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画像認識ではコンピュータが人間を超えた

AIで社会・ビジネスはどう変わる?(1)第三次AIブーム

松尾豊
東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター
概要・テキスト
コンピュータが囲碁のプロ棋士を破るなど、近年のAI(人工知能)の発達はめざましく、ニュースに事欠かない。しかし、東京大学大学院工学系研究科特任准教授・松尾豊氏は、過度な期待をすべきではないと言う。昨今のAIの進化を支えている核心は何か。それは日本のビジネスにどんなインパクトを与えるのか。この領域のホープが、AIがもたらす未来予想図を描く。(2016年11月30日開催三菱総研フォーラム2016講演「AIで社会・ビジネスはどう変わるか?」より、全4話中第1話)
時間:08:17
収録日:2016/11/30
追加日:2017/02/26
≪全文≫

●AI技術の核心はディープラーニングにある


 「AIで社会・ビジネスはどう変わる?」というタイトルでお話させていただきます。自己紹介は画面に表示した通りです。日本に人工知能学会があり、私はその学会誌の編集委員長を2年ほど担当し、今は倫理委員会の委員長をやっています。今日は、ディープラーニングを中心にお話しします。

 2016年3月に、グーグルが開発したAlphaGoというソフトがイ・セドル9段を破ったというニュースがありました。まだご記憶に新しいところかと思います。さらに先週(2016年11月)は、日本のDeepZenGoというソフトが、趙治勲名誉9段と対局しました。結果的にコンピュータが1勝2敗で負けてしまいましたが、実はこのプロジェクトは、技術的なバックのサポートを松尾研究室でやっています。オールジャパンで、打倒AlphaGoをやるというプロジェクトです。2017年には日中韓の三カ国で、プロ棋士と人工知能による対局があり、この分野もかなり盛り上がってきているかなと思います。

 いずれにせよ、このAlphaGoがイ・セドル9段を破ったのは、相当すごい出来事でした。なぜここまで強くなったのか。それは、ディープラーニングという技術を使ったからだということになります。

 ご存じの通り、今は人工知能がブームになっていますが、この分野は60年前からあるもので、今回のブームが3回目ということになります。この60年間に、いろいろな技術が出てきていますが、もう60年間も研究しているので、できることはできるし、できないことはできないということに関して基本的な理解があります。こうした理解はそれほどすぐに変わることがありませんので、「こんなことができるのではないか」というアイデアがあっても、それ一つでそんなに簡単にいくわけではありません。

 そのため、現在はとてもブームになっていますが、もともとこの分野は非常にブームになりやすい性質を持っています。やはり「人工知能」という言葉がすごく想像をかき立ててしまうからです。そのため、実はもう1960年代の第一次AIブームの頃から、「人間のような知能ができるのではないか」「いずれ人間を超えるようなことがどんどんできてしまうのではないか」と思われてきました。同じことが、今回の第三次AIブームでも起こっているということです。

 全体的には、それほど期待しない方がいいと思っています。期待感が大きくなり...
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