●「働き方改革」が必要とされる二つの理由
今日は「働き方改革」をテーマに、私が考えていること、あるいは私が今、携わっている研究等について、お話ししようと思います。
日本では、現在「働き方改革」が非常に大きな課題になっています。政府でも会議が開かれ、政策的な議論も大きく進んでいます。こういう議論が大きく進んでいる背後には、大きくいって二つの理由、つまり国内的な理由と世界的な理由があるのではないかと思います。
国内的な理由として、(一つは)日本の経済全体がそれほど大きく成長していないことが挙げられます。人口が減っていく中で、日本経済が大きなプレゼンスを引き続き維持するためには、一人一人がより良い形で働き、生産性を上げていくことが大きな課題になります。
もう一つは、所得格差、あるいは貧困の問題です。やはりこうしたことが社会的にも大きな課題になりつつあります。格差や貧困があるために、経済が活力を削がれるという面もあります。また、大きな所得格差があり、貧困にあえぐような人が出てくることは、そもそも社会的に問題です。こういう課題を解決し、それぞれの人がより良い形で働いて、より多くの所得を得て、より充実した働き方ができるようにしなければいけません。
国内的には、経済成長と所得格差という二つが、働き方に関して大きな議論を呼ぶ理由なのだと思います。
●「働き方改革」はグローバルな課題だ
これらはかなり日本的な理由ですが、世界的に見ても、やはり同じような課題を抱えている国は多く、世界中で働き方が大きな問題になっていると思います。その大きな原因の一つは、技術革新が世界的に大きく進んでいることです。当然、日本も同じですが、世界的に大きな技術革新が巻き起こっています。特に最近では、AIや人工知能という言葉をマスコミで聞かない日はないぐらいになっています。人工知能(AI)やそれに関連したコンピューター、ロボットの発達、さらにIoT(モノのインターネット)と呼ばれる情報通信技術の発達などが、企業経営の在り方、さらには産業全体の構造を大きく変えていくだろうと言われています。そういう中で、それぞれの人がどういう形できちんと働けるようにするのか。これが、日本だけではなく世界的にも大きな課題になっていると思います。
世界的に注目されるもう一つの理由は、日本にも共通してい...