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トランプ政権の通商政策と為替相場に与える影響は?

トランプ政権の通商政策(1)4つの課題

高島修
シティグループ証券 チーフFXストラテジスト
情報・テキスト
トランプ大統領
「トランプ政権の通商政策は驚愕の内容だ」とシティグループ証券チーフFXストラテジスト・高島修氏は語る。いったいどのような政策なのか、その政策によって為替相場はどのように変化するのか。高島氏が、その政策から考えられる未来を予見する。(全3話中第1話)
時間:19:32
収録日:2017/03/10
追加日:2017/03/28
≪全文≫

●オバマ政権とはまったく異なるスタンスを示した


 シティグループ証券で為替のリサーチを担当している高島修です。今日は、アメリカ・トランプ政権になって通商政策が大きく変化していますので、通商問題とそれが為替相場に与える影響についてお話しします。

 大きく分けて3つの観点から話そうと思っています。今回、トランプ政権の通商政策がどのような形で変化してきているのか。それがドル円にどういった影響を与えるのか。これが1点目です。2点目は、1980年代、1990年代に熾烈化した過去の日米通商摩擦から示唆を得ながら、通商摩擦のドル円への影響をお話ししたいと思います。3点目は、こうした日米通商問題が中国・人民元にどのような影響を及ぼすのか。また、それが回り回って、日本や日本銀行(日銀)の経済政策にどういった影響を与えるのかをお話しします。

 まずは1点目のアメリカの通商政策の変化についてですが、この3月1日に、アメリカ通商代表部(USTR)が毎年出している通商政策に関する報告書が議会に提出されました。トランプ政権初の報告書です。その中で、1年前のオバマ政権とはまったく異なるスタンスが示されたのですが、これが実に驚愕すべき内容でしたので、スライドで説明していきたいと思います。

 USTRは、今回、通商政策のアジェンダとして4つの課題を掲げています。1点目は、「Defending Our National Sovereignty Over Trade Policy」というもので、「通商政策における国家主権を守る」という意味です。ここで驚きだったのは、WTO(世界貿易機関)の判断がアメリカの利益にならない場合、WTOの判断に従う必要はないという考え方を示したことです。WTOは、1995年にGATTが改組されたものです。GATTは戦後、アメリカを中心にしてつくり上げていった関税貿易協定の枠組みでした。戦後すぐに創設されたブレトン・ウッズ機関、つまりIMF、世界銀行(世銀)と並んで、GATTが戦後アメリカの経済覇権を担う重要な枠組みだったのです。USTRは、そのGATTが改組したWTOの決定に必ずしも従う必要はないと強調したのです。戦後の枠組みをアメリカ自らが崩そうとしている、精算しようとしている印象さえ受ける宣言でした。


●トランプ政権の通商政策は相当のタカ派である


 2番目のアジェンダは「Strictly Enforcing U.S.Trade Laws」で、要はアメリカの通商法をより厳格に実施すると言っています。特に、201条と301条の発動を厭わない姿勢を示しています。201条とは、俗にいう「セーフガード」で、海外からの輸入品が急増したときに一時的な輸入制限を行う、こうした権利を与えるものです。また、1990年前後にスーパー301条がかなり話題になったのですが、このスーパー301条の元となっている301条は、USTRに不公平な貿易慣行がある国と交渉する権限を与えています。そして交渉がうまくいかない場合、その国に対して報復関税を課すことを定めています。トランプ政権は、こうした条項を復活させてでも、新しい枠組みをつくるのだという強硬な姿勢を示したのです。相当のタカ派といえるでしょう。

 3点目は「Using Leverage to Open Foreign Markets」で、海外市場を開放させるという意味です。報告書には、「過去数十年間、アメリカ政府は貿易相手国に市場開放をさせる努力をしてきたが、こういった努力は無駄だった」と書かれています。

 4点目は「Negotiating New and Better Trade Deals」ということで、今後、トランプ政権の下では、TPPやWTOのような多国間の枠組みよりも、2カ国間のFTAを重視していくという姿勢を示しています。ちなみに、ここでUSTRは過去の失敗例を3つ挙げています。1つ目は2001年の中国のWTO加盟、2つ目は1994年に発効された北米自由貿易協定(NAFTA)で、3つ目は2012年の韓国・アメリカの2カ国間FTAです。こうした事例を用いながら、過去の通商交渉が非常にまずかったので、新しいものをやるということを言い始めているのです。そして今回、商務長官に就任したウィルバー・ロス氏は、まずはNAFTAの再交渉から始めると語っています。


●ロス、ナバロ、ライトハイザーの通商政策チームは強力かつ強烈


 今回、USTRはこうしたタカ派の年次報告書を発表したのですが、実はトランプ政権のUSTR代表はまだ議会に承認されていません。このスライドでは、トランプ政権の通商政策チームとマクロ経済チームのメンバーを見ていただくことができますが、ドナルド・トランプ大統領がUSTR代表に指名しているのはライトハイザー氏です。ロバート・ライトハイザー氏は、レーガン政権の時に日本と鉄鋼交渉を行い、その辣腕で名を馳せました。もともとは弁護士で、レーガン政権後はUSスチールの弁護士を担当しました。中国の鉄鋼輸出はダンピングだから、WTO違反でもかまわず中国に報復措置を取るべきだと主張している人物です...
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