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IoTで重要なのは「制御を制御する」ガバナンス

IoTとは何か(4)IoT時代のセキュリティーとガバナンス

坂村健
YRPユビキタス・ネットワーキング研究所 所長/東洋大学教授 情報連携学部 学部長
情報・テキスト
IoT時代に適合したコンピューターモデルとして、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長で東洋大学情報連携学部学部長の坂村健氏が進めているのが、TRON IoT‐Aggregatorだ。このモデルが目指すのは、IoT機器のガバナンスだ。APIの公開によって誰もが機器を自由に制御できるとなれば、どこまで制御してよいかを決める必要がある。それがIoT機器のガバナンスだ。(全9話中第4話)
時間:08:55
収録日:2016/12/02
追加日:2017/04/08
タグ:
≪全文≫

●IoT化で重要なのは、ガバナンス


 ここまで、APIを公開して、それを相互にいろいろな機械を、ネットに自由につなげることで、いろいろなイノベーションを起こそうという話をしました。TRONという私のプロジェクトでも、そういうことがやりやすくなるようなフレームやコンピューターのモデルを提案しています。それが TRON IoT‐Aggregatorと呼んでいるものです。

 「Aggregate」とは「総体」ということです。総体、すなわち今まで言ったようなことを全て実現しようという、一つのコンピューティングモデルです。

 いろいろなモノがネットにつながってきたときにIoTで重要になるのは、セキュリティーだとよく言われます。もちろんセキュリティーが重要であることは、もう論じるまでもありません。例えばモノがネットにつながっているときに、そのモノの動作の状況を途中から誰かに盗まれてしまうといったことがあると、非常に困ります。

 だからセキュリティーは重要だと言えるのですが、もう1つ重要なこととして、ガバナンスとの関係です。これは、途中から盗まれてしまうということではなく、いろいろなモノがつながっているときに、「つながっているモノに対して、どうやって管理をするか」ということです。

 当然のことですが、この部屋には電灯がたくさんあったり、空調機があったりします。先ほどから、これらのAPIを公開するといったことを言っていますが、仮にこれを公開してオープンにするということをやると、誰でもこの電灯をつけたり消したりすることが、プログラムを書けばできてしまいます。個人の家の場合でも、そういうことができるようになるということが重要ですが、誰であっても家のコントロールを勝手にしていいということはありませんね。

 これをガバナンスの問題といいます。オープンにすると言っても、「何でも、誰にでも、いつでも、どこでも」オープンにしていいわけはありません。


●ガバナンスとは、制御を制御すること


 例えば、私の大学の研究所の中も、そこにある全ての電子機器がオープンAPIの考えでつくられており、ネットにつながっています。だから学生でも、教室の電灯をつけたり消したりするプログラムを書けば、スマホからそのようにコントロールすることはできます。あらかじめ、こちらが作っておいたプログラムでボタンを押せば、壁にスイッチなどなくても、スマホから電灯を消したりつけたりすることができるのですが、私が授業をやっている時に、学生にいたずらされても困ります。

 このガバナンスということで言うならば、先生が授業をしている何月何日の何時から何時までの間は、学生はいくらAPIを知っていても、機器をコントロールすることはできないということを保障されるメカニズムが、インターネット側にないと困るのです。

 そういうものを作ることが、やはり世界的な競争になっています。こうしたものを「フレーム」と言い、このフレームのアーキテクチャーも、最近ではいろいろな研究が最近なされています。TRONが提案しているのは、TRON IoT‐Aggregatorというもので、オープンIoTのためのガバナンス管理をするメカニズムです。

 簡単に言えば、「誰が、この電気をいつ、どういう条件で制御していいのか」ということを記述できる仕組みです。そういうものを組込まず、何でもオープンAPIにして、ネットにつなぐだけにしてしまえば、いたずらされる場合も出てきます。だから、このガバナンスという仕組みがあるかどうかは、非常に重要です。


●ビッグデータの登場がもたらしたもの


 このセキュリティーとガバナンスは、ものすごく重要です。さらに、この後に出てきますが、いろいろなモノをネットにつなげると、つながっている機械からいろいろなデータがネットに挙がってきます。最近はやりの言葉で言えば、これはビッグデータです。ものすごくたくさんのデータ、例えばこの部屋の温度のデータが、10分おきにどんどん集まります。もうこの建物が存続している間は、ずっと集め続けるというメカニズムにしてしまうと、大量のデータがどんどん集まってきます。

 すると、そうやって集めたデータを、どうやって分析するかという問題が出てきます。それがあまりに大量、かつあまりに複雑で、いろいろなモノから集まってきます。そこで最近注目されているのが、人間だけでなく、人工知能のメカニズムを使って処理ができないかということです。ここに非常に注目が集まっていますが、もう1つ話題になるのが、集めたデータはいったい誰のものかという、データの権利に関する問題も起きています。

 こういう意味で、いろいろなモノがどんどんつながってくると、今までとはまた別に考えなければいけない問題が出てきます。また価値も、そのデータの中からどんどん出てきます。そこをど...
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