSも出さないで沈没したのか。その原因は、船会社や造船屋たちの間で問題になっています。

 この船はイギリスの船ですが、アメリカ・イギリスチームが海底を調べた結果、次のようなことが分かりました。図に示したのは「ダービシャー」の破片が散らばっている様子です。見れば分かるように、船がボロっと落ちているのではなく、ばらばらにちぎれています。爆弾が爆発したわけでもないのに、どうしてこういうことが起こってしまったのか。これはJASONが調べに行って、初めて分かったことです。

 調査に行く前、われわれは船がごろんと沈没しているだろう、大きなタンカーなのでそのまま沈んでいるのだろうと思っていたら、実はそうではなく、ばらばらになっていた。これは「爆縮」という現象です。

 爆発というのは、中の圧力が高くなってボーンと爆発します。ところが爆縮は異なります。例えば、ピンポン球のようなものを考えてみましょう。ピンポン球に圧力をかけると、いっぺんにぼこっと潰れてしまいます。球なので外圧に対しては強いのですが、ある時に瞬間的に潰れてしまいます。そうすると、結果的に爆発と同じようになり、圧力波が出て周りが粉々になるというわけです。今の「ダービシャー」の例は、ばら積み貨物船の船体が瞬間的に爆縮して、全体がばらばらになってしまったことを示しています。


●ROVの調査が明らかにした「ダービシャー」沈没の真実


 しかし、なぜそんなことが...
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