10MTVオピニオン|有識者による1話10分のオンライン講義
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「プールの後に目を洗う」ことはやってはいけない

目の健康と医療・最前線(3)目に関する常識の今と昔

大鹿哲郎
筑波大学眼科教授
情報・テキスト
一昔前の学校では、プールに入った後に目を洗うよう指導していた。ところが、筑波大学眼科教授・大鹿哲郎氏によれば、これは目に必要な涙も洗い流してしまうため、医学的にはお勧めできない「非常識」となっている。子どもの頃の常識が、もはや通用しなくなっている現状を、大鹿氏が分かりやすく解説する。(全5話中第3話)
時間:07:47
収録日:2017/02/25
追加日:2017/03/19
一昔前の学校では、プールに入った後に目を洗うよう指導していた。ところが、筑波大学眼科教授・大鹿哲郎氏によれば、これは目に必要な涙も洗い流してしまうため、医学的にはお勧めできない「非常識」となっている。子どもの頃の常識が、もはや通用しなくなっている現状を、大鹿氏が分かりやすく解説する。(全5話中第3話)
時間:07:47
収録日:2017/02/25
追加日:2017/03/19
≪全文≫

●「プールの後は目を洗う」のは良くない


 目に関する常識は、私たちが子どもだった頃とは変わってきています。学校での指導でも若干変わっていますので、その点についてお話しします。

 昔は、学校でプールの授業があったら、必ず「水道の水で目を洗いなさい」と言われました。あれは結構難しくて嫌だったのですが、そう言われたので、皆頑張り目を見開いて洗っていました。しかし最近では、それが目に良くないということが分かり、日本眼科医会でも通達を出しました。そのためここ数年、学校でもそうした指導は減っていると思います。よって、あれはお勧めできません。

 もともとあの方法は、結膜炎など目の感染症が多かった頃に、それに関連する菌を洗い流そうということで行われていたものです。しかし、実はその効果以上に、涙の成分を流してしまうという悪影響があることが分かりました。

 涙にはいろいろな成分が入っています。水だけではなく、油を含めて三層構造になっており、それで目を守っています。細菌を洗い流すだけでなく、殺菌する力もあります。これを水道で流してしまうと、目は丸裸になって、すぐに傷がついてしまう状態となるので、非常に良くないのです。

 よって、最近の常識は「水泳の時はゴーグルをしなさい」というものです。プールの水が汚れていたり、(消毒のために)塩素が入っていたりするので、ゴーグルをして、目に直接プールの水が入らないようにするということです。また、もし目を洗う必要があるなら、人工涙液、できれば防腐剤の入っていない人工の涙を使うことです。これは薬局でも売られていますので、それを使って目を洗うことが推奨されています。だいたい人間は、涙があれば、それで異物を洗い流すことができますので、涙そのものは洗い流さず、そのままあった方が良いということです。


●校庭に引く白いラインは、とても危険なものだった


 また何十年間前、私たちが子どもの頃と違っているのは、校庭に引くラインです。あの白いライン引きに使われているのは、消石灰、すなわち水酸化カルシウムです。あれが非常に危険だということが分かりました。

 消石灰は、水に溶けると非常に強いアルカリ性になります。アルカリ性の物が目に入ると、化学熱傷といって、化学的な火傷をします。ひどい場合には失明に至ります。目の組織が溶けてしまうからです。

 例えば、雨の日に消石灰が溶けると、危険です。また仮に雨でなくても、風で粉が舞い上がって目に入ってしまうこともあるので(注意が必要です)。2007年に文部科学省の指導があり、消石灰は使用しないことになっています。今では、より安全な炭酸カルシウムに変わっていますので、おそらく学校では全て切り替わっていると思います。

 しかし、町内会や子ども会などで倉庫にしまってあったものが、まだ残っているかもしれません。そういうものはぜひ使わないでもらいたいと思います。さらに、切り替わった後の炭酸カルシウムも、昔ほどではありませんが、やはり水に溶けるとアルカリ性に変わりますので、極力目に入らないように配慮することが重要です。


●球技をする時には、極力ゴーグルをつける


 体育の授業や運動で、目にけがをすることがよくあります。外来の患者さんを診ていると、もしかしたら防げたのではないかと、とても残念に思うことがよくあります。そこで推奨したいのが、保護眼鏡、もしくはスポーツ用のゴーグルをかけることです。それらを付けていれば、防げたと思...
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